孤独な王、ガラン
「シーヴ。教えて。私達が連れてこられた理由。まさか、伝説の勇者だからと本気で言うんじゃないでしょ?」
「リイン。教えて頂ける道理がないと思いますが。」
「いや、いい。どうせ終わりだ。王は他人を信用しない。懇願したって変わらない。勇者の伝説か。そんなもの存在しない。お前達が来る少し前くらいから噂を流すように指示されただけだ。遠くから勇者がくる。最初はそんなものだった。」
「噂は伝聞を通じて大きくなっていったのですね。私達が隣の村から来たとしても同じだったかも知れませんね。」
「えっ。じゃあ何のために私達は。」
「分かりません。神のみぞ知り得ますね。リインには知らされていないみたいですけど。私からも一つ質問があります。」
「ああ、いいよ。」
シーヴからはもう殺意を感じない。むしろ、肩の荷が降りたのか落ち着いている。バトランはその様子から彼が質問に答えてくれると思ったのだろう。
「王様の居場所です。出来れば連れて行って欲しいのですが。もしかしたら、シーヴさん。あなたの未来を変えることが出来るかも知れません。あと。不思議な力の詳細についても。」
「質問が増えてないか?まあ、いいけどさ。連れてってやるよ。王の不思議な力の詳細は王しか知らない。言っただろ。誰も信用していないって。なら、直接確認するしかない。」
「ありがとうございます。」
意外と素直だな。ああ、こいつ。メイド服が好きなのか?王様の不思議な力、ねえ。あれ?
「ねえ、シーヴ。王様は人の存在を消せるんだよね?それはどうやって知ったの?だって、気に入らない人を消せたとして。消されたことを認識出来るのは王様だけってことにならない?」
「・・・あ。確かにそれはそうだ。皆が言っていたんだ。まるで誰かが消されたように。・・・俺にも目的が出来たな。あんた賢いんだな。メイドの方と同じくらいに。てっきり馬鹿だと思っていた。」
「・・・もう一回殴ろうか?」
今度こそ王に会いに行く。招かれるのではなく、こちらから出向いてやる。
シーヴの存在が消される日について、明日には、と言っていた。彼と話して王の不思議な力の信憑性は揺らいでいたけれど、明日を待つことは出来ない。本当である可能性が完全には拭えないからだ。
夜の薄暗闇の中、松明を持ったシーヴの案内の下、ようやく辿り着いた王宮はさっきまでいた別館とは比べ物にならない程に大きかった。
周りから音が全くしない。嫌な予感がした。私達は王宮の扉を開けた。
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カナイ様。久しぶりに報告します。これだけの労力をかけてここまで来たけれど、後のことは何とも呆気ないものでした。
シーヴと私達はついに王宮に入りました。中には見たことのないものがぽつんと置いてありました。奇妙でした。それは大きな箱でした。
箱の中には王様が入っていました。王様は、そこに入ってから何年も経っているように見受けられました。王の頭部には私でも知らないような、この世界にそぐわない機械装置が繋がっていました。
この世界は彼の孤独な世界のようです。不幸な死者はせっかく転生するのですから、幸せな夢の実現や希望に満ちた来世を願うものだとずっと思っていました。
何があったのかは存じ上げませんが、私は彼が願った内容をこのように解釈しました。
『誰とも関わらずに死にたい。』
当初の願いは、そんな願いだったのではないでしょうか。転生者は新たな存在として新たな世界で生命を宿します。しかし、彼の願いは叶えることが出来ません。聞き入れる神はいないはずだからです。では、それをどうやって実現するか。
思考を巡らせて、私なりに考えました。死ぬのはある程度簡単です。でも、誰とも関わらない。それはとても難しいと思います。でも、どこかの国で最も高い地位を手に入れられるなら、実現の可能生は高まります。
『国民を統べる王になりたい。』
私とは別の転生の神に願ったのはそんなところだと思います。
世界には秩序があります。世界には支配する者とされる者が必ず存在します。孤独な国王と従順な国民。その関係性を保ちつつ、当初の願いを実現するために、彼は王として転生する必要があったのではないでしょうか。
そして、王宮にあった機械。それの機能は生命維持装置でした。彼の生命と世界を維持するための装置です。
その装置は国民に王からの命令を伝えたり、噂や伝説といった認識を与え、だれも王様に寄りつかないようにすることが出来るようです。高度な技術が使われています。だから、王は転生をしてきたと考えました。
旅の中で私達は門番である青年に会いました。シーヴといいます。彼は王様を見たことはないと言いました。しかし、彼には命令が下され、それを実行するために私達を排除しようとしました。
王を失った国家は新たな王が支配するか、崩壊するかの道を辿ります。王は自身の生命を維持することで国を存続させていました。
王が私とバトランを排除する理由。それはこの安寧を破壊する外的要因そのものに他ならないからです。
あの王様は再び転生をすることを望んでいないのではないでしょうか。
ところで、王は冷酷でしょうか。私はそうは思いません。自分のいなくなった世界を憂いて、自国のために死と生を続ける彼はとても優しい人間だったと思います。
無限の命はあり得ません。また、神は責任をとりません。それでもあの国と国民は前進を選択しました。
私は期待することにします。この国の今後については、無責任にもシーヴ王に任せましょう。誰よりも幸せを願ったガラン王に多幸が訪れますように。
リインより




