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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖女じゃない私の奇跡

作者: あんど もあ

2024年3月8日 日間綜合ランキング 3位

ありがとうございます!


夜になったら1位になってる…。

本当にありがとうございます!


 私はクレア。赤茶色の髪と目を持つ17歳。

 田舎の村の農家に生まれ、田舎の村で育った生粋の平民。

 だけど、平民には珍しく聖魔法が少~しだけ使える。

 「聖魔法」なんて言うと仰々しいけど、他の魔法が土や水を動かすように、精神に働きかける魔法を一まとめにしてそう名付けているんだと神父様が説明してくれた。

 私の魔法で出来るのは、本人の持ってる回復力に語りかけてナイフで切った傷を塞いだり、風邪の熱を下げたりという程度で、大怪我や重体の病気では役に立たない。でも、医者もいない田舎ではそこそこ役に立っている。

 そう、あくまでも「そこそこ」。



「それなのに、何で聖女だなんて事になるんですか~!」

 今、私は領主様の館で頭を抱えている。

蝗害(こうがい)を防いだからなぁ」

 コロンとした体型の領主様が申し訳なさそうに身を(すく)めていると、それ以上責められない。

「イナゴを空き地に誘導しただけですよぉ」

 蝗害。バッタやイナゴが大量に発生して広大な畑の農作物を食べ尽くしてしまう恐ろしい自然災害。

 この夏、イナゴが大発生したので、領主様に使用してない土地を提供してもらい、イナゴをそこに誘導して集め、寿命の尽きた秋に土地に火をかけてイナゴの死骸と卵を燃やしたのだ。


 ささやかな魔力だが、私はイナゴくらいなら操れる。でも、犬猫や馬なんかには無理。むしろエサを運ぶ下僕という認識をされてる気がする。

 更に言えば、人間なんか全然無理。魔法に目覚めた幼い頃、もちろん試してみたのだ。友人たちのおやつを(かす)め取れないものかと。

 結果、肉体的にボコボコにされ、「こーゆう事やってると、魔女として火炙りになるんだぞ!」と精神的にもボコボコにされ、二度と試していない。(子どもって容赦ないわー) 私を矯正した友人ジョセフとデイジーは、先月結婚した。めでたし。



「だからって何で王都に報告するんですかぁ」

「よそじゃ畑が全滅した所もあるそうだ。なら、『こういう方法がありますよ』って教えてあげたくて」

 全滅…。

 大発生したヤツらは、何故かいつものヤツより食欲が旺盛で、繁殖力が旺盛で、あっという間に何万匹に増える。そんなのに群がられたらあっという間に食いつくされたんだろうなぁ…。

「でも、それで何で私が聖女ってなるんです!」

「それを色々聞きたいから、王都の役人がこっちに来るそうだよ。悪いけど相手してあげて」

「私、マナーとか礼儀とか知りませんよ? 知らずに無礼な事をするかも」

「クレアなら大丈夫だよ。じゃあ、明日のお昼に来るからよろしくね」

「明日?!」




 翌日、周りを馬に乗った騎士に囲まれた三台の馬車がやって来たが、話す暇は無かった。

 一台目の馬車から降りて来た、同じお仕着せを着た三人の女性にあっという間に空き部屋に連れ込まれ、服を脱がされ複雑な作りの白い法衣を着せられた。

 見るからに高価そうな艶のある白い布地、これって聖女の衣装じゃありません? 

 着たら有無を言わさず馬車へ連れて行かれる。


 二台目の馬車から、中年の男性が降りてくる。

 身長は男性にしては低く私くらいで、にこやかな表情だけど、何この怖いオーラ。何たらかんたら局の何とか長官のジャーヴィス様らしい。ごめん、一回で覚えるのは無理。

 挨拶を返そうとしたら、馬車の中に詰め込まれて馬車は出発してしまった。え? 話をしたいんでしたよね〜?



 私の困惑などお構いなしに馬車は進む。

 …気まずい。馬車の中にジャーヴィス様と二人きり。せめて、三人の綺麗なお姉さんの馬車に混ぜて欲しい。

「あの…、どこに行くんでしょう?」

「王都です」

「お…?! あのっ! 私は聖女じゃなくて」

「私にはそれは判断出来ません」

 にこやかだけとキッパリとした態度。こりゃ何を言っても無駄だな…。 

 諦めて座り直す。デイジー、私、誘拐されちゃったよぉ。




 夕方、小さな宿場町に馬車が止まった。今日はここに泊まるらしい。

 部屋に入るなり三人の女性に法衣を脱がされ、お風呂に入れられて洗われて磨かれる。お風呂を上がると、肌触りのいい肌着とワンピースが用意されていた。なぜかサイズぴったり。不思議に思ってると、色々なサイズを用意してきたらしい。まさか三台目の馬車の中身はこれ…? 同じくサイズぴったりの寝着も出てきた。

 部屋で夕飯を食べて、やっと落ち着いた。怒涛の一日だったな…。


 しかし、ずっと座ってただけなので、体力は有り余ってる。

「ちょっと夜の街の散歩に行くか…」

と、部屋のドアを開けたら外に背の高い騎士様が立ってた。監視? 監禁??

 あたふたしてる私に、彼は優しく(たず)ねてきた。

「何かご不自由がありますか?」

「いっいえ! 散歩に行こうかと思って」

「ご自由にどうぞ。護衛のため後ろに控えています」

「いや、申し訳ないので!」

 必死に抵抗しても、優しく言い負かされてしまう。さすがジャーヴィス様の部下。


 彼を従えて宿を出た…はずなのだが、全然彼に見られてる気配を感じない。実は有能な人なんじゃなかろうか。

 町は、夜の街ものどかなもの。娼館や飲み屋もあるが、道なりに地元の料理を売る小さな屋台が並んでいるのが面白い。一軒一軒覗いて、美味しそうなのは帰ってから作ってみようなんて楽しんでいたら、少し外れた一角にも数軒の屋台があるのに気付いた。

 近づこうとして、周りにハエが飛び回っているのに気付く。見ると、料理にもハエがたかっている。

 私は、ハエが停まらないように料理の上で必死に布を振っているお店の人に声をかけた。

「おばさん、すごいハエね」

「この場所はねぇ…。その分、場所代が安いんだけど」

「ねえ、私魔力持ちなんだけど、そのハエ払ってあげようか。ここの四軒分、小銀貨一枚でどう?」

 話が聞こえた他の三軒も乗り気だ。話はすぐにまとまった。


 私は目を閉じ、ハエの“波”を探す。

 私の場合、生き物によって違う“波”を見つけ、その“波”に乗せて意思を伝える事が出来る。

 やがて見つけたハエの“波”に乗せて

「去れ!」

と伝えると、ハエたちはまるで竜巻に飲み込まれたように一匹残らず空に飛んで行った。


 おばさんたちは喜んで、値切らずに約束通りの小銀貨一枚を払ってくれた。なので、サービスにハエ除けの草を教えてあげる。農家じゃ皆知ってる事なんだけどね。うちでは家畜小屋に使ってる。

 話が盛り上がってると他の客が近づいてきたので、手を振って笑顔で別れた。

 宿への帰り道、「これで何かあったらこの小銀貨で乗り合い馬車に乗って逃げられる!」と思っていたのは内緒だ。




 朝、部屋で朝食を頂いた後、また三人に法衣を着付けられる。ってか、一人で脱ぎ着出来ない服って何なの。17歳になってばんざいしてお着替えって、罰ゲームだよ…。

 またジャーヴィス様と馬車に乗る。二日目だからか、ジャーヴィス様の空気が少し穏やかになった気がする。聖女の法衣が肩が凝るのは変わらないけど。


 休憩を取りつつ馬車は順調に進み、山と畑しか見えなかった窓の外にポツポツと建物が増えて、やがて賑やかな町に入った。今夜はここに泊まるらしい。

 恒例のお着替え、お風呂、夕食の後、また部屋を出ると、ドアの横に昨日の背の高い騎士様が立っている。今日も付いて行くと言うので、昨夜寝てないのにずっと馬に乗ってて私よりお疲れでしょうと断ろうとすると、三台目の馬車で休んでたそうだ。三台目にそんな使い道が。しかし、二日続けて立ち番って、運が悪い人じゃなかろうか。

 結局断り切れず、護衛に付いてもらって宿を出た。

 

 昨日の町より大きなこの町は、夜になっても開いてるお店が多く、それを目当てに出歩く人も多い。私は人の壁に埋もれてるのに、後ろの騎士様なら視界が開けてるのかと思うとなんか悔しい。

 人の波にもみくちゃにされるという初めての体験に流されつつ右や左をキョロキョロしてたら、足の間を何かがすり抜けた。

「ひゃっ!」

と、よく見るとでっぷり肥えたネズミ。人ごみの中に出て来るなんて、どんだけ人をなめてるんだ。

 人が多いからエサになる物も多いんだろうな。

 ん? なら、困ってる人も多いんじゃないか?と思いついて、近くの飲み屋の裏口に回って店主を呼んでもらう。


「私、ネズミ退治できる魔力持ちなの。小銀貨1枚でネズミ10匹。どう?」 

 契約はすぐ成立した。店主に水を入れたバケツを用意してもらう。

 目を閉じ、ネズミの“波”を探す。見つけた“波”に

「来い!」

 と伝える。

 間もなく軒下からネズミが走ってくる気配がして、真っ黒なネズミがバケツを駆け上って水に飛び込む。そのネズミの溺れる水音が終わらないうちに、床下から壁の穴からネズミが次々と走り寄って来てバケツに飛び込む。

 10匹になったところで店主にバケツを渡し、小銀貨を受け取った。

 それを数軒で繰り返す。

 これで王都土産が買えそうだ。


 最後のお店で、小銀貨の他に塩味とソース味の串焼き肉をもらった。大喜びでいただいたけど、「両手に肉」ってわんぱくすぎる…。(※花も恥じらう17歳)

 ソース味を騎士様にあげて、塩味の肉を齧りながら(※花も…)お土産に何を買うか考えつつ宿に帰った。




 翌朝、またまた三人に法衣を着付けられて馬車に揺られる。

 更に雰囲気が柔らかくなったジャーヴィス様に

「今日、王都に着きます」

と、言われて「やっと…」とほっとするが、「いや、王都で何するの?」と不安が湧き起こる。

 今からでも逃げ出したい私の気持ちなんてお構いなしに、馬車は王都に滑り込む。なぜか、聖女が居ることになるはずの大聖堂をスルーしてさらに先へ。どこに向かってんの? まさか、この先にあるあの巨大な建物?! い~~や~~~!!

 心の叫びを無視して、やはり馬車はお城に入って行った。


 馬車止めでガクブルしながら馬車を降りると、ジャーヴィス様にエスコートされて、迷路のようなお城の中を右へ左へと歩かされる。

 やっと着いたシンプルなドアをノックして開けると、私でも絵姿を見たことがあるお方が待っていた。

 無理!!

 足がガクガクして中に入れない。


 ジャーヴィス様が、床に足が貼り付いた私の腰に手を回し、彼の前のソファーへ導いて座らせる。

「こ、こ、国王陛下におかれましては」

「よい、楽にしてくれ」

 気持ちはありがたいが無理~!!

「それでジャーヴィス、どうだった」

「はい、間違いなく聖女かと」

 私の事ですか!?

「ここに来る間にも、民のためにハエを払い、ネズミを駆除しておりました」

 お金もらってやったんですよ? 護衛のお兄さん、ちゃんと伝えてます?

 勝手に納得したお二人にまた廊下を連れまわされる。


 次に着いたのは、扉の前に衛兵が立つ物々しい部屋だった。

 扉を開けても、厚いカーテンが閉められていて部屋の中は暗い。お二人はさらに奥の部屋に招く。

 そこは寝室だった。

 

 ベッドに横たわっているのは、まだ幼さの残る少年。その年齢の王子の名が浮かぶが口には出さない。

 少年は熱があるらしく浅い呼吸を繰り返し、その子の顔や寝着から覗く肌には大小さまざまな水疱が出来て、皮膚は赤紫に(ただ)れ、潰れた水疱の膿の匂いが部屋を包んでいる。

 掻きむしった瘡蓋(かさぶた)の痕が、この苦しみが昨日今日の事では無いと伝える。

 ちらっとジャーヴィス様を見る。自ら私を迎えに来た人。本当は不眠不休で駆けてでも一刻も早く私をこの子の元に引きずって来たかったんだろうに。


「聖女よ。この子を救ってくれないか」

 …ああ、分かった。

 この人たちは聖女を探してたんじゃない。探してたのは、この子を助けてくれる人。

 探して探して、領主様の報告書まで目を通して…。


「…私は、聖女ではありません。それでも良ければ」

 なら、私は自分に出来るだけの事はやろうと、少年の赤紫の手を取って目をつぶる。

 “波”……、“波”はどこ……?

 必死に少年の“波”を探すが、一向に見つからない。この子は生きているのに、全く“波”の気配が無い。まるで少年が何かに包み込まれているようだ。

 これは…病気じゃない。背中に冷水を浴びせられたような悪寒に襲われる。

 

 これはきっと…多分……呪いだ。


 ドッドッと心臓の音が痛い。恐怖で振り払いたくなる少年の手を、覚悟して両手で包む。

 必死に呪いの“波”を探す。

 彼の全身を包んでいる呪いの、僅かでいい隙間を、(ほころ)びを探す。

 この子がこれだけ抵抗しているんだ。どこかが綻んでいるはず。

 見つけた小さな綻びから呪いの“波”を見つけ、命令を伝えた私は、その場にへたりこんでしまった。


 頭の上でお二人の喜ぶ声がするのを聞きながら、私は意識を失った。




 すっきりと目が覚めたのは、知らないベッドの中だった。

 キョトキョトと周りを見回してると、「お目覚めですか!」と部屋にいた女性が駆け寄ってきた。

「すぐにジャーヴィス様と陛下にお知らせします」

という彼女に、「陛下はやめて~~~」と頼み込む。

 陛下の前で寝てられる心臓は無いわ…。


 すぐに来たのはお医者様だった。白い髭の安心できるおじいちゃんという感じの先生。

 先生は手際よく診察し、「異常無し」と言ってくれた。はい、私も三日間の緊張の糸が切れただけだと思います。

 先生がカーテンを開けると朝日が差し込んできた。私ってば普通に夜に寝てただけではないでしょうか。


「ところで…」

枕元の椅子に座り、先生が聞いてくる。

「後学のために、今回の病気について教えてくれないか」

 いくら調べてもあの症状の病気は見つからなかったらしい。でしょうね…。

 チョイチョイと顔を近づけさせて、小さな声で「呪いです」と伝えると、先生は頭を抱えてしまった。

「何故その可能性を気付かなかったんだ…」

「ええ? そんなベテランなのに『自分の知らない病気があるはずだ』って思える方が凄いですよ!」

 驚いた顔をした先生は

「君は、本当に聖女なのかもしれないな」

と、優しく言った。

「いい様に解釈しすぎです! 村に行けば、『何でもかんでも自分が正しい』って根拠のない自信にあふれてる頑固オヤジがいっぱいいるんですよ。先生の爪の垢をお土産に持って帰りたいくらいです!」

 先生は笑うけど、逆らえない若輩者(ハナタレ)は大変なんですから〜!


 そこにジャーヴィス様が入ってきた。女性が診察されてるので、隣の部屋で待っていたそうだ。

「元気なようで良かった」

「御心配おかけしました!」

 先生からも異常無しと伝えてもらい、先生は帰って行った。


 ジャーヴィス様にも、呪いだったと伝える。

「そうか…。君が聖女で良かった」

「あ、聖女じゃないんで、呪いは解けていません」

「はあ!?」

「私には無理です!」

 イナゴもハエもネズミも、私は右に行くのを左に変える事は出来ても、消すことは出来ない。

「じゃ…じゃあ、呪いは…?」

「呪った本人に返しました」

 返せただけでも私には奇跡だ。

「誰に…?」

「私には分かりません」

 分かりたくも無いですー! 呪いには「帰れ!」って命令しただけですー!

 ジャーヴィス様はこれからまた一波乱ありそうですが、私はもうお役御免にしてください。


「…そうだな。君は知らない方がいい。そして、『聖女候補を連れてきたが聖女ではなかった』とした方がいいな。誰が呪いを返したかを知られるのは危険だ」

 うんうんと頷く私。





 朝食を食べ終わる頃、ジャーヴィス様がやってきた。

「今回の報酬だ…とは言うわけにはいかないから、蝗害を防いだ褒賞と、これからも蝗害に協力してもらう契約金、という事に」

と、ビロードの巾着袋を手渡した。中を見ると、金貨がたくさん入ってる。

「…金貨と銀貨は村の市場で使えません…」

「そうだった。…弱ったな。小銀貨と銅貨に替えたら、君の体重と同じくらいになるぞ」

「運べません~!」


 なら、物にしようという事になった。

 あの三人のお姉さんに王都を案内してもらって、欲しい物を好きなだけお城の支払いで買っていい、と。それは楽しそうだ。


 早速やってきた私服の三人と街に出る。

 部屋を出る時、扉の横に騎士様がいない事にちょっと寂しさを感じる。もう聖女じゃないから仕方ないか。

 アクセサリー店、化粧品店、食器店、薬屋さん服屋さんにお菓子屋さん、奇麗なお姉さんたちに見立ててもらって次々と買っては城に届けてもらう。幸せ過ぎる~!


 王都で人気のカフェで一休み。ケーキが芸術的に可愛い。

「王都って安くていい物があるのがいいですね」

「そうそう、王都は物価が高いって言われてるけど安い物も多いのよ」

「クレアさんは王都に住む気は無いの?」

「う~ん、考えたこと無いですね」

「向こうで決まった人とかは?」

「全然。親も、三つ下の弟に嫁が来るまでに決めればいいって感じで」

 女子が集まればコイバナになる…とは言え、なんか探りを入れられているような? 

 ちょっと感じた違和感も、次の布地屋さんで吹き飛んだ。こんなに沢山の種類の布地があるなんて、田舎じゃあり得ない!

「これがスカートで、これでカーテン、これをベッドカバーに、いやクッション? あと母さんのとデイジーのと…。リボンもレースも、何で色違いがこんなに!? ああっ全部欲しい!」

「お店ごと買い取っても大丈夫ですよ~」

「物欲に負けるから誘惑しないで~!」

 城に戻ってきた時には、興奮しすぎでクタクタだった。


 

 

 翌日、村に帰る馬車が用意されたと三人のお姉さんが迎えに来てくれた。

 やはり扉の横に誰もいない事を寂しく思いつつ、馬車へ向かう。

 私はワンピースを着てお忍びのお嬢様風。

 四人が話しながら歩いていても、誰も気に留めない。


 行きとは違って目立たぬ地味な馬車に着く。昨日買った物は、別の馬車で運んでくれてるそうだ。

 帰りは、侍女に扮した女性騎士と、御者に扮した騎士二人が同行してくれる。帰りの道のりは楽しそう。

 人目に付かないよう、ジャーヴィス様も陛下も見送りには来ない。三人も黙って手を振る。


 静かに馬車が走り出す。さようなら、王都。

 デイジー、私、聖女じゃなかったよ!





  

 御者の一人が本気で私を口説こうと紛れ込んだ背の高い騎士である事を、まだ私は知らなかった。



もちろんジャーヴィス様も陛下も騎士の気持ちを知っていて、彼がクレアを王都に連れ戻すだろうとクレアが村に帰るのを引き留めませんでした。

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