そういや身近に高身長イケメンがいた
恋菜は中学校へと向かい、僕と紅葉香は、ラケットを肩にかけて高校へと急ぐ。
僕たちの高校のテニスコートは四面。
ソフトテニス部と硬式テニス部で、使える曜日や時間帯を分けている。
今日の朝はソフトテニス部が使える時間帯というわけだ。
で、さらにそこの中で男子と女子二面ずつに分けて練習をする。
そんなわけで、いつも僕は紅葉香の練習している姿が見えるし、紅葉香だってこっちのことがよく見えるわけだ。
テニスコートの横のロッカーで、紅葉香と別れる。
僕は初めからジャージの下にテニスウェアを着ているので、ロッカーによる必要がない。
というわけでまっすぐにテニスコートに入り、そこからふとロッカーの方を振り返ると、紅葉香はまだロッカーに入っておらず、そのかわり誰かと喋っていた。
ん? そのしゃべってる人、高身長でイケメンじゃん。
誰だと言いたいところだが、とてもよく知っている人だ。
知ってるも何も、僕のペアの人、片野涼成だもんな。
そっか、涼成身近すぎて忘れてたけど、高身長イケメンだわ。
紅葉香ともよく話す関係のはずだ。
そっか、紅葉香の好きな人って、涼成か。
八割方そうな気がしてきた。
なるほど、
「涼成ねえ……」
「そうだな、俺だなここにいるのは」
気づいたら、紅葉香との会話を終了して隣に来ていた。移動が素早い。
まあ移動が素早いのはフットワークのいい証拠なので相方としては喜ばしいなあ。
「おっす、やるぞ二人とも」
と、ここで先輩二人が来た。
準備運動を済ませたのち、先輩二人と、ゲーム形式の練習。
もちろん、本気で点数を取りに行く、というよりは色々な戦法や打ち方等を試しながらやる練習だ。
しかし、それでも先輩との実力差を感じるなあ。
一年後にあれだけうまくなっているだろうか。
なんて少し不安になっていたら、なんか視線を感じた。
見てみれば、後輩がこちらを見ていた。
後輩の名前は、右出奈帆。
ソフトテニスの実力は高いらしく、先輩にあたる紅葉香とペアを組んでいる。
で、右出がなんでこっちを見てるのかってことなんだよな。
まさか。
右出も涼成のことが好きなのか?
いや、まあその可能性はあるなたしかに。
どう見てもモテるもんな涼成。
それから時々、女子のコートの方を見てみたら、やはり高頻度で右出はこちらを見ていた。
なるほど、つまり、やっぱり涼成が好きなのか?