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願うだけなら自由でしょうか。

「アマリー嬢。失礼だが、あまりそういう事は言うものではない。」


 その瞳の色に、熱がどんどんと上がっていくように感じた。


 むず痒いようなこの気持ちはなんなのだろうか。


 ルルドの瞳に自分が写っているのだと言うことに、心臓が煩いくらいに鳴る。


「えっと、、。」


 動揺を隠せずに、視線を泳がせると、ルルドは確かめるように、静かにもう一度尋ねた。


「やめる気はないのだな?」


 真剣な声に、アマリーは一瞬怯んだが、これを逃せば自分に婚期は訪れないと、踏ん張って頷いた。


「ええ。ルルド様の優しさは、、その、嬉しいのですが。」


 その言葉にルルドは小さくため息をつくと立ち上がった。


「分かった。その代わり、嫌になったりやめたくなったらすぐに言う事。それを約束してくれ。」


「はい。」


「では、これで失礼する。お茶会には私も出席するので、よろしく頼む。恐らくそこで何かがあるはずだ。」


「はい。分かりました。」


「では。見送りは結構。失礼する。」


 アマリーは見送ろうとしたのだが、ルルドはスタスタと歩いて行ってしまい、馬車に乗って帰ってしまった。


 あまりの早い帰宅に話は自分を説得するものだけだったのだと、アマリーは思うと顔がまた火照ってくるのを感じた。


 自分の為にわざわざ足を運んでくれたと言う事が、嬉しくなる。


 だが、アマリーは窓ガラスに映った自分を見て一瞬で現実に引き戻される。


 丸い体に丸い顔。


 ポチャッ娘令嬢と言う言葉を思い出して気分が落ちる。


 現実を見ろと窓ガラスに映る自分に言われる。


 こんな姿の自分を誰が愛してくれると言うのだ。


 勘違いするな。


 ルルドは誰であっても、きっと心配したはずだ。自分が特別なわけではない。


 そう思うと、自然と熱が嘘のように引いていく。


「どうせ私は、、、。」


 自嘲に満ちた言葉を吐きそうになり、ルルドの先程の言葉を思い出して、それを無理やり飲み込むと笑顔を作った。


 本当は変わりたい。


 けど、何をやっても自分の体型は変わらない。


『見て、あの醜い体。』


『一体何を食べているのかしら。』


『酷いわねぇ。』


『ちゃんと教育なさっていないのかしら。』


『はは。婚約者は可愛そうだな。』


『貰い手がいるのか?』


『あれはないな。』


 デビュタントからずっと、夜会に出るたびに、お茶会に顔を出すたびに呟かれる言葉。


 それは自分を否定するものばかりで、アマリーの自尊心を削ぎ落とすには十分過ぎるほど鋭利なものであった。


 けれど、思うのだ。


 変わろうと出来るだけの努力はした。


 それでも変わらない。


 なら、受け入れるしかないのだ。


 これが、私。


 窓ガラスに映る自分に手を伸ばし、その頬に触れると小さな声で呟いた。


「こんな私を、、、誰か、、愛してくれればいいのに。」


 そんな人現れないと分かっているのに願ってしまう。


 でも、願うのだけならば自由だろう。


 だから、アマリーはため息を付きながら願った。


 どうか、どうか、と。

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