妹の自慢していいですか?
夕暮れ。マンションの自分の部屋の前に帰ってきた。
今日は疲れがやばい。
僕の所属しているソフトテニス部は、基本的にはゆるめだ。強豪校でもない。
しかし、そんなソフトテニス部でも、流石に大会直前となると、練習を頑張る。
けど、普段そこまで頑張ってない人が頑張るとすごい疲れるんだよな。
いや言ってて情けないけどそうなんだよね。
「ただいまーあ」
語尾が完全によろけているただいまとともにドアを開けると、妹が登場した。
「お兄ちゃんおかえり、お母さんとお父さん遅いからご飯食べるよ。もうすぐできるから」
「ああ……まじでありがとう。片付けは僕やるな」
ああ、疲れて帰ってきたら優しい妹がいる。もうこの時点で圧倒的に幸せだと思う。
僕はご飯の前にシャワーを浴びてしまおうと、風呂場へと急いだ。
その後、妹と二人で夕飯。
テレビをつけなくても、何もそこになくても、妹の会話は続くときは続く。
今日は苦なく続く日になりそうだ。
「恋菜は、もうすぐ学園祭か」
「うん」
妹――恋菜の通う中学の学園祭は、あと一週間と少し。準備で忙しい頃だろう。
それでも、中学の最終下校時刻は僕の通う高校の最終下校時刻よりは早いので、恋菜はご飯を作って待っててくれたのだ。
うわあ、なんて優しいんだ。
僕は感動して恋菜を抱きしめたい気持ちだが、それをやったらキモがられるから、せめて、ここで改めて恋菜が素晴らしい妹だということを強調しておくことにする。
「お兄ちゃん来るの?」
「あ、暇だし行こうかな。大会終わってすぐくらいだし」
「やった~うれしいな。私のクラス劇やるから見に来て」
「おお、行く行く。何の役やってるの?」
「見てのお楽しみで~」
「まじかよ」
何の役なんだ? まあ、何の役だっていい。どうせ何やっても恋菜はかわいいんだ! はい、シスコンさを発揮しました。
「ていうか、お兄ちゃんの大会の方が近いじゃん。勝てそう?」
「どうだろうなあ。まあ、ペアとの息はあってきてるし実力もついては来てるとは思うけど」
ソフトテニスの試合は、ダブルスが基本だ。
僕のペアは後程でてくる。
「いいじゃん。とにかく頑張れ~、あ、紅葉香ちゃんも出るよね?」
「出るよ」
紅葉香は、僕の幼馴染だ。妹の年上幼馴染でもある。
紅葉香は女子のソフトテニス部に所属していて、紅葉香も同じ日に大会があるのだ。
「おおー、どっちも応援してるねー。学園祭準備で行けないけど」
「ありがと」
僕は笑って、妹が作った自慢の(僕が自慢してもしょうがないけどな)生姜焼きを口に入れた。いやマジでおいしいし、なんという最高の夕食の時間だろうか。
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