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アメリアのお願い

「えっと、その、そうなのですか?」


 アマリーが気を取り直しておずおずと尋ねると、アメリアは頷いた。


「ええ。まぁ、難しいのは分かっていますが、あの女々しい様子はどうかと思いますの。はぁ、ルルド様くらいどっしりとしていて下さればいいのに。」


 その言葉にアマリーはドキリとして、思わずうかがうようにアメリアを見ると、その様子にアメリアは笑い声を立てた。


「ふふ。そんなお顔をなさらないで下さいな。人の婚約者様を取るなどという事は致しませんわ。それに、ほら、あのお姿をごらんになって。」


 そう言ってアメリアが扇子を向けた先には、まるでブリザードが吹き荒れるように、冷たい表情でルルドが令嬢らに何かを言っている姿が見えた。


 令嬢らは顔を青ざめさせると、あっという間にルルドの元から去っていく。


 ルルドと視線が合うと、にこやかな微笑みをアマリーに向けハンスの所へと行ってしまった。


「婚約者にだけ甘い殿方というのは素敵ですが、あのように冷たい眼差しで私は見られたくないので御免ですわ。アマリー様が愛されていてうらやましいですわ。」


「そ、そうでしょうか。」


「ええ。」


 その時であった。


 護衛の為に控えていたテイラーがやってくるとにこやかに話かけてきた。


「お二人とも楽しそうですね。」


 アメリアはため息を漏らすと言った。


「貴方は暇そうですわね。テイラー様、しっかりとお仕事をして下さいませ。」


「相変わらずアメリア様は厳しいですねぇ。はい。お仕事頑張ります。アマリー嬢。令嬢らが殺気立っているので、一人にはならないようにお願いします。」


「え?えぇ。」


 何故自分がそんな立場にならなければならないのだと思っていると、なるほどと思った。


 完璧令嬢アメリアは、令嬢からの人気も高い。それ故に、皆、ハンスとアメリアならば許せるのだ。だから、その鬱憤を自分に向けているのかと納得できた。


「テイラー様、ハンス陛下は何と?」


「はいはい。もちろん伝言を預かっていますよ。”助けてくれ”だそうです。」


 その言葉にアメリアはわざとらしくため息をついた。


「では、陛下にお伝えして下さいまし。”お断り”と。お願いしますね。」


「アメリア様はお厳しい。分かりましたよ。伝えておきます。では。」


 そう言うとテイラーはハンスの所に戻ってしまい、その背を見送りながらアメリアはため息をついた。


 その様子にアマリーは尋ねた。


「アメリア様は、ハンス陛下の事をどう思っていらっしゃるんですか?」


 アメリアはアマリーの言葉に、にっこりとほほ笑むと言った。


「ふふ。不敬な事ですから申し上げられませんわ。」


 可愛らしい仕草でそう言ったが、その言葉はすでに不敬であるとアマリーは苦笑を浮かべた。


「まぁ、現実問題は私と陛下との婚姻が結ばれるのでしょうけれど、出来ればハンス陛下にはもう少し頑張ってほしい所ですわ。」


「頑張る?」


「ええ。あの人、私の事女と思ってませんのよ。ですからね、頑張る機会を差し上げようと思いますの。」


「え?」


「絶対に、惚れさせてやりますの。ですから、アマリー様、力を貸してくださいな。」


 あまりに可愛らしくねだられてしまい、アマリーは思わず頷いてしまうのであった。

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