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げんなり

 ハンスは、目の前に立ちはだかる少しばかり横幅のある、いや、ポッチャリとした、いや、貫録のある?いや、とにかく従姉妹を目の前にして大きくため息を吐いた。


 母の妹の公爵家令嬢であるシェザンヌ=ブルドアは今年十五歳ではあるが、両親の溺愛によってかなり、逞しく、育っていた。


 今年まで病弱の為領地で療養中となっていたが、さすがに年齢が結婚適齢期に入ってきていたので、婚約者を決めなければならないと話題が上がってきてはいた。


 きてはいたのだが、突然目の前に押しかけてくるほど教養なく育っているとはハンスは思っていなかった。


「シェザンヌ。私は、国王なのだがね?」


 そうハンスが呆れた声で言うと、両腕を組んで仁王立ちしたシェザンヌは言った。


「あら、お兄様は私の事が可愛くはありませんの!?」


 さも、自分は可愛いと言われるのが当たり前という風のシェザンヌにハンスは頭を抱えた。


「あのね、シェザンヌ。私は仕事がたくさんあるんだよ。」


「そうなのですか。大変ですわね。でも、シェザンヌも大変なのです。」


 ぷりぷりとして言うシェザンヌに、ハンスは天を仰ぎたくなった。


「シェザンヌは今年で十五です。そろそろ、シェザンヌも婚約者を決めなければなりません。」


「うん?そうだね。」


 だがハッキリ言おう。


 病弱で領地に引きこもっていても、シェザンヌの性格や体形などの噂は王都まで聞こえてきており、しかも王族に近しい公爵家と身分の高さも合いまってシェザンヌへの婚約の打診はほぼゼロに等しかった。


 ただ、ゼロに等しいと言うだけで、あるにはある。


 ただ、おそらくだがこれにシェザンヌは良しとは頷かないであろう。


 何故ならば。


「早くシェザンヌの王子様を決めて下さいまし!」


 シェザンヌは、根っからのイケメン好きであった。


 幼い頃より顔さえよければすり寄り、無理やりにでも自分を可愛がらせていた。


 そう。


 結婚の打診のあった極僅かな家の者は、ハッキリ言おう。


 筋骨隆々のイノシシのような男であった。


 しかも、そんな相手すらもかなりしぶしぶといった様子でありシェザンヌを可愛がる公爵家の両親は首を縦には降らなかった。


「シェザンヌの王子様はね、少しね、まだ見つかっていないんだよ。」


「ならば早く見つけて下さいまし!素敵な方にしてくださいましね!」


 悪い娘ではないのだ。


 少しばかり夢見がちで現実はあまり見えていないが、根は素直で天真爛漫で。


 本当に公爵家の令嬢かと突っ込みを入れたくはなるが、ハンスだってシェザンヌが可愛くないとは言っていない。


 だが、この忙しい中で、一番難題そうなシェザンヌの婚約者探しに力を入れられるほど、今は暇ではなかった。


 この間のアマリーとアメリアの誘拐騒動の片付けや、諸外国との外交問題、それに加えて国王の仕事は前王が溜め込んでいた分もありハンスは寝る間も惜しんで働いていた。


 アメリアとの逢瀬の時間だけはちゃっかりと取って。


「よし、シェザンヌ。ちゃんと考えておくから、少し待ちなさい。」


 ハンスがそう言うと、シェザンヌは唇を尖らせた。


「シェザンヌはもう待ちくたびれました。」


「うーん。」


 ハンスが困ったように笑うのを見て、シェザンヌは小さくため息をつくと言った。


「分かりました。待ちます。」


「良かった!」


 ハンスが一瞬明るい笑みを浮かべたのを見て、シェザンヌは譲歩したのだからと言うように胸を張って言った。


「その代り、宰相様の御心を射止めたアマリー様に会わせて下さいまし!アマリー様に私も女磨きについて学びたいのです!」


 その言葉に、ハンスはまたげんなりとした。


 





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