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愚かなる王

 ルルドはアマリーを抱き上げると、部屋を出た。


 ここはどこなのかとアマリーが勘繰っていると、どこかの城のようでありルルドの腕の中であたりをきょろきょろと見まわした。


「人が、、、いないのですね?」


 その言葉にルルドは苦笑を浮かべた。


「あぁ、今は夜中だしな。後、今は皆それどころではないだろうよ。」


「え?」


「ハンス陛下を怒らせた。その代償はでかいだろう。」


 その言葉にアマリーがきょとんとしていると、ルルドはにこりと微笑みを浮かべて言った。


「うちの陛下はね、陛下としてはとても優秀な方なのだよ。アマリー、これまでの事を簡単に言うとな、キミは船で連れ去られた。俺はその後すぐに追い、キミを救い出す機会を伺っていたんだが、その間に陛下が手を回し、そして、今、この城の中にいる。」


「あの、ここはどこなのですか?」


「ん?あぁ、ここは海にあるアレンド国所有の島でね、たまにここにお忍びで王やら王弟やらが来ることは把握していたんだが、まさかアマリーを連れ去るとは思わなかった。どうやら今回はアメリア様を気に入ったらしい王の命令で王弟が動き、こんな事態になったらしい。」


「他国の令嬢を勝手に連れ去るなんて、許せません。」


「アレンド国はね、男尊女卑の強い傾向の国でもあるからね、女性を物、所有物と考えているらしい。だが、今回は敵を見誤ったな。アレンド国はハンス陛下を敵に回した。」


 その言葉に、アメリア様に対してへたれ全開な陛下を思い出し、本当に大丈夫なのだろうかと考えているとルルドは苦笑を浮かべた。


「では見に行ってみるか?我が陛下の活躍を。」


「よろしいのですか?」


「ああ。少しだけな。」


 そう言うとルルドはすたすたと城内を歩いていき、そして、王の間へと入った。


 そこにはアレンド国国王ジェルと、ハンスが向かい合い席についているが、ハンスが笑顔なのに対してジェルの顔は蒼白になっており何が起こっているのかアマリーには分からなかった。


 唇まで白くなっているジェルに向かってハンスは言った。


「ではここに署名を。申し訳ないが、アレンド国とは今後一切の取引を行わない。」


「ま、待ってくれ。このように大事にしなくても。」


「ほう?我が婚約者を誘拐しようとし、宰相の婚約者を誘拐しても大事にはしなくていいと?」


「た、たかが女の一人や二人、良いではないか。」


「たかが?たかがと言ったか?」


「あ。」


「我が妃はアメリアが唯一。たかがではない。それは宰相も同様だ。国が違えば文化も違う。それは尊重しよう。だが、あくまでも自国内で留めてほしい。それに、貴方の国は弱肉強食なのだろう?ならば、それに我が国も習おうではないか。」


「な。」


「諸外国にも、アレンド国との貿易や取引を一切行わないようにと伝えてある。」


「そんな権限あなたにはない!」


「あぁ、俺自身にはないな。だが、私はダルフェリア王国の王だ。我が国が貴方の国のような小国とは違い、大国だという事を知らないと?なんと無知か。」


「な。」


「そしてダルフェリア王国は千年続く大国!百年そこらのアレンド国とは基盤が違う。」


 その言葉にジェルは項垂れ、そして静かな口調で言った。


「今回の件は我が愚弟による、単独の犯行。故に、愚弟を廃嫡追放の処罰とすることで、許してはいただけないであろうか。」


 弟を切り捨てにかかったジェルに、ハンスはにやりと笑みを浮かべると言った。


「ほう。そういえば、貴方にはたいそう優秀な末の弟がいたそうだな?国が亡びるのと、自分が亡びるのは、どちらを選ぶ?」


「え?あ、、、ああ。い、いや!末の弟はまだ十だぞ!」


「素晴らしい賢王となるだろう。」


 圧のかかったその言葉に、ジェルは力が抜け、そしてゆっくりと頷いた。


「王位を、、末の弟へと譲り、我は隠居する。それで、許していただけるか?」


「あぁ、そうだな。あと我が国から優秀なものを数名そちらへと派遣してやろう。男尊女卑などと言う古臭い慣習を抜け出せるように手助けをしてやる。」


「っ?!」


「文句でも?」


「い、、いや、、、ありません。」


 圧倒的にハンスの方が優位であり、柱の陰から見つめていたアマリーは驚いていた。


 だが、ルルドは至極当たり前のように言った。


「このような愚王は早々に王位を譲るのが大事だな。アマリー、もういいか?」


「え?えぇ、、、」


 アマリーは内心ハンスの堂々とした様子に驚いていた。ちゃんと、王様なのだなと改めて思った。


 そしてもう一人ジェルを見て哀れに思った。


 何故他国の令嬢を誘拐してもいいと言う馬鹿げた考えをしたのか、顔面蒼白なジェルを見つめながらアマリーは愚王とは本当にいるのだなと、自国の前王を棚上げして思ったのであった。



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