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損な役回り

 シェザンヌはハンスからアマリーの所へと会いに行ってもいいがしっかりと前触れを出してから、令嬢らしくするのだと念を押された。


 しかも、護衛と言う名目で、顔なじみのテイラーまでつけられて馬車で揺られながらシェザンヌは少しばかり不機嫌そうにしていた。


 しかも、そのイライラの原因のテイラーは通常の護衛騎士は馬で移動するはずなのに、今回は何故か一緒の馬車に乗っているのである。


「何でテイラーも一緒なのですか。」


 唇をとがらせてそう言うシェザンヌに、すまし顔でテイラーは答えた。


「俺は子守だ。」


「シェザンヌはもう子どもではありません!」


 テイラーはシェザンヌとはハンス同様幼い頃からの付き合いなので、砕けた話し方でにやりと笑った。


「ほう?そうなのか?」


「はい。シェザンヌは子どもではありません。」


「なら、シェザンヌの為に休憩に用意したチョコレート菓子もいらないか?」


 その言葉に、シェザンヌは顔をぱっと輝かせるとにこにこと笑顔で言った。


「チョコレートはシェザンヌの大好物です!食べたいです!」


「でも、子どもじゃないなら、三時のおやつはいらないか?」


 シェザンヌは首を音が鳴りそうなほどブンブンと横に振ると言った。


「シェザンヌはまだ子どもでした。なのでチョコレートはいります。」


「素直でよろしい。」


 テイラーはにこりと笑うとシェザンヌの頭を優しく撫でた。


 昔から妹のようにかわいがってきたシェザンヌだ。


 テイラーは頭を撫でながら、シェザンヌの顔色やその様子に気を配っていた。


 何故、テイラーが同じ馬車に乗っているのかと言えば、シェザンヌは元気そうに見えて本当に病弱なのである。


 昔から前日までは元気いっぱいだったのに、次の日には体調がかなり悪くなっているという事がよくあった。


 そして、シェザンヌはよく我慢をするのである。


 なので、シェザンヌの言う事をテイラーはあまり信じない。


 自分の眼で見て、シェザンヌの体調を把握しているのである。


 これはもはや昔からの癖でもあった。


「テイラー様。お嬢様も、もうお年頃ですから、そうやすやすと触るのは如何かと。」


 横に控えていたシェザンヌに幼い頃から使えているヒルデレートにそう注意されテイラーは慌てて手を仕舞った。


 ヒルデレートは細い目をより一層細めてテイラーを見つめる。


 テイラーは昔からこのヒルデレートの眼が苦手であったが、シェザンヌを大切に思っているのは分かっているので苦笑を浮かべて頷いて見せた。


 そしてテイラーは外の風景に目を移しながらもうすぐつくであろうアマリーの実家の事を思った。


 きっとルルドは怒るだろうなぁと何となく思う。


 婚約者と楽しく過ごしているのに、そこにシェザンヌが突撃してくるのだから仕方ない。


「きっと俺が怒られるんだろうなぁ。」


 テイラーは自分とは本当に損な役回りばかりだと大きくため息をついた。




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