第10話「気づきの春~桜舞う季節に、ついに芽吹く(?)恋心~」
詩音の結婚式から数ヶ月が過ぎ、春の訪れを感じさせる季節となった。椿花は相変わらず、自分の周りで起こっている恋愛模様に気づかないまま、日々を過ごしていた。
ある日、椿花は両親から届いた手紙を読んでいた。
「椿花へ。
あなたの周りには素晴らしい人たちがいるわね。でも、あなた自身の幸せも大切にしてほしいの。
実は、私たちの馴れ初めを話していなかったことに気がついたの。
私たちも、最初は友達だったのよ。でも、あるきっかけで互いの気持ちに気づいて……」
椿花は手紙を読みながら、ふと考え込んだ。
「私の周り……?」
その時、彼女の携帯電話が鳴った。画面には律の名前が表示されている。
「もしもし、蒼井さん?」
「椿花、今日の夜、時間あるか? みんなで食事をしようと思ってな」
「みんなって?」
「俺と、鷹宮、椎名、霧島だ」
椿花は不思議に思いながらも、約束を交わした。
その夜、5人は静かなレストランに集まった。
「椿花さん、実は今日は特別な日なんです」
千紘が少し緊張した様子で切り出した。
「え? 何かあったの?」
椿花が首を傾げると、陽斗が続けた。
「つばき、俺たち、もう我慢できないんだ」
「我慢? 何を?」
蓮が静かに口を開いた。
「椿花さん、私たちは皆、あなたのことが……好きなんです」
椿花は驚いて、4人の顔を見回した。
「え? えっと……私、何かしましたか?」
律がため息をつきながら、優しく椿花の手を取った。
「お前は何もしていない。ただ、お前らしくいてくれただけだ」
椿花の頭の中で、これまでの出来事が走馬灯のように駆け巡る。日々の何気ない会話、さりげない気遣い、温かな眼差し……全てが新たな意味を持ち始めた。
「私、本当に気づかなかった……」
椿花の目に涙が浮かんだ。
「ごめんなさい。みんなの気持ち、全然わかってあげられなくて……」
4人は優しく微笑んだ。
「謝ることはないよ、椿花さん」
「そうだ。俺たちは、お前のその純粋さに惹かれたんだから」
椿花は、初めて自分の心の内を見つめ直した。
「私も……みんなのこと、大切に思ってる。でも、それが恋なのか、まだよくわからなくて……」
律が静かに言った。
「焦ることはない。俺たちは、お前の答えを待つ。どんな結果でも、俺たちはお前の味方だ」
他の3人も頷いた。椿花は、温かい気持ちに包まれるのを感じた。
「ありがとう、みんな。私、よく考えてみるね。そして、きっと……私なりの答えを見つけるよ」
春の夜風が、レストランの窓を優しく撫でていった。椿花の新しい物語は、ここから始まろうとしていた。
(完)




