64. 呪いの言葉
今日は2話更新します。
一緒に研究所から出てきたレオポルド様の後ろを、私は数歩距離をとって歩いた。
尊敬していた師の醜い心を目の当たりにして、悲しい気持ちもあった。
でもそれよりも最後の言葉がずっと耳にこびりついて離れない。
『闇魔法は本来呪うために編み出された魔法です。貴方だってそうでしょう!?』
いろんなことがあって忘れていた。
先生の言葉で、自分が醜い嫉妬で呪いをかけた存在なんだと思い知らされた。
レオポルド様が気遣わしげな顔をこちらに向けた時、三人のご令嬢がレオポルド様と私の間に入ってきた。
「レオポルド殿下、ごきげんよう。先日はありがとうございました」
先頭の令嬢がレオポルド様に声をかけると、三人揃って可愛らしく礼をした。
一番後ろの令嬢が、視線はレオポルド様に向けたまま後退る。
私の側まで来て、口元がレオポルド様に見えないように扇子で顔を半分隠した。
「エルガー殿下とバートランド殿下の次は、レオポルド殿下を狙うおつもり? 呪いの女のくせに、恥知らず」
顔から火が出そうだった。
レオポルド様を狙ってると思われた……?
強ち間違いとも言えないことが、更に私の心を揺さぶった。
身の程知らずもいいところだわ。
遠くの方から慌てた護衛騎士たちが走ってくるのが見えた。
きっと一瞬で攫われた私を探してくれていたんだ。
レオポルド様の呪いはもう解けた。
依頼された魔道具の開発ももう全て終わっている。
更に呪いをかけた犯人さえ捕まったのだ。
私がレオポルド様のお側にいる理由はもうない。
「レオポルド殿下。ご依頼されたお仕事は全て終わりましたので、わたくしはお役御免ですわね。では屋敷に戻らせていただきますわ」
スカートを摘んで礼をして、その場を後にする。
「え、グリーゼル……?」
レオポルド様の声が聞こえたが、ご令嬢たちに引き止められたのか、追ってはこなかった。
私は振り返ることなく、護衛騎士たちとその場を後にした。