1話:俺、誕生!
俺は死んだ。
そして異世界に転生した。
何故そう思うのか。
目の前に広がる見知らぬ景色が、異世界に俺が転生したのだと認識させるからだ。
泥濘んだ沼、鬱蒼と生い茂る草むら、乱雑に立ち並ぶ墓石の数々。
陰鬱なこの場所で俺は墓石から蘇ったかのように起き上がった。
そんな展開、異世界転生でもなければ説明がつかないだろ。
ともあれ、まだ完全に異世界転生と決まったわけではない。
だが、あれをやってみれば分かる。
そう、異世界に来たからにはまずやるべきことだ。
「ステータスオープン!」
言葉とともに、目の前に半透明の画面が投影された。
「おお……本当に出た……やっぱここは異世界なのか……!」
仮定が事実へと変わり、異世界へと転生した実感が途端に湧き出す。
幾多のアニメや小説で見てきた異世界に俺は来たってことだ……!
半端じゃなく興奮するぞ!
さっそく、投影された半透明の画面を確認してみた。
映し出された文字はしっかりと読める。
〈ステータス〉や〈装備の確認〉といった項目が並び、どうやら一通りの情報が確認できそうだ。
まず〈ステータス〉を選択してみる。
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〈ステータス〉
レベル:9
HP:397
MP:55
スタミナ:75
発見力:95
生命力:9
精神力:12
持久力:6
筋力:10
技量:9
知力:5
信仰:7
神秘:4
耐久:6
幸運:4
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「これが俺のステータスか……ふむふむ……」
詳細な意味は分からないが、精神力がずば抜けて高いことだけは理解できた。
次点で生命力と筋力が高め。
職業やジョブの記載はないが、強いて言うなら騎士タイプといったところか。
しかし、このパラメータの雰囲気……前世でやっていた死にゲーを思い出すな。
それはさておき、次は装備を確認してみよう。
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〈装備の確認〉
右手:ロングソード
左手:カイトシールド
兜:下級騎士の兜
胴:下級騎士の鎧
手甲:下級騎士の手甲
足甲:下級騎士の足甲
アクセサリー:なし
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「おぉ……しっかり騎士装備じゃないか!」
勝手に騎士タイプだと思い込んでいたが、どうやら本当に騎士だったらしい。
改めて手元や身体を見たり触ったりしてみる。
ゴツゴツとした鋼鉄の感触が伝わる。
確かに俺は鎧を着ている……。
だが、不思議と重さを感じない。
前世ならこんなフルプレートを着て歩くどころか、立っていることすら困難だったはずだ。
つまり、これが異世界転生の恩恵ってやつか!
調べればもっと恩恵があるかもしれない。
色々調べてみよう!
次は武器と盾を確認しよう――と思ったが、手には持っていない。
なんとなく《ロングソード》と《カイトシールド》を意識してみる。
ふと手元に重さを感じた。
気づけば右手には《ロングソード》、左手には《カイトシールド》を握っている。
「おおっ!? なるほど、意識すれば具現化するのか……」
試しに武器を持っている感覚を薄れさせ、両手から意識を外す。
すると、今度はスッと装備が消え失せた。
「ふむふむ、だいたい分かってきたぞ」
自由に出し入れできるのは、かなり使い勝手が良さそうだ。
それにしても《ロングソード》と《カイトシールド》とは、まさに騎士らしい装備だな。
短剣や鞭といった扱いが難しい武器でなくて助かった。
戦い方を知らなくても《ロングソード》を振り回すだけでとりあえずはなんとかなるだろう。
《カイトシールド》も防御をするのに十分なサイズ感と重量をしている。
どちらも頼りになりそうだ。
さて……さすがにそろそろここを出るか。
墓石にもたれていたのは意外と悪くなかったが、俺には異世界での冒険が待っているのだ。
あわよくば美少女ヒロインたちとハーレムに……!
うーん、楽しみ!
俺の冒険の序章は、今ここから始まるのだ!
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【TIPS】
ロングソード
種類:直剣
スキル:なし
特殊効果:なし
必要能力値:筋力:9 技量:7 知力:- 信仰:- 神秘:-
汎用的な基本性能を持つ両刃の剣。
派手さや目を光る点がなく、ひたすらに地味な武器と言える。
だがその扱いやすさは他の武器の追随を許さず、新米から熟練者まで幅広く使われている。
時に相棒として、時に戦の師として、使い手を導く心強い武器となってくれるだろう。