030 カタバミちゃんとアサガオちゃん。
ぼくはとっても浮かれている。
文句を言いながらも1000人分の食事を新メニューで作ってしまうくらいには。
頭数で言えば、最大はお城で圧倒的。思わずヨダレが出てしまうほど。
今日もありがとう。
王たちや聖女さまのお話を聞いてたけど、さっぱり分からなかった影が動く。
「お話長〜い」「終わった?」「「「「ねえねえ、聞いて」」」」
うん、いたのは知ってる。食堂の真ん中で話していたし、待ってるの飽きちゃって、走り回ってるのもいたね。まあ、子供達がお姉さんに腸詰めを自慢したいってことだよね。ちゃんと待ってるの偉いなあ。
「これからカタバミちゃんとアサガオちゃんの作るもの。
みんなで作ったの。はい、説明」
プレゼンうまく出来るかなあ。子供たち、鼻高々だよ。良いね〜。
お姉さん達大好きだから、こうなるのは予想してたし、して欲しいと思って、丁寧に「どうやる」「誰が」「何のために」「注意するとこ」「使い方」から、食べた人達の声を聞くところまでパート分けして説明したから、忘れること無く、順番に説明する。離れていた子にそろそろって呼びに行ったりして微笑ましい。
話しが終わって。がんばったねって、こっそり拍手した。
お姉さん達は、カタバミちゃんとアサガオちゃんの肩をトンと叩く。
「「うん。分かった。ありがとう」」ふたりは、にっこりと笑う。
僕達は、いっぱい拍手する。次々と子供達が、ふたりに抱きついて、ワンワン泣き出した。
子供達は、あの国で毎日、蹴られたり殴られたりだった、酷い言葉もいっぱい。足りなくて、お腹が空いたときは偉そうな奴らから、かっぱらってみんなで笑った。それなりに毎日に楽しいことはあった。
ある日、叫び声を聞いた、縛られて的にされていた。棒で殴られていた。裸で吊されていた。叩かれて、蹴られて、笑われて、いつもいつも。それを見てるだけ、怖くて怖くて。あと一歩が踏み出せない。
いつの間にかあの城壁の外に出て、いっぱい歩いた。着いたところはキレイで、ご飯はいっぱい食べられるようになったし、学んだり、仕事をした。
他の子から「あの兄弟がいる」って聞いた。
すっかり絶望して何も見えていない。みんなが自由になって、あの時なかった勇気や楽しい気持ち、ごめんねを伝えようと、考えたことは全部やることにした。いつも誰かがいて体温を伝える。一月くらいして眼に生気が戻ったときは嬉しかった。二月して表情が出せるようになった。いっぱい話しかけるけど、まだ心に届いていないことが分かってしまう。
ノラネコが「最後の仕上げ」って、お姉さん達が外に連れて行く。残されて落ち着かなくって頼まれた腸詰めを一生懸命やった。応援するように心を込めた。
無事に帰って来たときに心が戻った気がして、僕達も頑張ったことを伝えたかった。そうして微笑んだ、あの子達に心が戻ってきたのを確信して、ようやくあの時の一歩が踏み出せたって、とてもとても嬉しかった。
こども達の気持ちは知っている。あの子達は怖さで何もしなかったことを悔いている。とても優しい。僕には無い心。この町はお世話になった人が報われないから逃げ出して、好きなように物作りをして暮らすという、ただそれだけのものだった。
あの兄弟を見つけて、そこに命を守りたいが加わった。20人から出来る限りにした時は、困った顔をしたおじさん達だったけど、嬉しさを隠していたのは気がついていた。大変だけど体を持ち出すことはできる。でも心は難しい。僕もいまだに心の一部はあの国にあるしね。
あの兄弟達の心を救うのは、心の欠けた僕では無理。それをあのこども達は精一杯の甘さで、心を引き上げてくれた、心の奥に光を見つけたとき、嬉しかった。それでも僕とお姉さん達では、引き出せるまでは足りなくて、救ったのはこども達。僕が心を持つきっかけの兄弟はもう大丈夫。
「ようやく助け出せた」とつぶやくと、お姉さんがナデナデしてくれて、き〜ちゃんとぐ〜ちゃんが手を握ってくれて「本当に良かった〜良かったよ〜」って、わ〜んと泣いてしまった。
この町に来てからの僕は何か変だ。泣いてばかりな気がする。
僕をナデナデして一人二人といなくなって、こども達が教師役のおじさんに引っ張られていくと、お姉さん達と兄弟だけになった。
「じゃあ、お仕事、ね」
ずっと、よそよそしかったけど、お互い泣きまくって少し近くなった気がする。
食堂を出て、左すぐの建物を指さして「ここが食材棟、君たちの」って言うと、ええって驚いてる。うん、何も無いからねえ。大丈夫!すぐいっぱいになるよ。
それからテクテクと歩いて行きながら、狩りのときの話を楽しそうにしてくれる。お姉さん達の話がすごくて、ひ〜ってなるけど控えめに言ってくれているんだろう。あのたくさんの動物たちを見ているから分かる。
あの広い地域に生き物がいなくなっている気がするなあ。増やして、少し返そうと思った。
お城に着いて、ほ〜って見上げている。がんばってステキなお城にしたから嬉しくなるなあ。童話の挿絵みたいにしているの、お花いっぱい。でも、あのたくさんの塔ってサイロだし、ステキな建物とかは厚みがない。ステキなのは牛舎の方。あ〜もう牛さんだけじゃないかぁ。お城に夢持ってる人にはゴメンネなんだけど、住みにくいからねえ、ぼくの好きなお城って。見栄えだけ。絵本ってそういうものでしょ。
ここは、入ってからが良いの。むか〜しのある国の一番賑やかだった頃をモチーフにしてるの。入ってすぐがアーケードになっていて左右が牛舎(羊とか豚もいるけど)で、石畳。見かけだけ、お店風。
素敵なお洋服屋さんを入ると、可愛い牛さんがいっぱい。働く人もいっぱい。忙しそう。
「ここのお城もふたりの担当なの。お仕事いっぱいあるの。でね。
1つずつ、少しずつ覚えてもらう。
まだみんな、マダマダだけど大丈夫になるとゴーレムが使えるようになる。
今は、僕が動かしてるけど、大変。早く代わって欲しいの。
みんないっしょ。お勉強中ってこと。
ゆっくりゆっくりで良いから、楽しむこと。でもね。名前付けちゃダメ。
辛くなる。お肉だから・・・ね」
じゃあって、お姉さん達が引っ張って牛のところに連れていく。
あったか〜いとか、かた〜いとか言ってる。さっそく搾乳をやらせるらしく、着替えさせたけど。リボンとかフリルは必要なの? 羽とか付いてるけど・・・。
きゃあきゃあと楽しそうで何より。でも、後ろのお姉さんが髪のリボン増やしてるけど・・・
向こうの方で、飽きてサボっているのがいる。
お姉さんが、カタバミちゃんにコソコソして、肩をぽんっと叩いて送り出すとトコトコして「ちゃんとやらなきゃ。めっ」って叱ってる。お兄さん達がぽわっとなって「は、はいっ」って仕事に戻っていく。おおすごい。
今度は、アサガオちゃんが腰を叩いてるお姉さんのところに行って、何か話してから腰に手を当ててる。何か驚いてニコッとしてから、ナデナデされている。あの国では見えなかった聖なる癒やしの力。僕やこども達が執着するほど惹きつけられたもの。
その後もお姉さん達からの勉強は続いている。今日は分かって無くても良いの。何が大事なのかが何となくでも、残れば良いこと。
その後は羊の毛刈りにお邪魔する。最初、ザクッとしそうだったのを止めさせて、同じ風にお姉さんにやられて怖かったので分かったみたい。
このおべんきょうの時間に左右にドカン、ポコと建物を建てる。
左が羊くらいの中型動物館でちょっとワイルド、羊や鹿用。その奥に水辺のある大きい水牛館で帆船乗り場風。右は小さい家がデフォルメして建てたカラフルで可愛い小動物館、兎とか。その奥にお屋敷風のお城で、屠畜館。ここにドナドナされて行くから、少しでも可愛くしたの。
ここのアーケードの奥にちゃんと休憩するところがあってね、簡単な料理なら作れるようにしてある。広々とした原っぱに牛さん達が草を食んでいるのが見える。ぽや〜んとしていると休憩時間らしく、ぞろぞろと集まってきている。最近はみんながオシャレになった。商材作成の練習で大量の服、おだやかな毎日になったというのもあるけど、どこも花いっぱいで建物は可愛いかったりカッコイイ。何より、こびり付いていた汚れをむいたら、美男美女。汚くしてると怒られて、風呂に連れて行かれ、服を変えられデコられる。
これがお約束みたいになっているの。抵抗したおじさんにドレスを着せて、リボンまみれにしたら結構似合っていて連れ回された。次の生贄を探している人がチラホラ。
これは僕が描いた町の姿の遥か上。隣町には空気な人はいなかったけど、遠くに行った人達がもうじき帰って来る。来た人が希望を感じられる町になったかな。
僕はうれしい想像をしていたよ。
ここって牧羊犬とかいないの。脱走するのとか、勝手に動くのとかいない。
もう掌握とかじゃなく信者って感じする。




