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重なる手

 ルルドはその後数日間で回復し、アマリーはほっと胸を撫で下ろした。


 そして結局のところベイド・カーネリアンの件も混ざり物に関してものらりくらりと交わされてしまったのであった。


 だが、シェザンヌの一件についてだけは有耶無耶にするのが納得がいかず、アマリーは自国へと帰る出立前のジンとの最後のお茶会の席にて口を開いた。


「最後に一言、よろしいでしょうか?」


 横にいるルルドは心配げだが、ジンは楽しそうに頷いた。


「なんだ?」


「今後もこの様なことを続けるおつもりですか?」


 ジンは肩をすくめてから、静かな口調で言った。


「このようなとは?」


「それは、、、。」


 言い淀んだアマリーにジンは、小さく息をついてから言った。


「あくまでも、可能性の話だが、自国の為となるであろう手段は、国王は如何なることも取らねばならないと考えている。」


 その口調に迷いはない。


「それは、他人を傷つける事であってもでしょうか?」


 睨み付けられたジンは、表情を消すとはっきりとした口調で返した。


「甘いだけでは、国の上には立てない。」


 その言葉には重みがあり、アマリーは内心悔しくてしょうがなかった。


 シェザンヌはきっとこれまでたくさん傷ついてきたはずだ。


 体が弱いというだけで何度嫌なことばを投げ掛けられただろう。


 外で遊び回りたいのにも関わらず、きっと出来ないこともあっただろう。


 様々なことを諦めたものもあるかもしれない。


 それを思うと苦しかった。


 そんなアマリーの手にルルドはそっと自身の手を重ねた。


 手の温もりが伝わってくる。


 ルルドに視線を移すと微笑まれ、ルルドがジンに対して口を開いた。


「では、他人を傷つけなくてもすむような国同士の関わりを今後築いていきましょう。」


 ジンはその一言に目を丸くした。


 ルルドはにこりと笑みを深めると、ジンを真っ直ぐに見据えた。


「我が国も、貴国も、長い付き合いが今後も続いていくでしょう。友好国として、互いの国を支え合えるような国作りが出来れば、きっと傷ではなく笑顔が増えていくはずだ。」


「ほう。それは楽しみだ。」


「ええ。では失礼致します。」


 ルルドは立ち上がり、アマリーをエスコートしてその場を去ろうとした。


 だが、ジンがそれを呼び止める。


「ああ、そうだ。アマリー嬢に土産があるのだった。」


 するとベイドが包装された包みを持ってきてそれをアマリーに手渡した。


「これは?」


「私の思惑を次々と破ったアマリー嬢に敬意を表してささやかながらのプレゼントだよ。」


 その言葉に、アマリーが首をかしげるとベイドが小声で言った。


「これは独り言ですが、体の中に入った毒素を中和する効果のある品です。これを飲みきれば、体内に入ったものも、ほとんどは排出されるでしょう。」


 アマリーが驚いたかのように視線をジンへと向けるがジンは視線をルルドへと向けていた。


「ハンス国王にもよろしく伝えておいてくれ。」


 ルルドは頷き、アマリーを伴って部屋を出た。


 二人は馬車に乗り、道を進んでいく。


 帰りは行きのようなことにならないようにルルドも同じ馬車にいる。


 アマリーの中には釈然としない思いが胸のなかに残る。


「結局のところ、、、納得のいかないことばかりです。」


 その呟きにルルドも苦笑を浮かべて頷いた。


「国同士のやり取りはそのようなことばかりさ。だが、この国に来たかいはあったな。」


「え?」


「私は泥に埋まったたけだが、アマリーはジン国王に認められたようだ。」


 自嘲ぎみに苦笑をルルドは浮かべている。


「え?」


「アマリーにはいずれ私の妻として外交の場にも出てもらえたらと思うから、ジン国王に顔見せが出来たのは良かった。」


 その妻という言葉にアマリーは顔を赤らめると、頷いた。


 ルルドは馬車の窓からフィニア国の城を見つめながら言った。


「お互いの腹の探りあいをするのではなく、信頼で繋がっていけるように、私は国を変えていきたい。」


 アマリーはそんなルルドの固く握りしめられた手に自分の手を重ねて頷いた。


「私にも微力ながらお手伝いさせてくださいませ。」


 ルルドは笑顔で頷いた。


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