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8/8

妹の彼氏がかっこいいのは置いといて、彼女で後輩な奈帆は最高です

 奈帆に好きと言われてからしばらくたった。


「で、どうしてダブルデートみたいになってしまったんだ」


「ダブルデートっていうより、中学の学園祭に来ただけだよー」


 でも、付き合ってる組が二つできるんだけど……。


 これで千葉の大きな遊園地に行ったりするとなればハードルが高すぎてびびっていたところなので、中学の学園祭といういい意味で落ち着く行き先で本当によかった。


 まあそれで一応誰と来ているか言うと、紅葉香と涼成、奈帆と僕だ。


 右出と同じ日に、紅葉香は涼成に告白したらしい。


 二人で示し合わせて同じ日にしたみたいだ。仲良しすぎな。誰だよ仲悪いって噂流したの。


 まあそういうことで、たまたま僕たちみんなが同じ中学出身だったと言うこともあり、中学の学園祭にやってきたわけだ。


 そういえばテニスの試合結果について話してなかったので話すと、涼成と僕のペアも奈帆と紅葉香のペアも、どっちも三回戦負け。


 強豪でもなんでもないけどちょっとは頑張りました感がすごい結果である。


 でも、そんな結果の中にも、色々な出来事が反映されてるなあと思ったりする。


「で、まずどこ行くの? 恋菜ちゃんの出てる劇見に行く? どうせ流斗シスコンだから行きたくてうずうずしてるだろうし」


「先輩は、シスコンなんですか?」


「私はそう言う判定だよ」


「じゃあ私もそう言う判定下そうかなあ」


 いや、紅葉香のいいなりになりすぎでしょ。なんでそんな信頼してるの?


 でも見に行きたくてうずうずしそうなのはほんとだ。


 妹の集大成を見たい兄は別にシスコンでもなんでもなく普通の兄だと思う。


 ボールが来たらラケットで打ち返したくなるテニス部員と同じくらいの普通さのはずだ。


 というわけでみんな優しいので、恋菜の劇に最初に行くことにしてくれた。


 さて、恋菜はなんの役なんだ……?


 と入り口でもらったパンフレットを開くと、


「お姫様の役じゃんかよ!」


「すごい。かわいいじゃん恋菜」


「だな」


 紅葉香だけでなく、恋菜と軽く面識のある涼成まで感心している。


 一体、どんな演技が見れるんだろう楽しみだな!


 


 と席に座った数十分後。


「あ、あ、ああ、うお」


「先輩、大丈夫? 劇の中の世界と現実世界区別できてます?」


「あ、いや、できる。気合いを入れてやってみよう」


「これはー、大丈夫じゃなさそう」


 暗い中、横で奈帆が残念な兄を発見してしまったようである。


 いやでもさ、劇の中とはいえ、王子様役の人に、お姫様抱っこされてキスもされてたらびびるでしょ。


「うらやましいなら、私と先輩でやりましょうよ。それとも、妹さんとやりたかった……?」


「いや、恋菜とは毎日平和に暮らしていたい人生だった……」


「はい、ぜひそうしてください」


 奈帆に話をパンポンと片付けられ、舞台上ではお姫様と王子様の結婚式が盛大に行われていた。


 ああ、これは劇の中のことだ。


 と、言い聞かせる必要が果たしてあるのかどうか。


 というのも恋菜が産まれた時から兄をやっている僕ならわかるのだけど。


 多分あの王子様役の人のこと、恋菜、本当に好きなんだよな。


 「高身長イケメン」に該当しているし。


 


 劇が終わった後、お姫様の格好をしたままの恋菜がやってきた。


「めっちゃ来てきてくれてありがとうございます!」


「いや、すごいお姫様になってたな」


 僕が言うと、


「まーね、ほんとに付き合ってるから、そんなやりたくないとも思わずにできちゃったよ」


 やっぱり付き合ってるのかよ。


 はいお幸せに。お兄ちゃんは悲しくなんてない。


 と心の中で色々と思っていると、


「あ、もしかして、恋菜のお兄さんすか?」


 王子様が話かけてきた。


 くそ。普通にかっこいいな。


「はじめまして」


「あ、こんにちはっす。ていうか恋菜が私のお兄ちゃんめっちゃかっこいいんだよって言ってたんですけど、思ってたより平凡っすね」


 平凡で悪かったですねえ。


 僕が笑って流そうとしたら、


「今、お兄ちゃんのことかっこよくないって?」


「いや、そ、それはちがうで、す。とてもかっこいいじゃないすかほら」


 まじですか……恋菜に睨まれた瞬間意見変えちゃったよ。


 恋菜強くね?


 妹がいつの間にか強くなっていた事実に困惑しつつも、僕たちは、恋菜と弱い王子様と別れた。




 前で楽しそうに二人で歩く紅葉香と涼成の後ろを歩いていると、奈帆がこちらを見つめていた。


「ちょっとつかれてる?」


「ううん、大丈夫。少し足がつってるだけ」


「……先輩、平凡って言われたこと気にして落ちこんでる……?」


「……」


「それは、あの人にとって、平凡に見えただけ」


 そう奈帆は、たくさんの人がいる廊下で、言葉を発した。僕に向けて。


「何回だって言いたいです。私にとっては、先輩は一番、好きな、人なので」


 そう言うと、奈帆は歩くスピードを上げて、紅葉香と涼成に追いつきに行った。


 そうか。


 なんだか懐かしい心地もする言葉が届いた。


 僕は奈帆を追いかける。


 奈帆に、一番好きだと、伝えるために。

最後までお読みいただき本当にありがとうございます。もしよろしければ、評価などをしていただけたら幸いです。


これまでに、誤字報告してくださった方、評価、ブックマークしてくださった方ありがとうございます。

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