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8、開戦の火蓋

 数日後、デスロイドから手紙が来た。

 どうやらキングはもう隣町に着いていて、早ければ昼には王都に来るということだ。

 デスロイドが考えてくれた作戦を無駄にするわけにはいかない。


「ラヴァさん、今日はおとなしく従ってください」

「わかってるよ」


 そう言いながら彼女は外に出る支度を始める。

 俺は先に朝市で朝食を買う。


「お待たせ」

「早かったですね、行きましょうか」


 朝食に買ったのは、売店で売っていたハムサンドと卵サンド。

 ちなみにこのハムサンド、めっちゃ安かったので理由を聞いたら大陸の端にある森でオークが大発生しているかららしい。

 オークは見た目や性格から高貴な方は食すのを好まないが、庶民にとっては安価で美味しいタンパク源だ。


 この前の公園でデスロイドと合流する。

 デスロイドについて行くと、着いたのは隣町と首都を結ぶ何もないただの道。

 ただの道じゃないと周りに被害が出るからな。

 それでも人は通るだろうから静かにやらなければならない。


「それで、いつ来るのその人は」


 彼女は卵サンドを頬張りながら言う。


「さぁ、それはわかりません」

「もしかしたら今来るかもしれないってことだね」

「はい、その可能性もあります」

「まぁ私不死身だから大丈夫だよ」

「え?」


 デスロイドが驚く。

 そう言えばラヴァさんが不死身ってことは知らないのか……


「っていう冗談ですよね」

「は…はぁ……」


 やっぱりだ。不死身、特殊混血のことは知られていない。

 この情報が流出するとかなりヤバい。

 良くて解剖、悪くて戦争だな。

 どちらにしてもラヴァさんに利はない。

 彼女は不死身であるだけで、圧倒的強者から拘束されたら負けだ。

 逃げるのは難しいだろう。


「デスロイド、ちょっと外してくれないか」

「なんです?機密情報ですか?」

「詮索は辞めろ、ここまで来て作戦失敗はいやでしょう」


 デスロイドは渋々少し遠くへ移動する。


「ルザード君。そんなに2人きりになりたかったの?」


 またからかってるな。


「いや真面目な話です」

「わかったよ」

「ラヴァさん、この戦い、いやこの先でも人の前では死なないでください」

「どういうこと?不死身だから死なないよ」

「不死身ってことがバレたらいけないんですよ!」


 彼女は動きを止めた。

 考えているのだろうか?


「まぁ俺に教えてるぐらいなので機密情報って扱いじゃないかもしれませんけど」

「いやいや、ルザード君は特別だよ」

「それは置いといて、これからは機密情報として扱ってください」

「置いとかないでよ」


 やっぱりからかわれてるかもしれない。


「話は終わったんですか」

「はい、終わりました」


 デスロイドは帽子を深くかぶり直す。


「恐らくそろそろ来ます。始まる前に奴の能力だけ知っておいてください」

「スキルってことですか」


 スキルというのは"天が与える"と言われている。

 普通1つだが遺伝や鍛錬によって増えると言われている。


「はい。奴のスキルは1つだけ。武器を召喚するというものです」

「聞いたことはあります。かなり凶悪だとか」


 ジャレッド・キングは王国騎士団に入りたての時、そのスキルで魔王直属の四天王の1人を追い返している。

 俺はまだ学生だったが、その時の盛り上がりようと言ったらとんでもなかった。

 ちなみにその1カ月程後にキングのエルフ密売と、強姦罪がバレて好感度は地に落ちた。

 そのため英雄のはずなのだが、国民から、いや、国内外の人から嫌われている。


「向こうで砂煙が上がっています。来ますよ」


 本当だ。小さな砂煙、だんだん近づいて来ている。

 デスロイドが剣を抜く。


「あれは、商人の馬車ですかね」

「どうやら思い違いのようだね」


 近づいて来たのは2匹の馬に引かせ藁を積んだ商業馬車。

 馬車が通り過ぎた瞬間デスロイドが藁に剣を突き刺す。

 抜かれた剣には血がついていた。


「単純ですね、キング」


 藁の中からがたいのいい男が出てくる。

 茶髪でサングラスが似合うイケメン、デスロイドに刺された肩からは血が流れている。


「あぁうん。変わんねぇなそちらは」

「引き返してもらえませんかね」


 デスロイドは半ば適当に提案をする。

 キングは少し考えて答える。


「エルフ2匹で考えてやっても良い」

「そんなことだろうと思いましたよ」


 デスロイドの剣に刻印が浮かび上がる。


「相変わらず長い剣だな」

「そちらも相変わらずの性欲で」


 硬直状態が少しの間続く。

 ラヴァさんはコートのフードを深くかぶっているため顔は見られていない。


「2人ともこの時間だけで睡眠魔法の刻印が終わりました。後は奴に当てるだけです」

「わかりました」

「おい、ルザード。何コソコソ話してんだ。俺にも教えてくれよ」


 キングは雑な挑発とともに、小さなナイフを取り出す。


「来ますよ」


 キングはナイフを大量に召喚、全ての軌道をバラバラにこちらへ飛ばしてきた。


「呪權、暴れろ」


 俺は呪權で一つ一つナイフを弾き返す。

 弾き返されて地面に突き刺さったナイフは細かい粒子となって消えていく。

 恐らく魔法によって創造されたもの、MPには限界があるはず。

 ラヴァさんは防御魔法を全面展開し、ナイフを防ぐ。


「ハハッいいねぇー。ルザードお前強いなぁー。

そっちのフードは女だろう。顔見せろよ」


 弩弓(クロスボウ)を2丁召喚させ、彼女の防御魔法に連射する。

 防御魔法が壊れるが、驚異の動体視力でそれを躱す。


「流石に弩弓(クロスボウ)程度は避けれるかもなぁ。じゃあこっちはどうだ」


 キングが取り出したのは……なんだあれ?

 弩弓(クロスボウ)よりも小さい金属製の物からパァンという大きい音が鳴り響く。

 何かが発射されたのは見えた。

 音の直後にその何かが彼女の頭の横を通過する。


「やっぱり、新型の武器(ピストル)は精度がイマイチだなぁ」


 当たりはしなかったがその空圧でフードがめくれ彼女の顔があらわになる。


「なんだぁー。エルフじゃん。かわいいじゃん」

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