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8話:レベルアップ!

 元の世界に戻るためには、どのみちこの世界の王たちを倒さなければならない。

 王たちの強さは未知数だが、強くなっておく分には損はないだろう。

 だったら、カドナと名乗るこの女性からの取引を受けて損はないか。

 とはいえ分からないことがまだまだたくさんだ。


 取引は受ける前提として……ここから深く聞いてみるとしますか。

 まずはエナについて具体的に聞いておかないとな。


「その、エナというのは?」

「生物などを倒したときに、光る塵が出る……あれがエナ」


 あぁ、あれか!

 確かに敵を倒したときに出てきていたが、あれがエナというものだったのか。

 俺も、なんとなくは魔素(マナ)とか(ソウル)のようなものだと思っていたが、結構まんまじゃないか!

 だとすると、今までにそこそこ戦ってきたし、俺の体内には相応のエナが蓄えられているはず。

 ならばこの取引、受けない理由がますますなくなってきたな。


「なるほど。もし、そのエナというのを力に換えられるのが本当なら、その取引とやらに応じてもいい」

「分かりました……」


 するとカドナは立ち上がり、静かに俺の側へ近づく。


「ならば百聞は一見に如かず。流人様、貴方の手を私に触れさせてください」


 カドナは両手を差し出し、俺が手を置くのを待っている。

 手で触れ合うことが術を行使する条件なのだろう。


 果たして、本当に信用してもいいのだろうか……?

 好奇心と警戒心が入り混じる……が、やがて好奇心が勝った。

 左手をカドナの両手の上に置く。


「これでいいのか?」


 俺は尋ねる。

 だがカドナは返事はせず、目を閉じ、低い声で何やら詠唱を始めた。

 すると、周囲にキラキラと光る粒子が漂い始めた。


「ほー、これがエナか」


 俺の体内から現れたエナはキラキラと輝き、空中を舞っている。

 思わず見とれていると、突如として俺の眼前に半透明のウィンドウが浮かび上がった。


〈レベルアップ〉


「おぉ?! き、来た! レベルアップ!!」


 そう、ウィンドウには〈レベルアップ〉の項目が記載されていたのだ。


 おぉ、レベルアップ!

 なんて甘美な響きだ……!

 幾多のアニメやゲームで見てきた素敵な設定!

 数値を割り振るだけで強くなれる恩恵チート


 これで俺も強くなれる!

 そう思うと顔が綻びそうになってしまうが、それを必死で堪え、冷静を装う。

 ここで下卑た笑いを聞かれて、不信感を持たれたくはないからな!

 しても本当に俺の予想通り、カドナは|レベルアップしてくれるキャラ《メインヒロイン》のようだ。


 〈レベルアップ〉の画面を確認していく。

 色々と見た結果、どうやら現状だとレベルを二つ分上げられるらしい。

 ステータスには知力や信仰といった項目もあるが……おそらくは魔法関係のパラメータだろう。


 個人的には魔法を使いたいが……。

 本当にあるのかどうか分からないものに賭けをするほど馬鹿ではない。

 さすがに知力や信仰とかは、魔法の存在を確認してからパラメータを振るか考えたほうがいいか。

 そうなると、実のところ選択肢は三つぐらいしかない。


 それは、生命力・持久力・筋力。

 いずれも腐らないステータスだが、何より大事なのは死にゲー(ソウルライク)の鉄則『死なないこと』。

 だったら生命力一択だろうな。


 少々ロマンに欠けるが、まだまだ低レベル。

 本当に振りたいパラメータが来たときに、また振ればいいだろう。


 画面を操作し、レベル二つ分の数値を生命力に割り振る。

 そして確定。

 すると、周囲のエナが俺の中に取り込まれるように吸収されていった。


――――――――――――――――――――――

〈ステータス〉

レベル:9 → 11

HP:397 → 433

MP:55

スタミナ:75

発見力:95


生命力:9 → 11

精神力:12

持久力:6

筋力:10

技量:9

知力:5

信仰:7

神秘:4

耐久:6

幸運:4

――――――――――――――――――――――


 これがレベルアップの感覚……!

 僅かだが、身体に活力を感じる。

 スタミナとはまた別の、生命の限界値が上がったかのような感覚だ。


「……終わりました」


 カドナが俺の手を離し、元の姿勢に戻る。


「確かに、力を得たような実感を感じられた」

「えぇ、それは良かった」


 さて、これでカドナの術はレベルアップということが判明した。

 であるならば、これからも強くなるにはカドナの力が不可欠だろう。


「分かった、カドナさん、貴方を信じましょう」

「では、今後ともよろしくお願いします」


 カドナは微かに笑みを浮かべ、軽く頭を下げる。

 これで取引成立というわけだ。


「それと、私たちは対等な取引を結んだ身。呼び捨てで構いません」

「分かったよ、カドナ」

「改めて、よろしくお願いします、流人様」


 しかしまぁ、流人様って呼ばれるのはなんだかむず痒いな……。

 どうして名前で呼んでくれないのか……っと、そういえば名乗っていなかったか。


「その、流人様というのはやめてほしい……俺の名前はユウマだ。カドナも名前で呼んでくれると助かるよ」

「ではユウマと呼ばせていただきますね」

「おう、今後ともよろしく」


 こうして俺とカドナの、この世界エスラリヴの王を目指す二人旅が始まったのだった。



====================



【TIPS】

エナ


生物が死んだ後になる光る塵。

魂の粒子だとされ、倒された者のエナは、倒した者に取り込まれるように吸収される。

より強い存在であればあるほど多くのエナを保有しているため、倒したときに大量のエナが発生する。


使い道としては、心身の強化を初めとして、武器を強化、商いのための通貨などに使われる。

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