量子力学を応用して作られたポータルゲート ~それ、本当に移動しただけですか?~
とある科学者がテレポーテーション装置を発明。
騒然となった。
「ご覧ください、これがわが社が開発したポータルゲートです」
世界中から押し寄せたマスコミの前で装置が披露される。
装置に備え付けられた人が通れるくらいの大きさの輪。同じものが二つ。一つは青く、一つは赤く縁どられている。
装置を向かい合うように設置。
その間をパテーションで仕切る。
輪の中にはもう一つの輪から覗く壁の向こう側の光景が映し出されていた。
マスコミはこれを見てマジックかトリックかと疑った。
しかし、科学者がポータルゲートをくぐって見ると、なんと反対側のポータルゲートから姿を現したのだ。
これにはさすがの取材陣も驚きを隠せず、是非とも試させて欲しいとの声が上がる。
科学者は喜んで彼らに装置を試してもらった。
次々と輪をくぐってポータルゲートを移動する記者たち。
しかし、科学者は移動し終えた彼らに何かを耳打ちして、すぐに舞台から降りるように強要する。
彼の不自然な態度に疑問を覚えた記者の何人かは、ゲートを通り抜けた後に振り返って、輪の中をのぞいてしまった。
そして、数日以内に振り返った記者全員が自殺してしまったのである。
いったい何が起こったのか。
警察が捜査を開始しようとした時、科学者も遺書を残して自殺してしまう。
遺書にはこう記されていた。
『絶対に振り返るな。あの装置は破壊しなければならない』
政府はポータルゲートを押収。
なにが起こったのかを確かめることにした。
万全の対策を施して、隔離された施設で実験が行われる。
起動したポータルゲートを政府が雇用した『奴隷』がくぐる。
奴隷がゲートをくぐった後、アナウンスで振り返って輪の中を覗くように指示が下った。
言われた通り、奴隷はゲートの中を覗いて何が見えたかを報告する。
「ううん……変だなぁ
この装置はなんなんだ?
通り抜けたと思ったら急に鏡になったりして。
不思議だ」
奴隷の言葉に観測者たちは顔を見合わせる。
「実験は中止だ、直ちにゲートの電源を落とせ」
「了解しました」
ゲートの電源が落とされる。
すると、奴隷の姿もたちまち消滅してしまった。
「これは……」
実験結果に言葉を失う観測者たち。
果たして彼はゲートの向こうに何を見たのか。
そもそも、ゲートから出て来た彼は何者だったのか。
装置は永久に封印されることが決まった。