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可愛くなったかもしれない後輩

 でも、ま、今までのことだけで、紅葉香と右出が涼成のことが好きとは全然言えないよな。


 急いで考えを進めすぎた感があるなあ。


 と思っていたんだけど。


「紅葉香と右出が仲悪いって噂なの?」


「そうらしいな」


 そうだとしたら、その原因なんじゃないかと思う涼成が真剣に言う。


「その情報はどこ由来?」


「女子の間の噂」


「なるほど、具体的にどういう噂が流れてるの?」


「いや、詳しくはわからん。ただ、言い争い的なのをしてるらしい……?」


 うーん。よくわかんないけど、やはり二人とも涼成が好きなのでは?


 それだったらやはり良くないなあ。


 だってさ、恋のライバルではあるけど、もうすぐそこに迫った大会では協力しないといけないわけだな。それは大変だ。


 いやでも、それ以前の問題として、好きな人が同じってだけで噂が流れるレベルで仲悪くなるもんなの……?


 噂の発端は小さくて、話が広がるうちに事がでかくなるやつな気がする。


 とにかく僕は、できたら紅葉香と右出にも気持ちよく大会を迎えてほしいと思った。


 


 そんなことを考えつつ、あっという間に放課後、そして部活の時間が過ぎた。


 今日の放課後はテニスコートは硬式テニス部が使うので、室内トレーニングと即席コートでのミニラリー。


 女子と場所を入れ替わる形でやったので、女子の方々の様子があまりわからなかった。だから紅葉香と右出の様子はチェックできなかった。


 下校時刻になって、僕は学校の坂を降りた川沿いの道で、バス停の方向に向かう涼成と別れた。


 すると、後ろから、一人の女の子がこちらへと早歩きで近づいてくるところだった。


「おお、右出、お疲れ」


「お疲れさまです」


 紅葉香とは一緒じゃないのか、やはり仲悪いのか。とか考えたけど、確か今日の下校報告届の提出当番が紅葉香だった気がする。


 なら一緒じゃないのと仲悪いかどうかは関係ないな。


「そういえば、川内先輩。最近調子はどうですか?」


「あ、調子って、テニスの?」


「そーです」


 どうだろう。恋菜にも話した通り、悪くないし、息はあっている。


 だから調子はいいな。


「うん、そこそこいい感じ、という答えで」


「それはよかったです」


「右出はどうなの?」


「まあ、そこそこまあまあほどほどですね」


「そうか」


「でも少し悩みもあります」

 

 悩み。こんな頼りない先輩に話せる内容なら聞きたいが。


 まあでも深く訊くのはやめよう。


 と思っていたら、右出は口を開いて、そして川辺から飛び立ったカルガモを見ながら、


「私、紅葉香先輩と、同じ人が好きなのかもしれません」


「え、それほんと? 紅葉香の好きな人高身長イケメンって言ってたけど」


 驚いてつい紅葉香の情報まで発してしまった。


「……そうですね、確証はないけど、同じな気がするんです、やっぱり。私が好きな人は背が高くてかっこいい人ですから」


 そうか……。いやモテんな涼成。


 まあ……どうするかだよな。


 ほんとに紅葉香と右出の関係が悪いなら問題だけど、そうでないなら、僕は行方を見守るだけだ。


 今のところ関係が悪いという確固たる証拠はないし、決めつけはしたくないのが僕の気持ちだ。


 だから、僕は、


「ま、そういうのも青春ってことでいいんじゃない?」


 どこかのおばちゃん先生みたいなことを言った。


「まあ、ですよね」


 右出が少し笑って、僕は右出に焦点を当てた。


 右出、少し、可愛くなった……? 

 

 のかな。もちろんもともと可愛いということは強調。


 やはり好きな人ができると、気合いが入るのはみんなそうなのだろうか。



お読みいただきありがとうございます。次は右出奈帆視点です。

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