第6話「カメラ越しの恋模様~シャッター音と共に刻まれる想い~」
花園椿花は、休日を利用して近所の公園で写真撮影を楽しんでいた。カメラのファインダーを覗き込む彼女の横顔は、まるで一幅の絵画のように美しかった。
「あ、椿花さん! こんなところで会うなんて奇遇ですね」
声の主は、職場の後輩である鷹宮千紘だった。彼は休日にジョギングを楽しむ習慣があり、汗ばんだTシャツ姿で椿花に近づいてきた。
「千紘くん、こんにちは! 私、写真を撮りに来たんです」
椿花は無邪気な笑顔を向けながら、カメラを軽く掲げて見せた。
「へえ、写真が趣味なんですね。僕、全然知りませんでした」
「うん、昔からの趣味なの。でも、あんまり上手じゃないんだよね……」
椿花は少し恥ずかしそうに頬を染めた。その仕草に、千紘は思わず見とれてしまう。
「そんなことないと思いますよ。僕に見せてもらえませんか?」
千紘の言葉に、椿花は嬉しそうにカメラの液晶画面を向けた。そこには、公園の風景や花々の写真が映し出されていた。
「わあ、すごくきれいです! 椿花さんの感性が伝わってきますよ」
「本当? ありがとう、千紘くん」
椿花の目が輝いた。その瞬間、千紘は彼女の魅力にさらに引き込まれていくのを感じた。
その後、二人は公園を歩きながら写真を撮り続けた。椿花が熱心に被写体を探す姿に、千紘は何度も胸を打たれた。
そんな二人の様子を、少し離れた場所から見つめる人影があった。椿花の幼なじみ、椎名陽斗だ。彼は公園に椿花を誘おうと思っていたのだが、千紘と楽しそうにしている姿を目にして複雑な表情を浮かべていた。
「つばき、相変わらず可愛いな……」
陽斗はつぶやくと、二人に気づかれないよう静かに立ち去った。
その日の夕方、椿花は自宅で撮影した写真を整理していた。ふと、窓の外に目をやると、隣に住む霧島蓮が庭で何かを書いている姿が見えた。
「蓮さん、こんばんは!」
椿花は窓を開けて声をかけた。蓮は驚いたように顔を上げ、穏やかな笑みを浮かべた。
「やあ、椿花さん。今日はどんな一日でしたか?」
「写真を撮りに行ってきたんです。蓮さんも趣味があるんですよね?」
「ええ、小説を書いています」
「わあ、素敵! 私、蓮さんの小説読んでみたいな」
椿花の言葉に、蓮は少し照れたような表情を見せた。
「まだ未熟者ですよ。でも、椿花さんが読みたいと言ってくれるなら、いつか見せられるように頑張ります」
「楽しみにしてます!」
椿花は無邪気に微笑んだ。その笑顔に、蓮は思わず言葉を失った。
こうして、椿花の趣味をきっかけに、彼女を取り巻く男性たちはそれぞれの形で彼女との距離を縮めていった。しかし、椿花本人は相変わらず、自分が彼らの心を掴んでいることに気づいていなかった。