来客、オーダー
「合格です。おめでとうございます。」
「むにゃ。んー?」
バトランの声で目を覚ます。私達が暮らす小屋のベッド。最初は奪い合いだった一つのベッド。仕方がないから夜は一緒に寝ている。
むくりと起き上がると、何かが書かれた紙と銀色に輝くバッジを彼女が手渡してくれた。
「ふああ。回復してくれたみたいだね。ありがとう。え?なにこれ?◯ンドセレクション?」
「何を言ってるんですか?意味不明です。だから合格ですって。それは合格証書と証明のバッジです。」
まだ寝ぼけているのかな?試験は終わった。私は確かに負けたはずだった。じゃあ、これは何だ。事実が捻じ曲がっている。
「リインが疑うと思って証人も連れてきました。」
待っていたかのようにキイ、と扉が開く。
「おめでとう。リイン。」
入ってきたのは容姿から推察すると私よりも二、三個上の年齢くらいに見える女性だった。
私よりも濃い金色の長い髪だ。よく手入れされている。それに吸い込まれそうな蒼の瞳。一言で言うと異世界っぽい見た目だ。私と髪の色も似ているし、私のお姉さんになってもらうか。私が何歳か?忘れた。
「お姉ちゃん。はっ!」
願望が声に出てしまった。
「ん?まだ寝ぼけているみたいだな。」
「ご安心を。リインが単純に気持ち悪いだけです。」
気持ち悪い言うな。気持ち悪いか?うん、気持ち悪いな。
「あ、いや綺麗だったから思わず。ええと、私を知っているみたいですが?」
「褒めて頂きありがとう。私からも君を褒めよう。快挙だ。魔法無しで私の石の騎士を倒すなんて初めてだ。こう言えば分かるかな?」
「えっ!?試験官!?」
「そうだ。オーダーだ。よろしく。喋らなかったから驚くのも無理はないな。受験者は皆、本気で向かってくるのだから。私は余計なことは話さないし、顔を出さない。受験者にとっての憎き敵でありたいのだ。とは言っても最近は。あ。続けていいだろうか。」
「どうぞどうぞ。私達はえっと。遠い国から来ているので。あまりこの世界、じゃなくて。この国を知らないので。色々と聞きたいから。」
噛み噛みだ。設定をしっかりと練っておくべきだった。
「そうだったのか。それなら納得だ。戦闘に魔法をあまり使わない国もあるそうだからな。どこまで話したかな・・・ああ、そうだ。ピット・ファイターの質が悪くなってきている。実力がじゃない。心根が。ならず者と変わらないような連中もいる。それを認める試験官も悪いが。昔は多くの者が出動要請にも積極的だった。今は参加者は減るばかりだ。全く。」
「その出動要請というのは?」
出動要請。何かを手伝わされているのは分かった。私が聞きたかったことをバトランが聞いてくれた。
「驚いた。君達の国は随分と平和な国なんだな。バトラン。何という国なんだ?聞いておきたい。」
「ええ・・・ナニモナイ国です。」
バトランの即興で出た言葉に笑いそうになる。彼女にギロリと睨みつけられる。
「ナニモナイ国。へえ、覚えておこう。」
いや、忘れて、とバトランが小さく呟いた。オーダーさんが続ける。
「災害級の外敵が侵入してきたり、若しくは、災害が起こったときにピット・ファイターに出動要請が国から発令されるんだ。冒険者が自ら進んで敵を倒す者として攻めと例えるなら、ピット・ファイターは守りの役割だ。」
「災害級の外敵って・・・。」
「伏せろっ!!」
突如、オーダーさんが叫んだ。
バリバリバリバリ!!
何かが天井を押し潰して突き破った。木製の小屋ではひとたまりも無かった。
寸前でオーダーさんがバトランと私に覆い被さってくれたお陰で助かった。
「頑張ってバトランと立てたマイホームが!!」
「私のお金で、です。リイン、あなたは居候でしかありません。」




