第8話「にぎやかな、とてもにぎやかな食卓」
週末、椿花の両親が東京に来ることになった。娘の様子を見たいという理由だったが、実は椿花の結婚を心配していたのだ。
「お父さん、お母さん、私の友達も呼んでいいかな?」
椿花は無邪気に尋ねた。両親は顔を見合わせ、にっこりと笑った。
「もちろんよ、椿花。楽しみにしているわ」
母親の言葉に、椿花は嬉しそうに頷いた。
当日、椿花の家には律、千紘、陽斗、そして蓮が集まった。彼女の両親は息子たちを迎えるかのような温かい笑顔で彼らを出迎えた。
「みなさん、ようこそ。椿花がいつもお世話になっています」
父親が丁寧に挨拶すると、男性陣は緊張した面持ちで応えた。
「いえいえ、こちらこそ椿花さんにはお世話になっています」
千紘が率先して話し、他の男性たちも頷いた。
食事が始まると、椿花の両親は次々と質問を投げかけた。
「律くんは、椿花の先輩なんですって?」
「はい、仕事面でもプライベートでも、椿花さんにはよく助けられています」
律は真面目な表情で答えた。
「陽斗くんは幼なじみなのよね?」
「はい、椿花とは小さい頃からの付き合いです。昔から面倒見のいい子でした」
陽斗は懐かしそうに笑った。
会話が進むにつれ、場の雰囲気も和やかになっていった。椿花は嬉しそうに皆の会話を聞いていたが、両親と男性陣の間で交わされる意味深な視線には気づいていなかった。
「椿花、こんなに素敵な方々に囲まれて幸せね」
母親が言うと、椿花は無邪気に答えた。
「うん! みんないい人だから。私、本当に恵まれてるんだ」
その言葉に、男性陣は思わず苦笑いを浮かべた。椿花の無自覚さは相変わらずだった。
食事が終わり、男性陣が帰り支度をしていると、椿花の父親が彼らを呼び止めた。
「みなさん、椿花のことをよろしくお願いします。あの子は少し鈍感なところがありますが……」
「「「「はい、お任せください!」」」」
男性陣は口を揃えて答えた。その真剣な表情に、父親は安心したように頷いた。
帰り際、蓮が椿花に近づいた。
「楽しい時間をありがとう、椿花さん」
「こちらこそ、来てくれてありがとう!」
椿花が笑顔で答えると、蓮は少し照れたように頬を染めた。
その日の夜、椿花の両親は娘の将来について話し合っていた。
「あの子、幸せになれそうね」
「ああ。だが、誰を選ぶのかな」
両親は笑いながら、娘の恋の行方を見守ることにした。