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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
10章 秋になりました。
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075 さあ楽しませよう。

今日は、本番。いっぱい練習したし、準備もした。

きっと大丈夫だよ。がんばろうね。


いつもありがとう。

「待ってぇ」自分の声で起きた朝。頭では納得してたけど心は違っていたらしい。弱いなあって思う。

 色々と理由を考えてみたけれど分からなかった。町は、どちらも働かないとダメだけど、海は厳しい自然を力合わせて乗り越えて来たから、もっと厳しい。「みんなのためになるアピール」があって、初めて周りに認められるって感じらしい。

 ウチだと誰かが何とかしてくれるのを待ってますって人ばっかり。そのくせ決めちゃうと「決められたから仕方なくやってる」とか言い出して、サボる理由にしてる。・・もうっダメダメ、考えすぎだって。

 8月1日。月の日は、お店日和(びより)の薄曇り。ずっと準備してきたの。僕達は何かになれたよっていう発表会みたいなもの。いつも通りで良いんだけど、本番だと思うと緊張する。あとたぶんアレが、やらかすかなと。

 売り方は練習した。売り物は反応を見てかなり調整はした。遊びの屋台というのは珍しいはず。楽しいや便利な屋台もある。イベントもやる。盛りだくさん・・・大丈夫出来る。


 昨日と同じ早朝。最初は食べてからの予定だったんだけど、乗り物で()わないようにと睡眠時間が欲しいということで起きてすぐハラペコで出発する。

 顔洗ったり髪とかしたり身繕(みづくろ)いは車でしてね。参加が多いし行商はもうしないから馬車である必要も無い。大型の車で一気に運ぶの。家みたいな大きさなんだけど、ちょっと長めの程度に偽装(ぎそう)する。質量的に変だけど気にしな〜い。

 酔いやすいって人は寝てもらってる。目をつぶっているだけでもかなり違うはず。あまり揺れないけど、速いことで何かあるといけないから念のため。今日はギリギリの人数なので、ダウンされるとお店を減らさないといけなくなるの。

 すごく大きいんだけど、10台になっちゃった。量が多くて、あとゲームとか大きいのあるし、ステージ車なんてのもある。いちいち設置たいへんだし、簡易にはしたくない。終わったら早く帰りたいもある。そう、お泊まりしないの、日帰り。そのために道は全部高規格にしたよ。

 町の最初の頃のお買い物隊は何日もかかっていた。獣や盗賊対策に武装したりね。いちイベントを計画した時も数日掛かるって感じで小旅行が楽しみだったんだけど、移動時間はもったいないっていうか、肉は生だし、野菜や卵もくさっちゃうよって。

 アノ国までの近道を作って、かなり上手くなったから少しずつ道を作っていたの。それでも2日短くするくらいだなあって思ってた。

 そしたらね。車が作れるようになった。じゃあ、もっと速く安全にって、お買い物する街のすぐ近くまで道を作って結界で閉じた。

 お買い物隊はボートで速さに慣れてるから、車の習熟と馬の虚像(きょぞう)化の道具を使えるように練習していたの。何度か近くの街まで行って大丈夫だってことで、東へのお買い物隊は自信たっぷり?で行ったかな。

 お仕事感の謎が分かっちゃたので、近くのお買い物は全部日帰りにしたし、これからの遠くのお買い物の日程は半分より少なくしてる。海に残ったお買い物隊の人達が他の人に、何でか、はたかれていたねえ。


 今日は自由参加。遊びのために参加している人もいる。毎日働く人が働きすぎなので、休みを作っただけだし、働くのは自由とも言えるかなあ。

 海の人魚さん達には「甘い!」って怒られたけど。

 生活に困ってないし、僕がダラダラしたいのに他の人にダメなんて言えないよ。

 当然、働かないとお金が入らないから斡旋あっせんはするし、楽しんでもらおうとは思うよ。いつまでも無料ただのものばかりじゃないっていうのも、そろそろ気がつかないかなあ。

 今は休憩中。普通は一気に行っちゃう距離なんだけど、ハラペコは(つら)いのと、みんなの様子を調査して明日からの予定を考えるのもあるし、着いてバーンと始めたいなあって。

 移動中はヒマだから、普通の朝ご飯をどおぞ。

 様子を見ると大丈夫そう。まあでも、これ以上の早起きはイヤだってことだから朝を途中で取るのは一緒だな。スピードを上げる方でさらに時間の節約できると良いな。やっぱり移動時間って、もったいないって思う。


 こっからはすぐにウチの勢力圏が終わって着く。それにしてもずいぶん早くなった。僕らの地域は山あり谷あり森ありで道は悪いし、遠回りするから時間というか、日数が掛かっていた。馬車を改良して、ちょっと速くなったけど、お買い物遅れでヤキモキしたことがあって、ショートカットの道を作ったの。ホントはね。アノ国だけだったんだけどね。道を作るついでに結界域を設定しているから、実質の勢力圏みたいになって、ちょっとした国くらいある。目を付けられても嫌だし、隠れ里で良いからね。


 道の終わりから出るとすぐに街になる。ちょうど朝の時間になった。借りている広場を一気に祭りに変えるよ。

 ばーっと散らばって位置を確認。それから荷物を出していく。組み立てたままの大きいのをドンドンと設置。(ほろ)を張って、柱を立てて、旗飾りをばっと広げる。見て回ると、ステージ車のサイドを上げているところだった。

 うんうん良いねえ。照明や音響は大事だし、設置の手間がないのが楽ちん。

 告知はしてもらってたけど、集まりを良くするために、子供達が走り回ってるところ。花火をポンポンって間を開けて打ち上げもする。


 あ〜。見かけたアサガオちゃんにココとココとあっちは撤収(てっしゅう)にしてねする。何か文句言っているんだけど、いや無理でしょ。計算出来る人いないじゃない。結局5店もあって、まあお片付けした。自分都合じゃなければ仕事したことになると思ってるらしい・・ではないなワザとか。嬉々(きき)として片付けもしないで、どっか行っちゃたし、やっぱりやらかしたなあって。こう言うの勇者関係でよくあったことなので想定・説明されているんだけどねぇ。

 告知効果と子供達の呼び込み効果で、開始と同時にわあ〜っと人が来る。品物の良さは、行商で何度か来ているし、パチモンが出てるくらいだから、よく知られているの。本物の方が断然良いし、しかも安いから人気は当たり前だよね。

 今までの食べ物屋台って、味付けが単純なものしか無いから、ソースの焼ける匂いにまず引き寄せられるし、カラフルだし、何か変わってるしで、あれもこれもになってる。甘味が初めてって人は多いと思う。なのに種類が多くて、ええ〜!だよねえ。

 並んでる人に一度に言ってもらって、注文を書いてお店の人にハイハイって渡す。注文のやり取りって時間が掛かるし、忙しいと聞き間違いとか起きちゃうもの。ちゃんと金額も書いてある、これ。今日の秘密兵器はカミ。材料あるし、試作のつもりで作ったもの。みんな忙しかったしね。


 計算は足し算だけにしてあるの。計算が怪しい人が多いからね。例えば、20のを買ってくれて、100もらうでしょ。買ってもらったのを20って宣言して、50を手に乗せて70って言って、さらに10を乗せるごとに80、90、100って言って渡すの。これでお互い確認して間違いやトラブルは無し。

 注文のお手伝いをしながら見てると、春にやった釣り系のゲームにも新しいのがあるし、夏に登場したゲームもある。甘味のいくつかは、ミニゲームで増えるのも一緒。最初は遠巻きにしているんだけど、誰かが始めると、ぐるっと野次馬が付いて、その中からゲームを試して見るという流れになっている。


 突然、ババ〜ンってステージから、破裂音があって「こんにちは〜!」っていう声が響く。ステージにキラキラした服の可愛い娘がいっぱいで手を振っているのを見て、人が吸い寄せられている。この間に補充をするの。ステージが終わるとお昼タイムになるしね。習慣が無いとは言え、昼はお腹が空く時間だもの。

 本格ステージは夏に初めてやっただけだから、僕達にとっても特別なもの。駆け付けて見たいのをグッとこらえて、耳だけにしとく。まずは1曲ずつで盛りだくさん。新しい歌もあるし、べ〜姉のカッコイイ系って言ってた振付がすごく気になってるの。かけ声が盛り上がっちゃってるし、真っ黄色! 見たい。今日は銀やカード王も歌うし、聖女たちは、収穫を祝う踊りたくなる歌。最後にぐ〜ちゃんズが歌ってステージが終わる。


 しばらくすると、のどカラカラでお腹ペコペコがどっと来る。朝の3倍をまたお手伝いしてさばいていく。朝のオタオタしたのが無くなって、量にアワアワしてるけど大丈夫そう。

 パクパク、ゴクゴクってすると、次はお店の方に流れていく。ステージをフルメンバーにしたのはこのため。お手頃価格の応援グッズを買って、ゲームを買って、人形を見つけるとしばらく悩んで何人かが家に走って行く。王当人から、渡されると思うと買っちゃうよねえ。なので、お姉さん達やアサガオちゃんやカタバミちゃんも今日はここにいるの。大いに散財してね。お金持ちは衣装まで買えて良いなあって周りが思う。仕事の励みにしてね。

 女性の方々は財布が緩まないけど、この後あるよ。


 食欲が一段落したころステージからズズズと板が出てきて。しっかり固定する。音楽が流れて人が集まってくる。

「最初は秋の新作!」

 エルフちゃんがお出かけドレスで現れて、ステージからの道を歩いてくる。

 わあとかステキって声がする。はじっこで手を広げるポーズをすると、羽が出て空中でくるっと一回転半して戻って行く。シーンとした後、大歓声になった。

 エルフ初めて見ただろうし。

 ちょっと間を置いて、次々と登場する。男性服、子供服、昼の配達で使ったお揃いの服、色々な職業の服があって、枕を抱えて寝間着が登場する。見ている人は夜だし終わりだなって思うよね。


 音楽が変わって宝石いっぱいレースいっぱいの服が続いて、ため息が漏れる。

 そのあとは、ちょっとオシャレなドレスが続いて(かご)から花をまいて辺りを花だらけにしていく。それからステージにぞろっと勢揃いして、「「「お待ちしていま〜す」」」と声を揃えるの。

 みんなは急いで服を着替えて、お店に向かうと人の流れも付いていく。カチカチだった女性達の財布がゆるゆるになっていくよ。


 ファッションショーの間に完売の店をお酒の店にしたり、甘味に変える。食べ物は軽いものに内容を変えてみた。目敏めざとく酒を見つけた人がワラワラと来たり、別腹(べつばら)もいっぱいにしたりしている。少しずつ店が変わるので、ぐるぐる回る流れが止まらない。

 しばらくしてまたステージが始まる。歌はステキだし楽しい。ミニコントがおかしい。応援が揃ってくるのもいつものこと。買ったばかりの応援グッズが盛り上げてくれる。パーンと布片を飛ばすオモチャが楽しい。

 ステージが終わって、しばらくすると音楽が流れて「もう少しで終了」が流れると、お店にまたわあ〜と人が来てて勢いで買っていく人が出る。その場の雰囲気で買っちゃっても、良いものだから後で後悔はしなくて、自慢できるものだから大丈夫。うん。


 ほとんどの店が完売して、片付けていく。酔っ払いが覚えたばかりの歌を楽しそうに歌ったりしている。着いてすぐに居なくなっていた、おじさん達がほおを赤くして帰って来る。女性の方々の視線が冷ややか。はてな?

「うちの若い奴が団体で遊んでたぞ。金無いはずなので聞いたら、コレ売ったってよ。がははは」

 コレというのは、認証アクセのこと。希少な精霊石が付いているから、確かに高く売れるだろうけど。今は全域を結界で隠しているから、無いと辿たどり着けない。人魚さん達のことで、よく分からない考えも尊重するってなってるし、もう気にしない。そういう選択をしたってことだろう。

 予想はしてあって、たぶんを言ってあるけど、予想の下過ぎてコメントもしたくない。でもさ、一度道具設定した精霊石は転用出来ないの。綺麗だけど、それだけのものだし、持ち主の手を離れると数日で粉々になる設定をしてあるってことは何度も言ってある。買った人にコラ〜されないと良いけど。


 そのまま仕舞(しま)うのはラクで良いな。みんなでゴミ拾いして綺麗(きれい)に片付もした。出発を見送ってくれる人がいる、(うれ)しいな。明日が楽しみになったよ。

 行きは、べ〜姉で帰りは、き〜ちゃんが爆走したけど全く問題無かった。船で眠くなるのが、やっぱり分からない。

 夕食は成功を軽くお祝いして、いなくなった人達の報告もした。子供達の生徒だし、すこし沈んでいたくらいで、他の人達は呆れていた。

 明日も忙しいよ。頑張ろうね。

イベント大成功! すごく良かったんだけど、あの人達の事で沈みがち。

さよならというより、どうにかなっちゃうのをみんな分かってるから。

何回か行商に来ていた街だし、南はここだけだったから期待したんだけど、お店作りたいは無かったな。

となると、もうここには来ない。残念だけどね。

切り替えて明日。


また、え〜と火曜日によろしく。

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