第7話「熱に浮かされた君を、あたたかい想いが包み込む」
花園椿花は、会社の重要なプレゼンテーションを任されていた。しかし、当日の朝、彼女は高熱を出して寝込んでしまった。
「ああ、どうしよう……? こんな大事な日に……」
椿花が呟いた瞬間、携帯電話が鳴った。画面には同僚の蒼井律の名前が表示されている。
「もしもし、蒼井さん? 私、今日……」
「椿花、大丈夫か? 声が弱いぞ」
律の声には心配が滲んでいた。
「はい……熱が出てしまって……」
「そうか。無理するな。プレゼンのことは俺たちに任せろ」
律の言葉に、椿花は驚いた。
「え? でも、私が準備したものを……」
「心配するな。お前のデスクにある資料は見つけた。俺と鷹宮で何とかする」
律の言葉に、椿花は安堵のため息をついた。
「ありがとうございます。本当に申し訳ありません……」
「礼を言うのはまだ早いぞ。結果を出してからだ」
律はそう言って電話を切った。
オフィスでは、律と千紘が椿花の資料を必死に確認していた。
「さすが椿花さんですね。こんなに詳細な資料……」
千紘が感心しながら言うと、律は無言で頷いた。
「俺たちで彼女の思いを伝えきれるかな」
「大丈夫です、先輩! 椿花さんの努力を無駄にはしません」
二人は決意を新たにし、プレゼンの準備に取り掛かった。
一方、椿花の自宅では、彼女の体調を心配した幼なじみの陽斗が看病に訪れていた。
「つばき、具合はどう?」
「陽斗くん、ありがとう。少しずつ良くなってきたよ」
陽斗は椿花の額に手を当て、熱が下がっていることを確認すると安心した様子を見せた。
「よかった。でも無理は禁物だからな。ゆっくり休んで」
「うん。ごめんね、こんなに心配かけて……」
椿花が申し訳なさそうに言うと、陽斗は優しく微笑んだ。
「何言ってるんだ。幼なじみなんだから、当たり前だろ」
その言葉に、椿花は温かい気持ちになった。
夕方、律から連絡が入った。
「プレゼン、上手くいったぞ。クライアントも満足してくれた」
「本当ですか!? よかった……ありがとうございます、蒼井さん」
椿花の声には安堵と喜びが混ざっていた。
「これはお前の功績だ。休養に専念しろ」
律はそう言って電話を切った。椿花は感激のあまり、思わず涙ぐんでしまった。
「よかったね、つばき」
陽斗が優しく椿花の背中をさすった。
この日の出来事は、椿花の周りの男性たちの絆をさらに強めることとなった。しかし、椿花本人は相変わらず、彼らが自分のために奮闘してくれたことの真意に気づいていなかった。