表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

4、ロスウェルの観光地

 ロスウェルはこの大陸で唯一の共和国だ。

 つまり君主がいない。

 それが良いのか悪いのかは別として、普通この国家体制を築くには相当な血が流れる。

 共和国を築くには必ず戦争が起き、共和制が実現しても100年と続かないのだ。

 その困難を成し遂げたのがフェルム・ガンフォール。

 ロスウェルの英雄である。

 3体の神を召喚し、彼が本気を出せば国家の1つや2つ滅ぶと言われている。

 しかし彼は政治が全く解らなかったので、国を混乱させる前に隠居したらしい。

 ちなみに今もどこにいるかわからない。


 そんなロスウェルに行きたいのだが、俺は半永久的な出国禁止命令を受けている。

 そこでどうにか国境を通れないか方法を考えている最中だ。


「あのーラヴァさん、食べ過ぎじゃないですか」

「レストランに連れてきたのが悪いんだよ」

「作戦会議って言ったじゃないすか」


 この人は人の話を聞いているのか。


「ここは旧道が通っていて検問所もありません。今のところここが1番有力候補です」


 地図を指差して言う。


「ボロネーゼとジェノベーゼって何が違うんだろう?

まぁいいか、どっちも頼もう。すみませーん」


 ちょっと待って、普通にキレそう。


「ワインもらってくるね」


 今テーブルにあるのは、あいつが頼んだピザとあいつが頼んだドリア、あいつが頼んだティラミス……

 俺何もオーダーしてないんだけど。


「すみません、急いでタバスコ持ってきてもらっていいですか?」

「はい、かしこまりました」


 頼んだタバスコ、結構辛いやつだよな。

 全部かけよう、あいつのに。

 バカ舌だからわかんないだろ。


「少ないから瓶でもらって来た!」


 ワインはグラスで飲むものだろ!


「うん、このピザも美味しい」


 本気マジでバカ舌でした……


「ラヴァさん」

「何?」

「もう連れてきません」

「えぇ!なんでさ!」

「さぁ、早く食べて店出ましょう」


 もう追加オーダーできないよう会計を始める。

 結局俺はワインしか飲まなかった。


「私はもっと食べれたよ」

「食べるのも良いですけど話を聞いてほしかったです」


 彼女は少し反省したのだろうか、シュンとしている。


「悪かったよ」

「続きは宿で話しましょう」


 レストランから宿に戻る。

 王都の宿は何処も高かったので、どうせならいい所にしようということで王都中心部の風呂付きの宿にした。


「もう一度言います。普通の道は使えないので、旧道を使います」

「さすがに森の中を通っていくわけには行かないもんね」

「はい、旧道が最善かと」


 デュバルは長い間デュバル家が治めている王国だ。

 何度か遷都しているので遺跡や旧道などが多く残っている。

 またそれらをアジトや通り道とした犯罪組織も多くある。

 なのでは鉢合わせする可能性はあるが旧道を通るのが最善だ。


「巧遅拙速です、明日早朝に出ましょう」

「うん、出発準備しちゃおうか」


─────────────────────────


「起きてください、ラヴァさん」


 この人が着てるの寝巻き(パジャマ)と言うより下着だろ。


「んんっ、ルザード君おはよう」

「おはようございます。寒くないんですか?」

「うん、時間大丈夫?」

「まだ大丈夫です。ゆっくり準備してください」


 まだ早朝なので露店の準備をしている人しかいない。

 もう街灯は消えているが、日は出てないのでこの時間帯が1番暗い。


「ごめん、待たせたね」

「行きますか」


 昨日予約していた馬車に乗って、旧道近くの遺跡まで来た。


「少し明るくなってきたね」

「そうですね、安全に国境を越えれそうです」


 国境を越える頃にはもう山の陰から陽が昇ってきていた。

 デュバルでは王に背いた大罪人として扱われるのだろう。

 幸いデュバルとロスウェルは同盟関係にないので、あっちでは犯罪者として扱われることはない。

 途中放浪商人の馬車に乗せてもらい、泊まれそうな村まで送ってもらった。


「すごい賑わってるね」

「郊外の村がなんでこんなに」


 ここはロスウェルの首都から120里ほど離れている小さな集落だ。

 さっきの商人の話では民宿しかないような村だと聞いていたけど……小洒落た宿が建っている。


「あのーこの旅館って?」

「1カ月ほど前に開業しました。原始人ブームで宿が足りなくてですね」


 原始人ブーム?なんだそりゃ


「原始人ブームっていうのは?」

「それはですね……」


 原始人ブームとは、村民の話を要約するとどうやらこの村から更に山を越えて行った山の麓に文明に触れていない集落があるらしい。

 洞窟で基礎魔法や石の道具を使って狩猟生活をしているそうだ。

 内政の安定とともに庶民の娯楽が欲しくなったタイミングでの原始人発見だったんだろうな。

 どうやら首都でも原始人グルメの店ができるほど人気らしい。


「ラヴァさんどうします?」

「せっかくだから見たいよね」


 やっぱりそう言うと思った。

 実は俺も少し興味があったので行くだけ行ってみることにした。

 驚いたのは例の集落までの移動手段、魔導列車で3里程の道をたった10分ほどで駆け抜けた。

 デュバルでも王都の一部にしかなかったものがこんな郊外に。

 到着したのは小さなホームのような建物。

 その少し先に大きな穴が空いていて半円状に結界が張ってある。

 その穴の底で原始人が暮らしているようだ。

 結界が張ってあるのでお互いに干渉はできないということか。

 現地では胡散臭い翻訳ガイドが、原始人が何を話しているのか教えてくれた。

 そのガイドが言うにはとても凶暴な戦闘民族らしい。


「ルザード君、あれ」

「何ですか?」


 彼女が指を差した先には、黒い服の男たち結界に穴を開けている。

 黙って見ていると、その男たちは原始人の子供をさらって麻袋に入れた。

 闇商人関連だろうか?


「止めるよ」

「待ってください一般人が多すぎます。それにこれほど近いと結界を壊してしまいます」

「じゃあどうすれば」

「どうせ同じ列車に乗って同じ村に着きます」

「そうだね」


 帰りの列車が来たのでそれに乗り込む。

 闇商人の下っ端も同じ列車に乗ったことを確認して監視を続ける。

 再び10分ほどかけて先程の村に帰ってくる。

 どうやら今乗っていたのが最終便だったらしく、昼間あんなにいた観光客もいなくなっている。


「早く積み込め」

「はい」


 闇商人の下っ端は、攫った子を馬車に積み込んでるな。

 どうやら1人だけじゃないらしい。

 早めに終わらせちゃうか。


「ラヴァさんはさらわれた人たちの保護を」

「そっちは任せるよ」

「もちろんです」

共和国なのに王都になっていました。首都に直しました。

すみません。このようなミスがあったら教えていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ