刃の向けた先
アマリーは居てもたってもいられなくなり、ジンに願い出て捜索隊のいる場所まで連れて行ってもらった。
かなり体は動くようにはなってきているが、まだ自由には動けないので、ジンに支えてもらい馬に乗りどうにか捜索隊の場所までたどり着いた。
雨は上がったとはいえ、土砂崩れの起こった危ない場所であるから、ジンがついてくることにアマリーは反対したのだが、けらけらと笑いながらそれを無視し、ジンは正体を明かさないまま捜索隊に加わったのだ。
その横にはベイド・カーネリアンの姿があり、アマリーは思わず目を見張ると、ベイドはにっこりと胡散臭い笑みを浮かべて言った。
「どうも、お初にお目りかかります、べランド・オラリーでございます。」
しらじらしくもそう言う姿に、どうやらベイド・カーネリアンという人物はもう抹消されたらしいと悟ったアマリーは、自分達がこの国に来た意味はなかったなと感じながらも、ジンがこれ以上自由にこちらの国を荒らしまわらないための牽制にはなっただろうと息をついた。
土砂崩れの場所はかなり広範囲のようで、行方不明者がルルドだけというのが奇跡だろうとべランドは言っていた。
アマリーは祈るような気持ちで捜索隊の様子を見守っていた。
どうか、どうかルルド様が無事に見つかりますようにと手に力が入ってしまう。
その時であった。
捜索隊の一部から慌ただしい声が響き、一人がこちらへと駆けてきた。
「み、見つかりました!」
その声を聴いた瞬間にアマリーは瞳を輝かせた。
良かった!生きていてくれた!
そう思った瞬間に、瞳いっぱいに涙があふれてくる。
「で、ですが!」
捜索隊の一人は顔面を蒼白にさせて、ルルドのいる方を指差した。
その時である、捜索隊の人々が一瞬にして道を作り、泥だらけのルルドが、満身創痍の格好でありながらも剣を携えて殺気を放っているのが見えた。
「ルルド様!」
アマリーはルルドが無事出ていてくれたことが嬉しくて思わずそう声を上げた。
だが、次の瞬間ジンは剣を引き抜いた。
「え?」
アマリーが首を傾げた瞬間、ルルドが全速力でこちらに向かって殺気を放ちながら走ってくると近くにあった荷台を踏み台にして飛び上がると馬にまたがるジンに向かって剣を振りかざした。
「アマリーを放せぇぇぇぇぇ!」
ジンはアマリーを支えながらそれを正面から受けると、力で押されるがどうにか押し返す。
だがすぐさまルルドは体制を整えると地面を蹴り、剣を振りかざす。
ルルドの様子にアマリーは驚き声を上げた。
「ち、違います!私は捕まっているわけではありませんわ!」
そう叫ぶが、ルルドの耳には聞こえないようであった。
ジンはアマリーをべランドの方へと投げて渡すと、ルルドの剣を受ける。
だが、次の瞬間ルルドはジンのマントを引き、ジンを馬から引きずりおろすとその首元に剣を向けた。
ジンは両手を上げて、けらけらと笑う。
「なんと、愛とは恐ろしいな。」
アマリーはべランドの腕から出ると、ルルドの腕を掴んだ。
「ルルド様!落ち着いてくださいませ。私はここにおります!」
「あ、マリー?」
「はい。アマリーは無事です。大丈夫です。ルルド様、ルルド様こそ大丈夫なのですか?」
「え?」
ルルドはアマリーが連れ去られたと思った。
土砂にのまれたが、どうにか抜け出してアマリーを助けに行かなければならないと思ったのだ。
ルルドは、アマリーを引き寄せるとぎゅっと抱きしめた。
「良かった、、、、無事で、本当に、、、よかっ、、、た、、、。」
「ルルド様?」
次の瞬間ルルドは意識を失い、アマリーに全体重が乗った。
「ルルド様!?っきゃ。」
アマリーは支えきれずにそのまま膝をついたが、すーすーと寝息を立てるルルドを見てほっと胸をなでおろした。
どうやら大きな外傷などはないようである。
そんなルルドをジンは立ち上がると歩み寄り覗き込んで見て苦笑を浮かべた。
「あれ、ほとんど意識がなかったなぁ。意識ない中婚約者を見つけて、守るために私に襲い掛かるなんて、、、なんていう男だろうかね。」
その言葉に、アマリーは白々しく言った。
「無事でよかったです。」
「はは。それで済ませる気かい?」
国王に刃を向けたのだぞとはジンは言わなかった。
なので、アマリーは笑顔で返した。
「ダルフェニア王国の代表できた私を誘拐し、宰相殿を暗殺しようとした、、、わけではないのですよね?あぁ、一捜索隊の方に聞いても分かりませんわね。」
そう言った瞬間にジンは腹を抱えて笑いだし、そして敬礼をすると言った。
「私は一捜索隊の一人なのでお答えしかねます。」
その様子に満足げにアマリーが頷くと、べランドは冷や汗をかきながら慌てた口調で言った。
「と、とにかく、一度城へと戻りましょう。」
その言葉に後押しされるように捜索隊は解散となった。




