砂糖菓子の願い
シーヴは未だに気絶したままだ。逃げても仕方ないし、色々と確認したいので彼の回復を待つ。バトランが乾いたパンと水を取り出した。戦いは終わったけれど、2人でパンを齧りながら、更なる長期戦に突入した。
シーヴが起きない。本当に大丈夫なのだろうか。やってしまったのでは?恐る恐る確認してみる。息はある。安堵した。
市場で買った色彩豊かな砂糖菓子を口に含み、舌で転がす。とても甘い。簡素な幸福が瞬時に伝わった。
しかし、舐め続けていると、その広がった甘さの広大さに、すぐにもう沢山だと感じた。その後も続く甘さに不快になった。
「ねえ、バトラン。おやつ。いる?」
「いりません。そんな毒キノコみたいな色の。」
それから、かなりの時間が経った。空はもう少しで夜になるくらいに暗くなりつつあった。ようやく、ゆっくりと彼は目を開き、起き上がった。
「まずいことになった。」
開口一番にシーヴが言った。言葉と心は一緒だった。
「どういうことですか?」
投げかけた疑問によって、彼が私達の存在に気付いた。状況を理解したようだった。私の質問に答えるかどうか彼は躊躇いつつも、肩を落として、全てを諦めたような表情になった。
「王に報告をしなければならなかった。しかし、今はもう夜だ。報告をしなかった私は。」
「・・・殺される?」
「いや、もう殺されたも同然だ。報告がなかったなら。俺は命令に背いたとみなされ、明日にはいないだろう。王には不思議な力がある。最初から存在しなかったことになる。塵すらも残らない。」
シーヴは丁寧な話し方を取り去って、砕けた口調で言った。
「そんな力があるのですね。リイン。それってもしかして、王様は。」
バトランの言うように答えは一つしかない。
「うん。神のご加護だろうね。この国の王様は転生者。どんな願いの結果なのかは分からないけど。人の生死を自由に決めることが出来る力だ。・・・きっと。」
その後の発言を私は慎んだ。心に秘めておいた。きっと、凄惨な人生だった。かつては裏切られたり、理不尽にあったりして。絶望の中で死んだのだろう。そうでなければ、そんな悲しい力を得ることはないのだから。
願いを叶えるかどうかの裁量は転生の神に委ねられている。だから、そんな願いを叶えた神もいるということだ。神に誓って私ではない。ないけれど。私もそうなっていたかもしれない。
かつて別の世界で出会った少女のことを思い出す。神様は後悔するか。少なくとも、私は今している。
辛酸みたいな人生を変える甘い砂糖菓子みたいな願い。神様はそれを転生者に与え続けていいのだろうか。
彼等は砂糖菓子のような人生に苦しんでいる。
私に出来ることは・・・。まずは知ること。私に足りなかったこと。だから、シーヴに聞いてみることにした。




