7、作戦会議
「私がこんなお願いをした理由、それはあなた方の為なんですよ」
「と、言いますと?」
「あなた方、いやルザードさんはアーサー王から狙われています」
アーサー・デュバル王か。
英雄から国王にまで上り詰めたのだから、野心はめっぽう高いだろう。
邪魔に思われていても無理はない。
「なるほど、それで誰が派遣されたんです?」
「ジャレッド・キングです」
「それは誰なんだ?」
「デュバル国王騎士団1番隊隊長、つまり俺の元上司です」
ジャレッド・キングは俺が知っている中では間違いなくデュバル最強だ。
残忍、残酷で騎士道精神の欠片も持っていないような男だが、確かな実力と金に目がない性格から王国騎士団にスカウトされた。
「デュバルでは有名人ですけど、ラヴァさんは知らないかと。1つ言えるとしたら、ものすごく強いってことですかね」
「それならSランク冒険者に倒してもらえばいいじゃん」
「国家反逆罪で捕まりたくはありません。それに私でも勝てるかわかりません」
ジャレッド・キングの本気は計り知れない。
戦っている姿を見たことはあるが、本気よりも遊びという感じが強かった。
「そこで提案です。私と一緒に彼を罠にはめませんか?」
確かに武力で勝てないんだ、知略で勝つしかない。
「逃げるってのはダメなの?」
「はい、それは余計にキングを怒らせます」
デスロイドの案が最適解だ。
信用して良いのかはまだわからないが、キング相手に何もできないよりはマシだろう。
「罠の内容を聞きましょうか」
「提案に乗ってくれるということですね」
「はい」
「それでは、簡単に説明します。今回我々が行うのはキングを眠らせる、それだけです」
どうやらデスロイドの得意分野が精神干渉魔法でそれを最大限活かせる、かつ成功する確率が高い作戦がこれだそう。
相手は強敵、精神干渉にもある程度耐性があるだろう。
そのため俺達2人に任されたのは時間稼ぎ、指定された時間は5分、不可能ではない。
どうやらキングは既に国境の検問所に差し掛かっているそうだ。
「恐らくあと3週間ほどで到着するでしょう」
「それなら3週間後に呼んでよ」
「準備のため早めに話したのですが……」
「私達まだやりたい事あるからさ」
「ですが……」
「ルザード君行こうか」
彼女に手を引っ張られて宿まで戻ってきた。
「流石に全部話を聞いてからの方が良かったんじゃ」
「え、だって眠かったから」
そうだこの人そういう人だった。
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「おはようございます」
「おはよう、早いね」
「ラヴァさんこそ、早起きできるんですね」
秋ももう終わり、そろそろ冬を感じられる時期だ。
首都ガンフォールは内陸の盆地なので1年中涼しい気候だ。
「ルザード君、コート買いに行こう」
デュバルは南からの季節風のお陰で温暖だったので防寒着を持っていない。
あるにはあるが、薄手のジャケットぐらいしかない。
それもほとんど使わないがな。
1つ山脈を隔てたくらいでここまで変わるんだな。
「良いですよ。洋服屋でも行きましょうか」
「デートってことでいいのかな?」
「何でもいいですよ」
まだ発展途中の首都だがもう洋服店、飲食店が揃っている。
見たことがない食べ物や道具が多くあり、人間以外の種族もいる。
「みてみて、原始人の服だって」
「原始人はしばらく見たくないですかね」
「ふふっ、酷い目にあったもんね」
それにしても、この洋服店広い。
コートの置いてある場所だけで一階分使ってるんじゃないかってぐらい広い。
フードのあるなしだけではなく、モフモフだったり、ベルトで固定するタイプだったりなど。
一括りにコートって言っても種類が多すぎる。
「ルザード君、これどうかな」
「いつの間に着替えたんですか?」
「店員さんに聞いたら着させられたんだよ」
白いコートに膝上までの長いブーツ、太ももは少し露出している。
「かわいい?」
「良いと思いますよ」
「どう良いの?」
「えっと、それは」
これは俺を弄んでいるのだろうか。
なんかめっちゃニヤニヤしてるし。
「そりゃあ、かわいいですよ」
「ふーん」
「なんですか、その反応」
「まぁまぁ、ルザード君も決めちゃいなよ」
彼女に急かされてコートを決め、会計を済ませる。
「やっぱりあったかいですね」
「そうだね」
「足寒くないんですか?」
「めっちゃ寒いよ」
彼女は震えながら言う。
どうやらおしゃれと防寒は両立できないらしい。