微笑ましい様子
突然のシェザンヌの訪問にアマリーは驚いたものの、ルルドから話を聞き、テイラーも一緒に来るという事だったので急ぎメイドらに伝えて出迎える準備をしてもらった。
シェザンヌの事は噂程度には知っていたが、まさか自分の所に遊びに来るとは思ってもみなかった。
だが、馬車から降りて笑顔で挨拶をしてくるシェザンヌに、アマリーは瞳を輝かせた。
本来ならば自分が先にあいさつをしなければならないのだが、そんな事は気にしていないのかシェザンヌは嬉しそうに言った。
「私はシェザンヌでございますわ!アマリー様!お会いしたかったのです。」
白いおもちのような肌をした、まん丸の眼をしたシェザンヌはとても可愛らしく、アマリーは一目見てシェザンヌが気に入っていた。
「ごきげんよう。シェザンヌ様。まぁ、そう言っていただけるなんて光栄でございます。」
「嬉しいですわ!アマリー様。よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ。では、どうぞ。」
アマリーはシェザンヌを、お茶会の準備をしている中庭へと案内をした。
色とりどりの花で飾られたお茶会に、シェザンヌは瞳を輝かせると言った。
「素敵ですわ!とっても可愛らしいですわね?シェザンヌは気に入りました!」
お茶会の場にはルルドと、エリックも顔をだし、シェザンヌに挨拶をしたのだが、しばらく会話が続いた後にシェザンヌはエリックを前にしてその顔をじっと見つめると言った。
「アマリー様も蝶のように美しくなられたのですから、エリック様も美しくなるのでしょうね。」
どこか不満げな声にエリックは首を傾げた。
「えっと?そう、なのでしょうか?」
シェザンヌは大きくうなずいた。
「そうなのでしょう。だってアマリー様は少し前に成長痛が来て、いっきに身長が伸び、そして美しく変わられたと聞きました。うらやましいです。」
唇を尖らせるシェザンヌに、エリックは笑みを浮かべて言った。
「はは。でも、僕はこのままでもいいと思っているんですよ?」
「え?」
「僕も姉さんも、実の所かなりダイエットには励んだんです。ですが体質なのかまったく痩せなくてですね、それならばと開き直っている節があるんですよ。」
あっけらかんと明るい口調でそう言われたシェザンヌは一瞬ぽかんと口をあけたが、口を閉じると唇をもっととがらせた。
エリックは悪い事を言ったのだろうかと不安に思うと、シェザンヌは言った。
「申し訳ありません。少し気分が悪いので下がりますわ。」
そう言って身をひるがえしたシェザンヌに慌ててヒルデレートがついていく。
アマリーは近くに控えていた執事にシェザンヌ達を部屋へと案内するように伝えた。
「しまった。僕は無神経なことを行ってしまった?」
テイラーはその言葉に苦笑を浮かべた。
「違う違う。あれはね、いじけているだけだから気にしないでください。」
「いじけてる?」
テイラーにエリックが首を傾げると、テイラーは言った。
「まあ、なんというか乙女心でして。また明日にでもちゃんと謝らせますから。私も失礼します。」
そう言うとテイラーもシェザンヌの後を追って言った。
その後ろ姿を見ながらルルドは言った。
「テイラーはシェザンヌ嬢と昔からの付き合いらしいから大丈夫だろう。」
「あら、ルルド様もシェザンヌ様とは顔見知りなのでしょう?」
「あぁ。だが、私は顔見知り程度だ。ハンス陛下からしてみればテイラーの方がシェザンヌの兄らしいとよく呟いておられた。」
その言葉にアマリーは苦笑を浮かべた。
「ふふ。そうなのですね。」
エリックも立ち去っていたシェザンヌの方を見つめながら呟いた。
「僕が失礼なことを言ったのかもしれないので、明日、謝りますね。」
「そうですね。」
弟とシェザンヌが並んで話をしているとなんとも微笑ましい様子で、アマリーはにこにこと笑みを深めた。
出来る事なら、しばらく二人が並んだ姿を楽しみたいなとそんな事を思うのであった。




