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あなたは異世界へと人々を転生させる神に選ばれました。  作者: リリー
剣と魔法と無能な神

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スノードロップ

「今、一瞬見えた。形からして尻尾が天井を貫いたみたいだ。」


 オーダーさんが重要なヒントをくれた。大きな尻尾。もふもふでは無かった気がする。そうするとたぶん爬虫類かな。この世界の爬虫類といえば。あ、いや。爬虫類で合ってる?


「・・・ねえ、バトラン。賭けようか。たぶんドラゴンだろうね。」

「私もそう思います。ドラゴンでしょう。」

「ね。展開的にドラゴンしか有り得ない。あーあ。これじゃ賭けにならないかあ。」


 似たような会話をどこかでした気がする。どこの世界でも私達は変わらない。小屋から飛び出して空を見上げてみる。そうすると、なんと。意外にも。


 本物だ。両翼をはためかせる翡翠色の綺麗な皮膚の生物。鋭い眼光と禍々しい牙。噛まれたら、それはもう痛そうだ。


 これは大正解。竜。ドラゴンだ。この距離でもその巨大さが伝わってくる。想像よりも三倍は大きいのが誤算だけれど。


「ドラゴンだっ!!正解のパターンもあったんだね!」


「とても強そうですね。あっ。リイン、そういえば。今言うことじゃないかも知れませんが。」


 そう言って、ずいっとバトランが顔を近づけてきた。


「えっ、なに?」


「私も持ってます。ほら。合格証書とバッジ。だから資格があるのです。試験官はオーダーさんの他にもいますので。倒しましたよ。」


「いつの間に!?ま、いいや。なんかそんな気がしたんだよね。バトランだったら何も不思議じゃないね。じゃ、行こう!オーダーさん。向かいますよね、ドラゴンの元に。私達も連れてって下さい。」


「驚いた。君達は・・・。実戦経験もないのに、戦おうとするのか!?」


 オーダーさんは私達の肩を掴んだ。力が強い。ぎゅうっという音が聞こえてきそうなくらい。喜んでいるようだ。


「私達は、突出した力を持っているわけじゃない。でもここに堂々と暮らしている。暮らさせてくれている。これくらいやらなきゃね。そう思ったんです。」


「リイン、バトラン。私は君達を気に入った。あのドラゴンの進行方向は・・・。」


 オーダーさんが目を閉じて頭に人差し指を当てる。追跡する魔法だろう。いいなぁ。


「わかった!こっちだ!ついてこい!闘技場の方向だ!リイン!君と戦ったあの場所だ!」


 彼女の背中を追いかける。石畳の道を駆け抜けていく。疾走という言葉が相応しい。私の足では追いつかないくらいに速い。離されていく。いや、追いついている!?というか浮いた!?


「私は飛べますので。リイン。本当は屋根の修理代。でしょう?」


 私を抱えながら飛行するバトランが言った。私の知らないところで熟達の域にあるみたい。あるじゃん、突出した才能。ムカつく。それにバレてる。そうです。お金に目が眩んだのです。


「それと。はい。合格祝いです。」


 バトランから剣を受け取った。見覚えのある大剣だ。光に照らされる雪のような銀色のこれは。


「いつぞやの、弱体化の剣!?」


「改良しました。ちゃんと切れ味の良い剣に。魔法も施しました。もう弱体化なんてしません。」


「スノードロップ。」


「え?」


「この剣の名前。今付けた。大事なものには名前を付けるの。剣にはスノードロップ。メイドにはバトラン。みたいにね。」


「随分と可愛らしい名前を付けるんですね。希望の花。洒落た名前ですね。珍しく。」


「でしょ。どっちも可愛いくて大事。片方はスカートが短いから心配になるけど。あれ、照れてる??」


「・・・。そんなわけないです。振り落としますよ。スカートはバトル仕様です。動きやすくて戦いやすいので。」


「ねえ、バトラン。」


「なんですか?」


「長かったねえ。ずっと一緒に仕事して、ようやく外に出れた。今、こうして色々な世界を冒険をしてるなんて。本当に考えられない。私の仕事に巻き込んじゃってごめんね。実は、私もささやかな願いだけ叶えられて転生の女神になったんだ。」


「ええ。仕事が多すぎるから、せめて優秀な人員を一人付けてって言ったんでしょう。」


「あれ。知ってたの。」


「そう説明されましたよ。・・・感謝してますよ。前世の記憶がない者同士ですし。やることと名前をくれたんですから。」


「なんか、今日のバトラン、素直だね。最初の頃みたい。リイン様、リイン様って。リインで良いよって言ったら、いえ!そういうわけにはいきませんっ!まだ関係性が構築されていない状態では!って。ぷぷ。真面目だなって。」


「元より素直です。さ、着きました。無駄口叩いてないで。行きますよ。・・・リイン。」


 ああ、そうか。もうとっくに構築されていたんだ。そう思っていてくれたんだ。


「おう!バトラン。さっさとドラゴン退治して。冒険の旅を続けましょうか。」


「本当は屋根の修理代、でしょう?」


 闘技場の中央で、ドラゴンの咆哮が鼓膜だけでなく私の身体全体をビリビリと揺らす。オーダーさんが後ろにいる私達に振り返って、言った。


「途中、私に付いてこられるかどうかが気になっていたが。しっかりと付いてきた。バトラン。君は一体?まあ、いいや。正面は私が担当する。私が引き付ける。後ろか横から攻撃を加えてくれ。」


「承知しました。リイン。私が後ろで。」


「私が横から!だね!」

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