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18話:ボス部屋前には篝火があるものだろ?

 宝箱のあった部屋を離れ、俺は引き続きレムイル城の攻略を続ける。

 ここに来るまでに何度かの兵士と遭遇し、その内の何体かを撃破してきた。


 そういえば、エナはどれぐらい溜まったのだろうか。

 そろそろレベルアップできる頃合いなんじゃないか?

 篝火を見かけた時はカドナに頼んでレベルアップさせてもらおう。


「それにしても城内は酷い有様だな」


 崩壊した城内は、歩くたびに足元の瓦礫がガラガラと音を立てる。

 壁にはひびが入り、天井は崩落寸前。

 至る所に焦げ跡が残り、未だに燻る炎が黒煙を上げている。

 これも全てアカムギルトの仕業なのだろうか。

 そう考えると、よくそんな相手に喧嘩を吹っかけたなと自嘲的な笑いが出てきてしまった。


 進むうちに、目の前に立派な階段が現れた。

 明らかに仰々しい造りだ。

 となると、おそらくこの先にあるのは大層立派なもの……そう、玉座の間があるはず。


 俺は気を引き締め階段を上がると、一際目立つ扉が徐々に姿を表した。

 これまで見てきた扉とは格が違う。

 重厚で、装飾も立派。

 まるで王の威厳そのものを具現化したかのような圧倒的な存在感を放っている。


「間違いないな、この先はボス部屋(玉座の間)だ」

 

 そして、俺の直感があるお約束を思い出した。

 “ボス部屋の近くには篝火がある”というやつだ。

 距離の差はあれど、死にゲー(ソウルライク)においてボス部屋前には必ずセーブ・復活ポイントがあるものだ。


 俺が見落としている可能性も大いにあるだろうが、今のところ城門近くにあった篝火ぐらいしか見つけられていない。

 さすがにあそこから、ここまで来るのには骨が折れる。


「頼むから篝火、あってくれよー!」


 階段を上がりきった俺は、さっそく周囲を見渡してみた。


「さぁ、近くに篝火はあるかな~っと、おっ!」


 視線を横に逸らすと、そこには静かに燻る種火があった。

 有り難いことに、この辺のお約束は完備ってわけだ。

 

 俺は火に飛び込む蛾のように篝火へと近づき、燻る種火に手をかざす。

 すると火は勢いを取り戻し、俺を温かく包み込んでくれた。

 さっそく、ヨイショっと腰を下ろし、篝火で暖をとる。


 「ふぅ、心が安らぐ……」


 火を眺める瞬間ってどうしてこんなに心安らぐのだろうか……。

 パチパチと火の粉が爆ぜる音が耳に心地良い。

 何十分でも、何時間でも眺めていられそうだ。


「あっ、そうだ」


 忘れない内にカドナにレベルアップを頼もう。

 ボス戦前だし、無事死亡からのエナを喪失ということにはなりたくない。

 そう思い、カドナを呼ぼうとした――が。


「……ん?」


 視界の端に、何かがいた。


 篝火から少し離れた場所で、うずくまる人影。

 それは男のようだった。

 煤けた衣服を纏い、体中に傷を負っている。

 この都市の住民なのだろうか?


「ウッ……ウゥ……」


 その男が呻き声をあげている。

 力のこもっていない、恐れと不安に満ちたか細い声。


 俺は警戒しながら、男を観察する。

 命からがら逃げ延びれた……といったところか。


「喰わないでくれ……私たちが何をした……悪いのは王だ……あんな化け物……刺激せずに追放すれば良かったのに……」


 男は正気を失ったように、ブツブツと呟いている。

 誰に言うでもなく、ただひたすらに。


 レムイル城の王が、ウォーランとアカムギルトを受け入れなかったがために起こった戦争だ。

 そして民は、その戦争の被害者ということになるのだろうが……。


「……関わらない方がよさそうだな」


 非情かもしれないが、いちいち手を差し伸べるほど俺はお人好しではない。

 それに、今は余裕がない。

 とはいえアカムギルトを倒せば、結果的に彼の恐怖の元を断つことにはなるだろう。


 男が襲ってくる気配はなかったので、とりあえずそのまま放置することにした。

 さて、今度こそカドナを呼ぼう。


「カドナ、ちょっといいか」


 虚空に声をかけると、どこからともなく霊体が現れ、実体化する。


「呼んだ?」

「あぁ、俺の中にあるエナを力に換えさせてほしい」

「分かった。それじゃあ貴方の手を私に預けて」

「おう」


 カドナは俺の手を取り、呪文を唱え始める。

 体内に蓄えられたエナが中空に放出され、俺の周りを舞い始める。

 結構な量だった。

 これだとレベルアップできる数も多いんじゃないか?


 準備が整ったのか、俺の目の前にレベルアップのウィンドウが表示された。

 今回はレベルを三つ分上げられるようだ。


 「さて、何を上げるか……」


 前回は生命力を上げたので、今回は持久力と筋力を強化しようかな。

 どちらも腐らないステータスであり、上げれば上げるほど得をする。


 今後色んな武器を手に入れられることに対する期待も込めて筋力を多めに振りたい気持ちがあった。

 筋力不足で振るえませんっていうのは実に悲しい。

 なので今回は持久力に1ポイント、筋力に2ポイント振ることにしよう。

 俺はレベルアップの項目を選択し、決定する。


――――――――――――――――――――――

〈ステータス〉

レベル:11 → 14

HP:433

MP:55

スタミナ:75

発見力:95


生命力:11

精神力:12

持久力:6 → 7

筋力:10 → 12

技量:9

知力:5

信仰:7

神秘:4

耐久:6

幸運:4

――――――――――――――――――――――


 レベルアップを確定すると、俺の周囲を舞っているエナが次々と身体に同化していき、力へと換わっていく。

 さて、筋力を上げた恩恵はどれほどまでにあるのか。

 大半のエナと同化するとレベルアップの儀が終わったのか、カドナは俺の手を離した。


「終わった」

「おう、ありがとうな」


 俺は試しに《ロングソード》を構えて振るってみる。

 空を斬る音が、前より重く、威力が増した気がする。

 振りの鋭さが増したのだろうか……?


「前より少しだけ強くなった……気がする」

「それは良かった。着実に強くなっているはず、これからも頑張って」

「ハハッ、精進するよ」

「期待してる」


 やるべきことはやった。

 これ以上、この場に留まる理由はない。


「さて……そろそろアカムギルトと再会といきますか」


 俺は重厚な扉を見据え、ゆっくりと立ち上がった。



====================



【TIPS】

パリィ

種類:スキル

消費MP:なし

適用可能武器種:小盾・中盾


相手の攻撃を逸らし、多大な隙を生じさせる技。

体勢が崩した相手には致命の一撃を与えられるようになる。

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