第八十一話
「ルルド様、本当にここのお庭は素敵ですわね。」
「ジャスミン姫に気に入っていただけて良かった。」
二人のその様子は明らかに親密な雰囲気であり、ラハールは眉間にしわを寄せると声を荒げた。
「ジャスミン姫。」
突然現れたラハールに、ジャスミンは目を丸くするとパッとルルドに絡めていた手を放した。
「これは、、、ラハール様。どうして、、、ここに?」
「少し、体を動かそうと思いましてね。それで、そちらはルルド殿ですね?」
ルルドは一歩前に進み出るとラハールに一礼をした。
「これはラハール殿下。私の事はルルドとお呼び下さい。」
「あぁ。それでルルド。何故ジャスミン姫と?」
「庭の散策の案内を申し付かりました。ですが、ラハール様がいるのであれば私は必要ありませんね。ジャスミン姫、ラハール様と散策してはいかがですか?」
その言葉にあからさまにジャスミンの顔は曇ったが、一瞬でにこやかな笑みに代わると頷いた。
「え、えぇ。そうですわね。ですが、、、ラハール様にもご予定があるのでは?」
明らかに、面倒だからさっさと行ってくださいという雰囲気があり、ラハールは顔を顰めた。
これが婚約者に対する答えであろうか。
ラサールはため息をつくと言った。
「あぁ、私も用事があるので失礼をする。ルルド、私の婚約者をよろしく頼む。では。アリー行くぞ。」
そう言うと、ルルドが何かを言ったのも無視をしてアマリーの腕を引っ張るとラハールはその場を後にした。
「はぁ。ルルド様、見ましたでしょう?私の婚約者様は私になど興味がないのですよ。」
ルルドは二人の去っていく背を見ながら目を細めた。
「ルルド様?」
それを訝しげにジャスミンが視線を向けると、ルルドは表情に笑みをのせて言った。
「そのようなことはありませんよ。あれは、やきもちでしょう?」
「そうかしら?」
「もちろんでございますよ。」
ジャスミンはため息をつき庭に目を移した。
ルルドはもう一度二人の去っていった方を見るのであった。
ラハールは二人から離れた場所までアマリーと共に移動すると大きく息を吐いてそのままうつむいてしまった。
「ラハール様。」
その背をアマリーは思わずさすると、ラハールはため息をまたもらして言った。
「私とジャスミン姫の婚約は五歳の時に、決められた。国同士が近かったし、諸島というのは本当に諍いが多くてな、だから、諸島の輪を深める為にも、私達の婚約は必然的だった。だが、、、。」
「さっき、どうしてジャスミン姫を連れ去らなかったのです?」
思わずアマリーがそう訪ねると、ラハールは顔をあげて言った。
「あの顔、あの身長、あの物腰、一応ながら国の王子だとはいえ、あの宰相に勝っている所が一つも見つけられない。」
情けなくそう言ったラハールにアマリーは呆れてしまった。
「何で隣国の宰相と張り合おうとしているのですか。」
「ジャスミンが毎度会う度に言うのだ!!この国の宰相は、宰相になる前から外交として度々うちの国にもジャスミンの国にも来ていたからな。その度に話をされてみろ。自信などそぎおとされていくわ!」
確かに、婚約者に毎度違う男の話をされればげんなりもするか。
アマリーはラハールを哀れに思い始めたのであった。




