第5話「恋を語る君は、誰より輝いている……のに」
土曜の午後、椿花は友人の神楽詩音とカフェでお茶をしていた。
「つばき、最近どう? 仕事は順調?」
「うん、なんとかね。でもね、詩音……」
椿花は少し俯く。
「どうしたの?」
「私、全然モテないんだよね。みんな私のこと、同僚としか見てくれないみたい」
詩音は思わず吹き出してしまう。
「つばき、あなた本当に気づいてないの?」
「え? 何に?」
「あなたの周りの男性たち、みんなあなたのことが好きなのよ」
椿花は目を丸くする。
「えええ!? そんなわけないよ。私、人見知りだし、男性とうまく話せないし……」
詩音はため息をつく。
「だからこそよ。あなたの素直で無邪気な性格が、みんなの心を掴んでいるのよ」
「そう? でも私、全然気づかなかった……」
椿花が困惑した表情を浮かべていると、詩音が真剣な顔になる。
「つばき、実は相談があるの」
「うん、どうしたの?」
「私ね、好きな人ができたの」
「えっ! 詩音に!? すごい! 誰なの?」
椿花は突然、興奮した様子で詩音に詰め寄る。
「まあ、落ち着いて。その人とは、まだあまり話せてないんだけど……」
「そっか。どんな人なの?」
「優しくて、頼りがいがあって……でも、私のことは気づいてくれなさそうで」
椿花は真剣な表情で詩音の話を聞いている。
「詩音、その人に自分の気持ちを伝えてみたら?」
「え? でも、断られたらどうしよう……」
「大丈夫だよ。詩音はすごく素敵な人だもん。きっとその人も気づいてくれるはず」
詩音は椿花の言葉に、少し勇気をもらった気がした。
「そうね。ありがとう、つばき。あなたの言う通り、頑張ってみるわ」
「うん! 応援してるよ」
椿花は満面の笑みを浮かべる。その無邪気な笑顔に、詩音は思わずため息をつく。
「つばき、あなたは本当に……」
「本当に、何?」
「いえ、なんでもないわ。それより、あなたの話も聞かせて」
「私? 私には特に何もないよ。相変わらずモテないし……」
詩音は思わず吹き出してしまった。
「あのね、つばき。実はね……」
詩音は椿花の周りで起こっている男性たちの騒動について、少しずつ話し始めた。しかし、椿花は首を傾げるばかりで、自分がモテているという事実を全く受け入れられないでいた。
「詩音、私がモテてるなんて、絶対にありえないよ。きっと、みんな私のことを妹みたいに思ってくれてるんだと思う」
詩音は諦めたように肩をすくめる。
「まあ、いつか気づく日が来るわよ。それまでは、このままでもいいかもね」
二人は話題を変え、楽しくおしゃべりを続けた。しかし、椿花の周りで静かに進行している恋模様に、彼女はまだ気づいていなかった。