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第4話「サプライズな誕生日~祝福の中で、知らぬ間に深まる絆~」

 椿花の誕生日まであと1週間。職場の同僚たちは、密かにサプライズパーティーの準備を進めていた。


「花園さんの誕生日か……何かプレゼントを贈ろうかな」


 律が独り言を呟いているのを、千紘が耳にした。


「蒼井さん、花園先輩の誕生日パーティーの計画があるんです。よかったら一緒に……」


「ああ、そうか。参加させてもらおう」


 律は冷静を装いながらも、内心では何を贈ろうかと悩んでいた。


 一方、美容室では陽斗が椿花の髪を切りながら、さりげなく誕生日の話を振っていた。


「つばきちゃん、誕生日近いんだよね?」


「うん、でも特に何もしないよ。友達も少ないし……」


 陽斗は思わず鋏を止めてしまう。


「え? つばきちゃんに友達が少ない? 信じられないな」


「本当だよ? 私、人見知りだし、男性とも上手く話せないし……」


 陽斗は困惑しながらも、椿花の髪を丁寧に切り進める。


「そうだ、誕生日に何か予定入れてない? 俺、おいしいケーキ屋さん見つけたんだ」


「え? いいの? 君と一緒に行けるなんて、嬉しい!」


 椿花の無邪気な反応に、陽斗は思わず顔を赤らめる。


 そして誕生日前日、蓮は椿花とエレベーターで偶然出くわした。


「あ、霧島さん。おはようございます」


「おはようございます、花園さん」


 蓮は穏やかな笑みを浮かべる。


「そういえば、明日が誕生日だそうですね」


「え? 霧島さん、どうして知ってるんですか?」


「この前、花園さんがスマホで友人と話しているのを偶然耳にしてしまって」


 椿花は少し驚いた表情を見せる。


「あ、そうだったんですね。私、そんな大きな声で話しちゃったかな」


 蓮はクスリと笑う。


「いえ、そんなことはありません。ちょうど廊下ですれ違った時に聞こえてしまったので」


「そうでしたか。私ったら、気づかなかった」


 椿花は照れ笑いを浮かべる。蓮はその表情を見つめながら、静かに言葉を続けた。


「花園さんは、本当に……」


「本当に、何ですか?」


「いえ、なんでもありません。お誕生日、おめでとうございます」


 蓮はポケットから小さな包みを取り出した。


「これ、つまらないものですが」


「え? 私に? ありがとうございます!」


 椿花は嬉しそうに包みを受け取る。開けてみると、しおりが入っていた。


「わあ、綺麗! 大切に使わせていただきます」


 椿花の笑顔に、蓮は思わずため息をつく。


 誕生日当日、椿花が出社すると、オフィスは静まり返っていた。


「あれ? みんな今日はお休み?」


 そう呟いた瞬間、一斉に歓声が上がる。


「「「「サプライズだよ! お誕生日おめでとう!」」」」


 椿花は驚きのあまり、その場に立ち尽くす。


「え? えええ? みんな、私のために……?」


 律が前に出てきて、ケーキを差し出す。


「花園さん、おめでとう」


「蒼井さん……ありがとうございます」


 椿花は感動で目に涙を浮かべる。千紘が慌てて駆け寄ってくる。


「花園先輩、泣かないでください。みんな、先輩のことが大好きなんです」


「え? 私のこと……大好き?」


 椿花は首を傾げる。周りの男性社員たちは、思わず苦笑いを浮かべる。


「でもみんな、本当にありがとう」


 椿花は感動で目に涙を浮かべながら、周りを見回した。オフィス中が色とりどりの風船で飾られ、大きな「Happy Birthday」の文字が壁に掲げられている。同僚たちの温かい笑顔に囲まれ、椿花は心が温かくなるのを感じていた。


 ふと、彼女の頭に疑問が浮かぶ。


「でも、どうしてこんなに大掛かりなサプライズを……?」


 椿花は首を傾げ、少し困惑した表情を浮かべる。彼女の無邪気な反応に、周囲の同僚たちはクスリと笑う。


「だって、花園さんが大切な仲間だからに決まってるじゃないか」


 律が前に進み出て、優しく言った。


「蒼井さん……」


 椿花は律の言葉に、少し驚いた様子を見せる。


「みんな、こんなに素敵なサプライズをしてくれて、本当に嬉しいです。でも、私、特別なことなんて何もしてないのに……」


 椿花は少し戸惑いながらも、心からの笑顔を浮かべる。


「花園さんが毎日笑顔でいてくれるだけで、オフィスが明るくなるんだ」


 ある男性社員が勇気を出して言う。


「そうそう! 花園さんの一生懸命な姿に、僕たちもいつも励まされてるんです」


 別の社員も続く。


 椿花は周りの言葉に、少しずつ頬を赤らめていく。


「みんな……本当にありがとう。私、こんなに大切に思ってもらえて、幸せ者です」


 律は椿花の無邪気な反応に、思わず額に手を当てる。


「花園さん、君は本当に……」


「本当に、何ですか?」


「いや、なんでもない。さあ、ケーキを切ろう」


 律は言葉を濁しながらも、優しい笑顔を向ける。


 椿花は幸せそうな表情で頷き、ケーキに向かう。彼女の周りで起こっている男性たちの微妙な空気に、相変わらず気づいていないものの、この瞬間だけは純粋に幸せを噛みしめていた。


 パーティーは大いに盛り上がり、椿花は幸せな笑顔を見せていた。しかし、彼女の周りで起こっている男性たちの騒動に、相変わらず気づいていなかった。



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