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空気(ぼく)たちの町においで  作者: うえぽん
5章 美味しいのできました。
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036 こども先生。

ぬかに釘、暖簾に腕押し

ぬかが分からないなら、味噌に変えてみそって

ああなるほど、座布団1枚っ。


今日もありがとう。

 この町の学校で一番生徒を受け持っているのが、こども達。最下で一番多かった「名前を書きましょう」クラスが無事なくなったので、それらが加わって多くなった。

 このクラスは「一桁の計算をがんばりましょう」で、足す・引く・掛ける・割るの一桁(割るは、二桁を一桁で割る)でしかない。元々は、計算で指が足りなくて困っているのをうっかり指を貸した・・・それを可哀相(かわいそう)に思った子が丁寧(ていねい)に教えてるのをおじさんが見て(まか)せた(丸投げした)のがきっかけ。おじさんやこども達はその日1日だけと思っていたら、大人気クラスとして定着したという悲しい話。


「ねえ、このクラスに何日も居るアレって何」

 さすがに優しく出来なくなったこども達がおじさんに聞いている。お困り。

 もっともだと思う。よく我慢(がまん)したなあ。先生始めで、急に発生した勇者の称号を取るために出した勇車が出て20日経ってる。普通でも10日で勇車8日だから、はじめてのお買い物だからと思って足した2日入れても10日も遅いし、そういえば、遠くの方のお買い物隊も帰ってこない。計画が狂うんだけど。


「じゃあねえ。仕事にしよう。学校は全部ね」

 学校の時間を休憩と思っているのばっかりなのがいけない。称号持ちは、あっさり理解して抜けちゃって、上のクラスの講師を時々。ずっと差が付いて下ではこども達が最優秀生徒という状況になってるんだよね。時間が止まっている感じ。

 仕事ならヤルって事で元通り優しい先生になってくれた。ゼロが高給になるよ。

 新しく発表したのは学校は有料で下クラスが一番高く、講師はそれが授業料。上の方は元々仕事としているから、プラスになる。


 残高がマイナスはもちろん。下から、お祭り時期に聖都観察里帰りツアー。多いのは無理なので大型馬車にのれるだけ。

 祭りポスターに並んで、里帰り(有料)がすごく楽しそうに書いてある。

「懐かしいし見たいな」「いやあ、残念」「ぜひ行きたい!」「うらやましいな」という明らかに選外の人は楽しそう。祭りポスターの方は出し物が増えて外にペタペタ、楽しさを強調している。里帰りは単に遊びだから、有料は仕方ないよねえ。宿泊費とご飯代は出すから、タダみたいなもの。どっちも楽しいから不公平は無い。僕もかなり気になってるし。


 授業の一環ということで、上位クラスの人達に担当のお祭りをプレゼンしてもらった。盛り上げは大事。気分が上がるよ。最後に「聖都を見に行けなくて残念」が定型のシメ。上位の人は、聖都に店を持っていたり、差配や工事で主要な役目があった人達だから、すごく気になっていて、残念な気持ちがこもる。担当を分けつつ、全クラスにプレゼンしてもらった。説明するためによく知ろうとするし、他のグループとの交流も出来る。何より説明テクは大事。僕は苦手。

 まだ時間はたっぷりあるし、自分で考えなさいって事で。


 プレゼン授業が楽しくて、お祭りが楽しみになった。ちなみに僕はお仕事でお金もらってないというか、発注主って扱いになってる。僕に材料代や相談料払ったら全員マイナスになるし、1000人前の料理を一人で作ったり、家建てたりしてるから、バランスおかしくなる。お小遣いをちょっとだけ。こども達の方が高給。


 楽しかったあって出てきたら馬車が、ガラガラ〜って帰って来た。これ勇車のだよね。予定より10日も遅い。何やってたんだか。

 ちょうど人がいっぱい居るから、手分けして荷物下ろして、それぞれ持っていってもらおうと思ったんだけどパッと見て無しにした、そのままで。蒸留酒は無かった? 食器に酒と加工品? こんな安物が? 荷が少なすぎなんだけど。


 とりあえずということでお風呂に行かせて、今はその2階「で、10日遅れた理由」と聞くと、例によって勇車で歓迎されて宴会席で勇者が2人現れて、次の町行ったら宴会で勇者が3人現れて、このまま住まないかって誘われたから承諾して、そのままいたら10日目に、お帰りくださいって言われて帰って来たって。

 ん、じゃあ。もうその町の人だよね。そうでしょ。

 お釣り、ちょっぴりだし要らないって、全員の腕輪を回収して、おじさん達と戻ってきた。


 残されたお使い隊の人がお昼を食べに来たとき、僕は馬車を戻しに行っていた。

 食堂では、おじさんが昼から酒盛り中。元勇者一行は、お財布になる腕輪が無いから当然注文を受けてもらえず、時間〜って言われて営業が終わってしまった。

 それを見ていたおじさん達は大笑い。


「あのな。称号取れてんのに10日間ただ飯食ってる、お前達が嫌だけど待ってくれてたんだよ」

「元勇者だしな」「自前で勇者がいれば、そりゃ要らんだろう」「俺なら、勇者でも要らん」「だな」「もう、お前ら。よその町のやつだから」「ゴミ持って来やがって」「代金もちょろまかしてるし」「クズだな」

 あははははって大爆笑。


 その夕食前に広場に町の全員が集まった。

 事情は、あっという間に伝わっているから知らない人はいない。勇者は仲間を決して裏切らない。お買い物の町に着いて歓迎された宴会で称号が外れて、それを黙ってずっと、たかっていたというのは全員が分かる。

 称号というのはそういうものだし、その町の人も分かっていて様子を見ていた「善か悪か、受け入れられるものかどうか」の見定めが10日間ってことになる。


 面倒見るというのがいれば、その者に任せて様子を見ると宣言する。

 一人二人と食堂に入っていく。そして僕とおじさんだけになった。おじさん達がドサドサっとぱんぱんのバッグをおく。「これは選別だ」僕らも食堂に入って、元勇者一行が呆然としていた。


 夕食は変わりない雰囲気だった。表向きは。

 いつもと変わらないアレの仲間のはずの元勇者やもどきの笑い声が今日は特に耳に付く。

 そんな中考える。かつては日常にあった、といっても裏切られる側だけど。僕らは死活を共にした仲間のはず。かつて悪事に落ちた称号者によって、何度も世界が壊れかけた。しかし称号に触れた者で仲間を裏切った者はいない。

 称号が取れても。それが悪であっても。

 すすり泣く声があちらこちらから。


 お姉さん達が(うなづ)く。

「お酒、新しい飲み物。食べ物。開放するよ!」

 僕は精一杯、大きな声で。

 それから、とっておきの豚のお肉やいろんな料理。お酒が樽ごと置かれ、食べて呑んで大騒ぎした。

 この町に最初に来たように、思いっきり騒いで騒いで。

 明日になったら、また笑顔にって。何かにお願いして食堂のスミっこで丸くなって眠った。

お祭り機運が高まってたのに・・・

初の追放者が出てしまった。


明日は良い日でありますように。

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