031 暗殺の時間です。
生き物を扱うの。当然これはある。
自分の生死がペット以下だったから、死生観が低めとは言え、
抵抗があったら諦めるしかない。
生を慈しみ、死を受け入れる洗礼みたいなもの。
もどきはお客さんだから、楽しいところだけ。
軽め表現だけど苦手な方は、飛ばしてください。
今日もありがとう。
食堂のお姉さん達と牧場の少女風にドレスアップした女の子?が来た。「お待たせ〜」ってニコニコだ。お姉さん達は、この兄弟をいじるのが、そうとう楽しいらしい。誰々?って感じになってる。元々引きこもりだったし、性別が違うから余計ナゾだろうけど、称号持ちはすぐ分かる。まあ混乱してるようだ。
お姉さん達が、ささっとお茶の用意して、みんなでティータイム。
話が弾む。とても楽しかったらしく、色々報告してくれる。
うんうん、ぼくも嬉しい。
お茶を飲み終えて、周りもパラパラと減っていく。
「さて、秘密のミッションです」と、僕が言う。「そうね」「いよいよかぁ」「仕方ないわ」ノリが良いなあ。「「???」」ふたりは、小首をかしげてる。演技指導もされているらしい。
「これから暗殺を行ってもらいます」「いや〜ん、可愛い」「きりっ」
「似てな〜い」
ま・まあ、ここまではお約束・・・。
ふつう狩りだと、血まみれ状態になるものだけど、お姉さん達だと多少やんちゃでも、2〜3発お話すれば大人しくなる。まずバイオレンスなシーンが無いというのがすごい。ちょっと散歩程度で、僕はいたく感動し、こども達は信者化したほどの強い感銘を受けた。それが丸一日。やっと錠が取れた心の扉を何枚もぶち破ったのは納得するところ。そう命の在り方を深く感じてしまった。
これからやってもらうのは、正反対の命を刈り取ること。あの国で深く傷ついて、救って。また落とそうとしている。勝算はあるのだけど、不安でついついおどけてるってところ。
さっき休憩を終えて、皆さんが一足先に向かったのは牛舎で、大きな建物なんだけど超満員。そこから新しく建てたところに移動が始まった頃だろう。これから行くのは、小動物館。檻車の列がパレードのよう。反対側は、それより大きな動物たちだから、これに迫力が加わる感じかなあ。
「わあ〜可愛い」「カラフルねぇ」「楽しい!」
小さい動物から着想した童話のような建物は気に入ってもらえたようだ。すでに収められた、うさぎが窓から顔を出している。とても可愛いと思う。こんな風にしているのには色んな目論見があるけど、僕の罪悪感を和らげるためのものかなと思う。
うさぎ達からしてみれば、広くなっただけ。繊細な生き物だから中は草原っぽくなっている。仕切られていたり下が掘り抜けなかったりと都合の良い自然感だけど。
あそこに運んだよっていうお知らせが来たので、次の建物に向かう。
ここは、居住型のお城。豪華なお屋敷って感じかなぁ。入ると広いホールがあって、応接間っぽいところに入ると、うさぎがいっぱいの檻がある。
「この道具は小さな雷を出すの。イタイや怖いを感じないほど一瞬なの」
ビリって光が飛び散ると、うさぎはパタパタと倒れる。台のボタンをポチッと押すと檻の柵が台に吸い込まれる。残ったのはうさぎの山。
「暗殺はこうするの。見ててね」
まず手袋をつける。病気があるからね。まあウサギだけじゃないけど素手はダメ。ぐっと握って、ぎゅっと押すとモツがどっと出る。次にスパーンスパーンと頭と手足を落として、サクッてナイフを入れて、ばりっと毛皮を剥ぐ。
「はい、おわり。スヤっとしているうちにお仕事完了」「ん〜相変わらず見事ねえ」「早いわあ」
ためらいとかあると、色々考えちゃうし、味も落ちるから、さっさとモツを取るの。素早くがポイント。いっぱいあるから、さっさとやるよ。今日は、うさぎ肉で色々試そうって思ってるの。ソースや腸詰めに血を使うから、ちゃんと取っておくよ。
それから、お姉さん達が加わって、ぎゅっ、スパーンスパーン、ベリィって始める。カタバミちゃん、アサガオちゃんの出来そうなところから、分担させてみてるけど、大丈夫な様子。
見学の人が何人かいたけど、ほえ〜って驚いていた。
いろいろドキドキしていたけど、カタバミちゃんとアサガオちゃんがお城へ来た目的は達成し、戻ろうってことになった。詰め込んでも仕方ないというのは、タテマエで予想よりも上質なうさぎ肉が気になっていたのがホント。素通りしちゃった食材棟のことが先だし。扱う食材がどうなって、ここにあるかを知らせないは無理。見せて、これからやっていけるかな、だったんだけど予想以上でとっても安心した。うれしい。
左側の中型動物館や水牛館は、動物たちが落ち着いてからになるかなあ。
テクテクして、食材棟に入る。何にも無い。ちょっとの間住んでいたところが広々となっていれば、こども達なら思わず走り回るだろうけど、意識が飛んでた頃だから初めて来た場所って感じだろう。うわ〜ってなってる。ここがそのうちにいっぱいになるって言われた事もまあ信じられない。向かいの商材棟を見たら、ちょっとは実感が湧くかも知れないけどね。こんな風に三人でほわ〜っとしている間にお姉さんが別れて建物を見て回っている。僕の無茶なお願いをするための、人や配置を考えているってところ。
お姉さん達が戻ってきた。「向かいのと同じ感じに1階は完成品置き場」「乳製品は3階奥ね」「開発も3階」「人が増えるまで2階は空いてるって感じかなあ」・・・さすが、分かってるなあ。
「「「「がんばってね」」」」みんなに肩を叩かれて、えっえってなってる。
やらなきゃいけないが終われば、ホントの目的をするの。まあ料理なんだけど。
いそいそと料理室に向かう僕にぞろぞろと。そりゃお姉さん達の戻るところは、ここだし。僕の目がキラキラしていて、新メニューの予感を感じているのだろうという観察する余裕はない! 新鮮なお肉を早く調理しなければでいっぱい。
まずは、味見ってことで手早くソースを作る。煮込んでいる間に肉をスライス。直火で炙る。良い色が付いたところで、ソースに投入。軽く煮て完成。
待ち構えていた、お姉さん達と当然いるふたりに味見を頼む。
「美味し〜」「うわぁ」「みずみずしいわあ」うむうむ。一切れ味見して、中々のお肉だと思う。
「今日は、この炙ったのとシチューとハム。
少し残して、あとで腸詰めかな。教えたいだろうからみんなとね」
今日のメニューは、シンプルに肉の味を楽しもうというもの。畑では、そろそろ収穫があり、それを使ったシチューで、もちろん血を入れてコクを出してある。ハムは前にも作った煮ハムで、お姉さん達は初めてのもの。これらは商材、つまり新たな仕事。僕が作る時はいつも思惑がある。ただ楽しんでもらおうという考えは無いというのをそろそろみんな分かった方が良いよと思っていた。
こども達は、また呼ばれて鼻高々で腸詰めを作る。今日はウサギ肉が加わり、更に味が良くなっている。後日、賞賛を受けて鼻が更に高くなったのは言うまでもないかな。
お姉さん達は、僕のキランとした眼を横から見ていて、これから食材をいっぱい作らされるんだろうなあと顔を見合わせて苦笑した。使えそうなのを捕獲しようと思ったのは、一瞬。
その頃。勉強らくだなぁと、よく聞いていない勇者もどき達がびくっとしていた。
食堂の聖女さまが(身に降りかかったことにより)中心となって人材計画会議をこっそりと行う。といってもクジを作っただけで、抽選を夕食の後のイベントとしてやった。希望が曖昧な人員が多く、お祭り好きと相まってかなり盛り上がった。振り分け場所に一喜一憂してるようだけど、楽なところは無いし、きっと大好きに洗脳される。というのは冗談。面白いのは深いところにあって、それを見るときっと大好きになるのは確信。
頑張るとお祭りが楽しいよ。密かに「ガンバ」って応援した。
僕が口だけ番長だって思っている人たぶん多い。そう見えるようにしてるし。
精肉や調理、仕入れや配分とかの指導って僕がしてるの。おじさん達は僕のこと師匠っていってるでしょ。




