表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたは異世界へと人々を転生させる神に選ばれました。  作者: リリー
剣と魔法と無能な神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/42

戦闘、憧れの師匠

 あれから数日後、私達は決断をした。旅に出る。半壊に等しいくらいの小屋に住み続けるのは無理だ。


 それに、この旅には目的があったはず。色んなものに触れて、色々な人に出会うこと。ならば、当然、色んなところに行った方が良い。私達はこの地域との決別を決めた。


 私達は広大な草木の生い茂る道を道なりに進み始めた。道中には、たまに住居や畑があったが、それらも無くなってきた。


「リインなら十分に稼ぐことも出来たでしょうに。ピット・ファイターとして。」


「それはバトランもでしょ。いや、なんか飽きちゃって。」


「違いますね。本当は、オーダーさんと顔を合わせたくないのが理由では?」


「うぐっ。だって、私、あんなにドラゴンを退治するって意気込んで。」


「可哀想で倒せないから、引き返したのが恥ずかしいと。」


「全部言うなって。むぐっ。」


 突然、ピタっとバトランが歩くのを止めたので、私は彼女の背中に顔を突っ込んだ。


 木で作られた道標があった。道は二又に分かれていて、どちらを進むべきか考えるため、彼女は立ち止まったみたいだ。道標に書かれた行き先の文字は・・・読めない。右か左。んーー。


「右の方が良い。リイン、そんなに恥じることでもない。」


「うん、ありがとう・・・。んっ!?」


 後ろから声がしたので振り返ると、見覚えのある容姿があった。濃い金色の長い髪。吸い込まれそうな蒼の瞳。・・・オーダーさん。もう会ってしまった。


「やあ。隣街まで用があってな。よかったよ。街を出るとこだったのか。」


「ええ。リインと私は旅人ですので。ご挨拶はしたかったのですが、どこに住んでいるか分からず。私達もここで会えて良かったです。ね。リイン。」


「う、うん。」


 フード姿や戦いのための装備をしていない。白のシャツに黒のロングスカートを履いた清楚な姿は初めて見た。似合っている。いつものくだけた話し方とのギャップが面白い。そんなオーダーさんがははは、と声を出して笑う。


「さっきも言ったが、恥ずべきことじゃない。リイン。君はドラゴンに寄り添った。戦いは色んな感情を抱かせるし、自分は正しいのかと疑問を持ったりする。そうすると、感情を制御しようとしたり、考えを改めたりする。自分を律するのも大事。一方で、自分のしたいことを貫くのも大事だ。どちらも強さだ。決して卑下することじゃない。」


 多種多様な強さがある。彼女はそれを真っ直ぐに伝えてくれた。こんな私になんて優しい言葉だろう。うんうん、とバトランが頷く。


「私もそう思います。意外と真面目なんですよ、リインは。」


「ずるっ!バトランもあのとき帰ったじゃんか!」


「それは置いといて。オーダーさん。進行方向は右のが良いんですか?」


「ああ。右を曲がって進んだ道にハーヴンという港町がある。栄えている。ちょっと物価は高いが・・・そうだ。報酬が入ったから、これを持っていくといい。」


 オーダーさんはジャラ、と音が鳴る袋を取り出して、中から金貨を一枚私に差し出した。私達がいた街では、現物を見ることはなかったから、金貨には、かなりの価値があるということになる。


「そんな。貰えませんよ。」


「なら私が。」


 そう言って、バトランが手を差し出す。


「おいっ!」

「冗談ですよ。」

「本当に冗談だろうか。疑わしい。」


「うーむ。私としては貰って欲しいんだがな。じゃあ、こうしよう。私はこれから左の街に行かなければならない。リインとバトラン。手合わせ願えないか?最後に君達と全力で戦いたい。その報酬として金貨を出そう。」


 オーダーさんがした提案について、少し迷いつつ、バトランに目を向けると、グッドサインをした。


「まあ、それなら。・・・そんなので良いんですか?」


「本心だ。君達は強い。そう思えた。だから戦いたい。それで十分だろう。こんな原っぱでいきなり申し訳ないが。」


「わかりました。大丈夫です。では、私とバトラン、どちらからやりましょうか?」


「ありがとう。どっちから?はは。そんなの決まっているだろう。同時にだ。」


 オーダーさんは、どこからか取り出した剣を握り私達に向けた。剣先から彼女の期待に胸踊らせる喜びの感情が伝わってきた。


 さて、ここで結果報告をします。


 ボロ負けでした。私達では、全くと言っていいほどに、歯が立たなかった。オーダーさんは本当に強かった。あれが彼女の本気か。恐ろしい。道の途中、何度も溜息が出た。悔しさすら覚えない、清々しく、羨望の感情を抱かせてくれた。だからこれは憧れの溜息だ。


 反省もしておこう。私達は持ち前の対応力や工夫でなんとか強者のふりをしていただけだったということを痛感させられた。私とバトランの二人がかりだというのに、力の差で圧倒された。足りない。そのことに気がついた。その発見が嬉しい。


 剣や魔法を介して、大事なことを沢山教えてもらった。何かを手にした実感がある。私とバトランは幸いにも、この世界で師匠を見つけることが出来た。


 カナイ様へ。もう少しこの世界で大切なことを学んでみたくなりました。バトランも同じ気持ちみたいです。


 私達はオーダーさんとの別れを惜しみつつも、晴れやかな気分でハーヴンの港へと向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ