触れられたいのは
体がとても重たく、瞼を開けるのがこんなにも辛いと思ったのは初めてであった。
それでも、どうにか瞼を開けると、そこに見えたのは見慣れない天井であった。
香が炊かれているのか、甘い匂いが広がっており、体に力が入らない。
それでもどうにか体を起き上がらせると、両腕両足に鎖がつけられていることにアマリーは気が付いた。
「起きたか?」
あの顔を隠した男の声だと思い、アマリーが振り替えると、そこには黒髪の浅黒い肌をした男がいた。
「また会えたなアマリー?」
「人の事を拐っておいて、その台詞ですか?」
「また会おうって言っただろう?」
「拐って目覚めた直後に言われてもね。」
その言葉に、男は苦笑を浮かべるとベッドへと上がり、体の自由がまだ上手くきかないアマリーの顎をとり上を向かせた。
「強く、そして美しいな。兄上に見せたらきっとお前を奪われるからな。この部屋からは出ない方がいい。」
「お兄様はアメリア様のことが好きなのでは?」
「まぁな。だが、うちの国は一夫多妻制だからな。」
「まぁ、アレンド国はそうなのですか。」
「あぁ。まぁアメリア嬢は正妻になるだろうが、、、って、よくアレンド国だと分かったな。」
「分からないわけがないでしょう。」
浅黒い肌に黒い髪はアレンド国の民の特徴である。しかも男の身に纏っている衣装はアレンド国の織物の特徴である細かな刺繍がなされており、見ればすぐに分かる代物だ。
「そうか。俺の名はトゥルキ。アマリー、お前の夫となるものだ。」
「私には婚約者がいます。」
「婚約者がいた、だ。大丈夫。俺に身を任せればすぐに俺なしではいられなくなる。」
「ならこの鎖をなくしたらどうです?」
その言葉に、トゥルキがピクリと反応する。
「それは逃げないように」
「私に正攻法では勝てないから、では?この国は弱肉強食。故に、私に負けては私を押さえつけられない。だから、鎖で繋いだ。違いますか?」
次の瞬間アマリーはベッドに押し倒され、トゥルキに馬乗りにされる。
「あまり、俺を軽んじるな。」
「ならば、私を自由にして下さい。」
アマリーの頬に手をはわせ、そしてその赤い唇を指で撫でたトゥルキはにやりと笑った。
「こんな美しい女を前にして、手を出さないわけがないだろう?」
腰をまさぐるように撫でる手に、アマリーは震えそうになるのをぐっと堪え、トゥルキを睨み付けた。
「触るな。弱虫め。」
アマリーの言葉に、トゥルキは手を止めた。
「何だと?」
「弱虫と言った。薬で弱らせたような女しか手に入れられない、弱虫め。」
トゥルキは頬をひきつらせるとアマリーの頬を叩いた。
それでもなお、アマリーは睨み付けたまま動かない。
トゥルキはその頬を舌で舐め、その耳元で囁いた。
「そんな男に組敷かれる屈辱はどうだ?」
「最悪ね。」
「さぁ、どこまで耐えられるか見ものだな。」
トゥルキの手はアマリーの服をゆっくりと剥ぎ取ろうと動いていく。
スカートに手を入れられ、アマリーは身を固くして、堪えていた涙が流れ落ちそうになる。
ルルド様。
心の中で、何度も何度も叫ぶ。
怖い。
それでも、こんな男に許しをこうのは嫌で、必死でアマリーは堪えようとするが、トゥルキの熱をもった手が肌に触れ、恐怖が胸を占める。
嫌だ。
嫌だ!
嫌だ!!
触れるのを許すのも、許せるのも、ルルドだけである。
他の男になど触れられるくらいなら。
アマリーは天井を見つめ、そして小さな声で言った。
「ルルド様、、、助けて。」
アマリーは舌を噛みきる覚悟を決めた時、自分の体に股がっていた男は吹き飛ばされた。




