069 海に行こう。その3
海の人魚さんたちは、ちゃんとお胸隠してたの。海藻だけどね。
足の人魚さんは、木の皮や草を割いたものを編んで服にしてた。
じゃあ、男の人魚はマッパじゃないのって、そうなんだけど。
気にしないであげてね。
そういうことで。
童話ではキラキラで自由で楽しいことばっかりの人魚さんが、湖と海のどっちも食べ物に困っていたり、服が粗末だったりする。おうちもきっと粗末。見られるのイヤだと思うから見ないし聞かない。
じゃあって僕は言う。ステキな町にするし、ごはんいっぱい食べられて、安全でキレイで楽しい町。お城も作るよ。だからね。ぼくのために魚を獲ってねって。
おじさん達は、僕が優しさチョッピリなのを知ってる。感情も頭で考えないとよく分からないことが多いし、僕のためにしてくれるから、してるだけってことなんだよってちゃんと言う。でもね、それが良いって言ってくれる。
欲張りだとか、夢見すぎとか、簡単にやんなとか、ギリギリを狙うな、弱えとか言う。全部悪口にしか聞こえないんだけど、それが良いなんていう。(だから俺たちが可哀相にならないんだよ、ありがとな・・心の声は僕には聞こえない)
あの国の資料から海の街をすっごく楽しみにしてたんだけど、期待外れでがっかりだった。今後良くなる期待が持てないよ、どうしよう。しょうがないから人魚さんを見つけて連れ帰って、湖で魚を養殖してもらおうって考えていたの。
でね、見つけてみたらいっぱいいた。おなかぺこりでボロボロな感じだった。人魚のお城は無かったの。
ヒレ治したら、すごく信用されちゃって人魚の町作ろうになってね。
「あの子って、全部自分のためなので感謝はいらないって言うと思うよ」その通り!
僕の希望はあれもこれも。だってここ見つかったらダメな場所だよって、王と聖女に閉じた町を考えてもらって僕はごはんをって、が昨日のこと。
ちょっとゆらゆらで気持ちよかった船の床。今日は7月27日、火の日。火ってね。ボオボオ燃えるものだけど、僕達が作れる光。昼のお日様の恵み。夜の静寂や癒やしをくれる月の光。僕達の力で、勇気で、希望が火の光ってこと。ステキ。
昨日のごはんを作った後。小麦粉をいっぱい買って、コネコネしたのをパン屋で釜を借りて、いっぱい焼いたマフィン(甘くない方)にハムに野菜とタマゴを挟んだ、この前から定番化したものに豆のスープ。給仕を人魚さん達にお任せしてモグモグ。
昨日の夜に決まったことを聞いてたので、台だけだった町の板に建物を作って見せる。いや魅せるかな。
町づくりのレシピみたいなロードマップも完成して、これからお披露目会。自由にやって!みたいに言われているけど、僕の町じゃ無いから、説明してからなの。僕がお買い物に海の街まで行く時もずっとゴロゴロって寝相が悪かった、お買い物隊達は結局ずっと寝てた、もう自由すぎぃ。朝やっと起きたのでごはん食べているところ。
みんながごはん終わったので、浜に集まってもらった。
模型の拡大イメージを出してね。村は町にするよって言う。こんな建物を建てて、そこに住んで、今までやってこなかった農業に酪農もやる。水が必要だから、ちょっと遠い河の流れを変えるよとか、お店や学校、遊ぶところもある。詳しくは言わない、僕なら飽きちゃうし後でみてね。
「キレイな町に住みたいかぁ〜! 美味しいもの食べたいかぁ! キレイになりたいかぁ!」
ぐ〜ちゃんが何度も言わせて、みんな良いって言ったよっ、なんて言う。
それから、腕輪を配布。泳ぐ人達だから、ペンダントは無くしちゃうと思って、腕輪だけにしたの。ここを結界で覆って完全に隠しちゃう。腕輪が無いと通れない。前みたいに障害物にすると通るのがめんどくさいし邪魔。使い方や機能は後で。
まず最初は「おふろっ!」湖の時より、マシ(臭くなかった)だけどね。
マップの位置にうちの町と同じのを作ってある。でも熱湯層は見つからなかった。朝早く作った大きな池から水を引いて湧かしているの。精霊石はいっぱいあるからね。石鹸やタオルもいっぱい買ってある。ほとんどの店を空っぽにしたかな。着替えもあるからね。
4列くらいにして並んでね。ヒレの人は腰におっきなタオルを巻いててね。湖の人魚さんがOKっていうので、手を掲げて、ぴゅ〜って走って行く。最初足の人は、まあ見かけ変わって無いから「アレッ」って顔してるけど、いきなりヒレになったら進めないでしょ。ヒレ慣れてないんだから、その場でピチピチ跳ねるだけになるよ。
足・ヒレの出し入れのことと、洗うのがベテラン?の人魚さん達に教えて貰って、上手く出来た人に交代しながら全員を洗う。練習はそれぞれどうぞ。洗うのは削る感じにね。お風呂から出てくる人は、肌色が違うし服が素敵で別人にしかみえないから、並んでいる人の期待が高まる。ようやく開放された湖の人魚さん達は、集会所に行って腕輪の説明をする流れ。
昨日は、お買い物出来てないし、あとはゴロゴロしてただけで何にもしてない、お買い物隊はき〜ちゃんからね。これからの説明を聞いているの。町に必要なことを教える技術官になる。
仕事感がいっぱいになるように、仕事感に拘って遅れないように細かいスケジュールにしてあるの、無理の無い所を見定めるのは得意なので、楽しめるようにギリギリに調整しておいた。ここには勇者は、いないから大丈夫出来るよっ。
「期間は2月なの。もの足りないと思うけど、ゴメンね」
にこっとすると笑顔を返してくれて良かった。き〜ちゃんがホッペヒクヒクって言ってたけど、嬉しくてだよね。うん。
集会場で腕輪の使い方を教えてもらってホエ〜と驚いたり、働かないとお酒なしって言われてヒエ〜ってなる。お互いをみて、ステキとか、かわいい、カッコイイって褒め合ったりする。ニコニコ出てきたら、ずっと向こうまで家が建っていて、ものすごくビックリ! 慌てて戻って、町の模型を確認すると、小さい黄色い所が今までの入江って言われて、またビックリする。
どの人も同じように褒め合ったり、驚いたりしている。これから大変って冷や汗をたらり。その後にニマニマするのも、みんな一緒。
地元の人魚さんに大きな海老の話をしたら、夏の間は産卵期なので獲らないようにしてるって言われた。
うわ〜って、船の生け簀の海老を海に帰すのをお願いして、たくさんある入江の1つで増やそうよって相談したよ。これもあれも増やせるねって。
あとね、こんなのとかあんなのいるって聞いたら、全部いるよって言われて、食べたこと無いって驚かれたり、気持ち悪いでしょって引かれたり。
じゃあって、獲ってくるのお願いしたの。お試しってこと。コレは背びれに毒あるから気を付けて。
網を使えばもっといっぱい取れるよってプレゼント。高速移動の潜行船だもの、すごいと思うよ。
お買い物隊の人がお願いって言う。最初予定の他の人達を連れて来て欲しいだって。お姉さん達も良いんじゃなあぃって言うので明日早めに出て連れてくることになったけど。今回のは長い期間になるから、お手紙書いてね、見た人が良いよって言ったらだからね。1人1人に同じ説明するの面倒だし、時間無いからコピーして渡しちゃう。お姉さんがチェックするっていうので、オヤツまでね。遅かったらオヤツは無し。
網を持った人魚さんは、かなり早く戻ってきたんだけど、量がすごい。見ながらやってる上にイルカ並に泳ぐの速いらしいし。これなら陸で働ける人、増やせるねって、一緒に笑った。
お昼はメン。食べたこと無いって言うのばっかりのお試し度満点。昨日初めてだったメンは、これからはよく出てくるよ。楽なので。
食堂は必要ってことで、僕達の町と同じ大きさながら3階まで座席がある。今日は、海老・貝に初めて食べるイカタコにカニ。食感が楽しいよって。他にはちょっとしか獲ってきてくれなかった不細工な魚。
毒の背びれをスパって取る。煮付けと揚げたのを作った。少ないから、お試しとか言わない。僕が食べたいの。あとカニはいっぱいあったので、茹でて、いっぱいお持ち帰りにしとくよ。湖にいくつか入れてみようかなあ。水揚げして縛って箱に入れておく。
じゃあどうぞってしても尻込みしてるねえ。僕らだけお先に〜いただきます!
う〜ん美味しいっ。
「プリプリしてて美味しいし、面白いね」「カニ、すっごくおいしい」
「揚げたのパリパリ」「どれも美味しい」「おかわりある?」
美味しいのしか作らないからって言って躊躇も無く。ワイワイと食べている、ウチのテーブルをみて、少しずつ食べ始める。食感が面白いからね。子供にはウケているようだ。
獲ってきた人魚さんに「騙されたと思って」って勧めてみた。不細工って魚。
「「「ええっ、こんなに美味しかったの!」」」
でしょ。でも、毒には気を付けてね。
食堂が重要になるよねぇ。お買い物隊は、ほとんどの人が料理を出来るらしいし人増えるし大丈夫だよね。いくらにするのは調理したの見てからね。
お昼の後は、人魚さん達のまとめ役たちで家割り、使い方とか掃除にマナーも決まってるからちゃんと伝えるの。全部借家だし、勝手に建てられないという決まりも一緒。決まりが細かくあってすごいなって思う。
ウサミミのお姉さんは、お耳で目立つので、あちこちから声が掛かってる。頼られてまんざらでもない感じ。
お昼をちょっと過ぎると、小っさいのとケモミミさんを見かけなくなる。
実は船に来てるだけ、おやつの材料が少ないし習慣が無いからセーフ。ズルくない。
お買い物隊は、お姉さん達の添削がOKになるまでお預け。文がOKになっても「字が汚い」って書き直しで。
オヤツの後は、畑で作付け。そろそろ収穫の時期で遅いんだけど、妖精さん達にお願いして、かなりズルした。自給自足が出来ないと、持ち込みで僕がイチイチ来ないといけなくなっちゃうからって、これもセーフにしてね。
夕ご飯は、一転してステーキにした。僕らでも一般的じゃ無い。最後の晩餐だしね。
盛り上げようって、ぐ〜ちゃんが司会。ソロもなかなかだし、とっても可愛くて、人魚さん達もノってくる。僕も効果で頑張った。
き〜ちゃん熱唱! 小さい身体とのギャップで驚いてる。
人魚さん達も歌う。ヘロヘロになるのはお買い物隊の人だけ。お仕事感が変な方向に行かないよう誘導してもらおうかな、歌で。
お姉さん達の歌で感動したり、2回目のぐ〜ちゃんの歌で応援が揃ったり、みんなで歌ったりして楽しかった。
明日のパンと仕込みをして船に帰る。人魚さん達は新しいお家、お姉さん達やぐ〜ちゃん達もそっち。
僕は冷たい床に丸くなって寝た。
まだ食べてない美味しい魚に囲まれた夢が楽しかった朝。
7月28日は、水の日で今日も晴れ。水はね。生きるのに大切なもの。僕達や動物や植物にとってもね。集まって川になったり、海を作る。雨でね、帰って来るの。ボウボウって燃える火を消すの。自分のためって燃やして壊して、自分まで壊さないように、全てを慈しむようにっていう願いなの。
ぼ〜っとしたまま、ふらふら食堂に行く。四角いパンを道具でスパスパ切って置いておく。量は僕の町の2倍半で文字通り山。
た〜っと畑に行って、見渡す限りがすっかり収穫待ちになってる野菜を採って、荷車(動力付き)に乗せてゴロゴロ。
早起きの人にバターを塗ってハムやチーズ、野菜を乗せて挟んで焼くをやってもらう。
一緒にいただきますして、ごちそうさまをしたら、ハムやチーズを切ると野菜を洗うをやってもらって、後はヨロシクね、交代してねって言って、トコトコ船に戻ってしゅっぱ〜つ。
まだ早い時間で河に人の気配は無い。速くなると蛇行が気になるので河を砕きながら進む。ゴリゴリって。
町に着いた。ほんのちょっとなのに帰って来て嬉しいって思っちゃった。まだ朝ごはんのじかんの7H。
「着いたぁ?」
き〜ちゃんが出てくる???「ごはん〜」なんて言ってる。
「1人でお使いなんてダメ。一緒っ」
ぎゅっと手を掴んで、ごはんごはんって引っ張っていく。ば〜んを口で言って、ただいまも。
今日の朝はシリアル。ちゃんと揃ってる。うんうん。
「タマゴ。ふわふわのっ」
き〜ちゃんのリクエストに周りが乗っかってくる。言われるまま、いっぱい作って。ごちそうさまで、行こうって引っ張っていく。ハイハイって配達。あとは時間まで船で待つだけ。
どうしてって聞く僕に「友達だから」って言う。大好きだからとも。
僕はポロポロ涙が出て、ぎゅ〜って抱きしめてくれる。
そのうちにグレーだった景色に色が付いて、僕の町って思って、またポロポロする。僕は幸せだなって。あなたが欲しかったものがあるよって思っていたよ。
力が抜けて、ぼや〜っとしている僕と次は操舵室ってキラキラしている、き〜ちゃんと待っていて、もう時間かなあで、少しずつ人が集まってくる。何となく最初のお買い物隊で見覚えがある人に無い人もいる。小鬼ちゃんまで。
多い。町づくりだから多いのは助かるよって言って出発、船は出港かな。よ〜そろ〜とか言ってみる。
行きの事を思い出して、窓は閉めておいてね、そうじゃないと眠くなるよって言う。
き〜ちゃんは眠くなるとは違うって言うけど。
海行きは、3回目に通る河が通りやすくなっていて、進みやすかったけど途中の村に人を感じて、スピードを落とさないといけなかったから、最初の時よりちょっと速いくらいだった。
隣ですごいすごいって楽しそうなき〜ちゃんが居てくれて、僕も楽しかった。
海の街に着いたときにまたピタッと停まる帆船(に見える)に驚かれるのも一緒だし、やっぱり寝てるよっというのも同じ。ちょっと待ってもらって、牛や豚、朝のタマゴって言われたことを思い出してトリさんの大量注文(買い占め?)を追加して戻ってくる。
ようやく起きた人達が降りたいみたいだったけど、ここには美味しいものや仕事感はないから、パス。
小鬼ちゃんが景色を見たいって言うので、ゆっくり進む。
この辺は入り組んでいて、すごく良い景色。
森に突っ込んでいくとき、危ない!とか、ぶつかる!って上がうるさかった。
ペンダントが無いと弾かれるし、途中恐ろしい念が身体に入ってくる、かなあって。体験してないから想像だけど。
入江に入るとぱあ〜っと視界が広がる。すっごくキレイでしょ。遠くにお城も見えるし。さっきの街が霞んじゃうよね。見える家のほとんどは空き家だけどね。
形から入るのは良いかなと完成形で作ってあるの。
船から降りてくる人達が、すっごくガッカリしているのは、人魚の楽園を想像してたからだろう。僕達が来たときにいっぱいの人魚さんをみて「パラダイス!」って思ったのを期待してたんだろうなあって。
歩いている人達はキレイだけど、ブツブツ言いながらだし、ちょっと気持ち悪いかも。
でも、これは大事なの。歩く意識が大事って分かったから、お昼までは町中を歩いてってしてある。街の設備とか畑や牧場の位置の把握をする。車のためなの。
湖の人魚さん達にやってもらったことの一段上の町の把握まで。これが出来ると寝てても送ってくれるからね。よっぱらいの人を見て、大事って思った。
これから自分の町だもの、ちゃんと覚えて、好きになって欲しいもあるよ。
来るときに、き〜ちゃんと車のデザインの相談してた。
海の町らしく、寒い冬でも暖かいの、可愛いのでとか色々。
ポコポコっと作って、順番に試乗してもらう。リミットは5U。
問題無く動かしていくのを見て、うへ〜って驚いてる。
この人達は、たぶんヒレの人達だからだけど、足の人達はどうかなあ。湖の人魚さん達は全員出来ていたよね。荒れた路は無いから、ちゃんと意識して歩いてるはず・・。うん、大丈夫って思う。
どうしても出来なくって、べ〜姉に頭に焼き込んでもらったらしいのが「お前とはデキが違うってよ」って笑われてる。歩き始めの人魚さんとの違いは、みんな知ってるから、ただの冗談のはず。かな。
歩くのが楽しくって、道具にも乗れるってすごく楽しそうだ。この後、ボートは〜、作らないけど漁船は作る。
いっぱいお仕事しようね。はあと。
強力な協力をもらったので、町づくりをもう一段上に。
ぼくに食材を! が早々に出来そうでうれしいな。
ここもぼくの家族になってくれるとすっごく嬉しいんだけど、どうかなあ。
また、会おうねえ。




