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5、やっぱり蛮族

「おい、誰だ」


 おっと、気づかれたか。

 まぁいい。

 うるさくすると怒られそうだから静かにやろう。


「呪權、暴れろ」


 呪權と呼ばれたその禍々しい剣は相手の鎧を貫通する。


「こっちは終わったよ」

「こっちもです。攫われていた人たちは?」

「ここにいるよ、眠らされてるみたい」


 馬車の荷台に全員無事に乗っていた。

 よく見ると全員子供のようだ。

 後は集落に戻してあげるだけだな。


「ルザード君、さっき斬った人動いてるけど」

「いいんです。どうせ見えませんから」


「おい、どうなっているんだ」

「見えねぇーよ、生きてるのか?」


 斬られた2人は元気そうに動いている。


「この剣は斬った相手から生命力を奪うんですよ。今回は視力だったようです」

「魔剣なの?」

「はい、数百年前に転生者が作ったそうです」


 この世界の魔剣は大きく分けて2種類ある。

 まず、転生者が転生の時に授かった能力で作られたもの。

 世界に50本近くあるらしく、この先増える可能性もある。


 もう1つは数千年前、いわゆる神話時代から現存する剣。

 これは見つかっているのは3本だが、神話によれば全部で4本、まだすべて見つかっていない。


 これらの魔剣は大変希少価値が高く、何か特別な能力がついている。


 俺の持っている『呪權じゅごん』は、斬った相手から生命力を奪う剣だ。

 これは学生の時盗賊から奪ったものなので恐らく前者であろう。


「どうやって運ぶの?この子たち」

「どうしましょう。歩かせるわけには行かないですし、だからと言って森の中を馬車で通るわけには行かないですし」

「うーん」


 彼女は少し考えている。

 全員で10人。


「魔導列車って1人いくらだっけ?」

「15000Gですけど」

「子ども料金ないの?」

「ありますけど」


 もしかして全員列車で運ぶ気か?


「子ども料金10000G×10人で100000Gか」

「ふざけてます?」

「ふざけてないけど、じゃあルザード君が全員運ぶ?」

「くっ……わかりましたよ。金貨10枚か……」


 と言うことで100000G払って、魔導列車でこの子たちを運ぶことになった。


「ルザード君、全員目が覚めたみたい。けど……」


 話さない、まだ怯えているのか?

 言語は通じるとは思えないけど、もうちょっとうるさくなると思っていた。


 その後、無事に列車に乗り、集落の近くまで来た。


「それにしても一言も発しませんね」

「そうだね」


 2列に整列して後ろについてきている。

 ここまで教えたつもりはないんだけどな。

 そもそも言葉通じないし。


「結界に穴開けちゃうよ」

「はい、また塞げばいいので大きめに開けちゃってください」


 そこそこ硬い結界だったようで、思った以上に音が出てしまった。

 気づかれないうちに子どもたちを行かせよう。


「……っ?」

「どうしたのルザード君」

「……神経毒です、逃げてください」


 ……一体誰が?

 辺りを見回すと一番近くにいた子どもの1人が吹き矢を持っていた。


「やっぱり蛮族じゃないですか」


─────────────────────────


「んっ……?」

「大丈夫?ルザード君」

「ラヴァふぁん」


 舌がまだピリピリ痺れている。

 うまく言葉を発せない。


「ふふっ、大丈夫?」

「笑わあいでくだはい」


 ここは、地下牢獄といった所か。


「どうやら本当の蛮族だったみたいだね。

 あそこではルザード君の治療をするのも、つれて逃げるのも難しそうだったから、ひとまず従ったんだよ」

「ひょうがないです」

「とりあえずその舌じゃ話にならないから回復魔法かけるよ」


 相変わらず無詠唱で中級治癒魔法だ。

 舌だけだから初級でよかったんだけどな。


「ありがとうございます。回復してもらってから言うのも何ですが、ここに連れてこれた時点で回復して欲しかったです」

「回復する前に君が起きたんだよ」


 そうなのか?

 かなり強い麻酔毒だと思ったんだけど。

 いつの間にか耐性がついたのか?


「それにしてもまさか襲われるとはね」

「胡散臭いガイドが言ってたこと本当でしたね」


 俺達が攫ったと思われたのか、誰でも襲うつもりだったのか、まぁどっちでも良いか。


「それより凄いんだよ」

「何がですか?」

「結界の外からじゃわからなかったけど、ここの人々は魔力総量がとても大きいんだよ」

「種族は人間なんですか?」


 人間と言う種族は知能や技術が高い分、魔力、身体能力は上がりづらい。


「うん、エルフと同等くらいだったよ」

「これは何か裏がありますね」


 魔物や古代兵器の恩恵を受けている可能性がある。

 気になるので突き止めるだけ突き止めてみるか。


「よいしょ」


 彼女はコウモリになって煙突のような所から地上に出た。

 しばらくすると牢屋の外側に戻ってきて鍵を開けてくれた。


「ありがとうございます」

「あっちの方に人がたくさんいるよ」


 大きな洞窟の中で何かをやっている。

 恐らく独自の宗教か何かだろう。


「あれ見てください」

「なになに?」

「黒いかけらです。拳大ほどの大きさのかけらが10個ほど並んでいます」


 何かはわからないが間違いなくあれに向かって祈りを捧げている。


「確かに魔力を発しているね。けど……」

「どうしたんですか」

「なにか変だ、感じたことがない」


 魔物が使う魔力は邪悪、それ以外は善良と呼ばれる。

 普通魔力と言えば、この2つだけ。

 そのどちらでもないということは……


「きっと凄いやつだよ、あれは持って帰らないとだね」

「いいんですか、勝手に持っていって」

「たくさんあるからちょっとくらい持っていったってバレないさ」


 そう言って彼女はさっきの数倍の大きさのコウモリになった。

 羽を広げると人の身長くらいの大きさだ。

 原始人の頭の上を抜けて黒いかけらを鷲掴みいや、コウモリ掴みする。

 そのまま一気に上昇し結界の外へ飛んでいった。

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