すこーしだけ。
ハンスらに、レイスタン領で偽物らしき薬草や紅茶が入荷されていた事態を話をしたアマリーは、そのルートについて探るように命じられていた。
アマリーは父に報告をした後に急いで馬車を走らせてレイスタン領へと帰ったのだが、母親から聞いた話に顔を顰めた。
目の前に座る母は、大きくため息をつきながら紅茶を一口飲んで言った。
「私が偽物を掴まされるとは思わなかったわ。」
「お母様、それはどこから入荷されたものなのですか?」
その言葉に、母親は顔を顰めると少し思案してから言葉を述べた。
「アマリーは、うちの国との友好国であるフィニア国を知っている?」
「はい。うちとも取引をしていますし、ベイド・カーネリアンもよくフィニア国から薬草や紅茶を融通してくれていましたね。」
「そう。今回はそれが仇となったわ。良い品を仕入れてくれるものだから、信頼してしまってまかせてしまっていた。けれど、噂を聞き調べたところ、これを見て頂戴。」
母親から出された品々はレイスタン領でも売れ行きのいい薬草や紅茶であった。
だが、アマリーはそれの匂いを嗅いで顔を顰めた。
「これ、、、混ざりものですか?」
「ええ。見事に騙されたわ。混ざりものだけならまだいいけれど、こっちを見て。」
そう言って差し出された紅茶の匂いを嗅いだ瞬間、アマリーは目を丸くした。
「これは、、、。」
「販売される前に止められたから良かったものの、これは偽物の薬草が使われているわ。知識がなければ騙されるでしょうけれど、知識を持っていれば別の植物なのはすぐに分かる。」
もしこれが発売されてしまっていたら、レイスタン領は地に落ちていたかもしれない。
それに、もしこれに依存性があった場合、国そのものを傾かせることも可能である。
アマリーはぞっとした。
「何故、フィニア国が?」
「そう。それを調べなければならないのです。母はこれよりフィニア国へ向かいたいと思います。」
その言葉を聞いたアマリーは目を丸くし、そして首を横に振った。
「お母様は今は領主代理です。この領を離れることは得策ではありません。私に行かせてください。」
「ですが危険ですよ?」
「ハンス陛下からも命を受けております。それに。」
アマリーは少し顔を赤らめると言った。
「実は、ルルド様もフィニア国と友好関係を強化するためという名目で、一緒に行って下さるという事ですの。」
その言葉に、母親はにこりと笑みを深めた。
「あらあら。お熱い事ね。」
「お、お母様!からかわないでくださいませ。」
「はいはい。では母はシェザンヌちゃんと仲良しになっておきます。」
「ふふ。そうして下さいませ。」
シェザンヌはヒルデレートと離れたことでかなり心細くなっているようではあるが、エリックがそれを励ましているようでだいぶ落ち着いてきたと話を聞いている。
ヒルデレートの処分については、まだ言及されてはいない。
アマリーは息を小さくつくと、それから母と別れ、旅の準備へと入るのであった。
決して、ルルドと一緒に調査するのが、楽しみだと、これっぽっちも思っていない、いや、ちょっと、いや、すこーしだけ思っているアマリーであった。




