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ファーストダンス

 会場の扉の前にルルドにエスコートされてたったアマリーは、大きく息を吸い、吐いて、呼吸を整えた。


「もう間もなく陛下に呼ばれるだろう。大丈夫か?」


「ええ。」


 ルルドは、アマリーを見て、小さく息を吐いた。


 きっと、会場中の視線がアマリーに集まるであろう。


 それに嫉妬している自分に、ルルドは苦笑をかみ殺した。


 その時、ファンファーレと共に会場内から声が聞こえた。


 自分が呼ばれている。


 ルルドはアマリーの背中を優しく押した。


「楽しんで。」


「ありがとう。」




 舞踏会会場内では、ハンスがあいさつを済ませ、そしてワインを片手に声を上げた。


「さあ、それでは私の命を救った侯爵家令嬢アマリー・レイスタンに勲章を授けよう!アマリーに盛大なる拍手を送り、その功を労ってくれ!」


 会場内が拍手に包まれ、アマリーの登場するであろう扉に皆の視線が集まった。


 にやにやとした笑みを浮かべているものや、あざ笑うかのように冷たい視線を送るものがいる。


 だが、それは一瞬にして驚きへと変わる。


 ファンファーレと共に扉がゆっくりと開き、そこにいた者を見た時、会場がシンと静まり返った。


 深紅のマーメイドラインのドレスは体のラインを際立たせ、そして豊満な胸元と、美しい背中を大胆に開き見せており、その色香は皆の視線を引き付けた。


 美しく結われた髪の下からのぞくうなじのラインは、その妖艶さを引き立てていた。


 彼女が一歩進むと、皆の視線も動く。


 アマリーはマダムや姉さん方に教えられたように、背筋をすっと伸ばし、所作を指先から足の先まで全神経めぐらせて操る。


 視線は前へ、けれど、周りを見るときには微かに笑みを乗せて視線を流す。


 ほうと、声が漏れたのが聞こえた。


「あれが、アマリー嬢か?なんと、、、美しい。」


 ごくりと喉を鳴らす音も聞こえた。


「ウソだろう。動けるデブって誰が言ったんだ。バカだろう。」


「あんな綺麗な人見たことがない。」


 皆の視線が、アマリーに集まっている。


「美しい。」


 それをアマリー自身も感じ、そして先ほど自分をバカにしていた者たちがあっけにとられた表情で自分を見つめていることにも気づく。


 ダンは目を丸くし、硬直しているのが視線の端に見えた。


「ウソだ。あれが、アマリー嬢?ウソだ。」


 ダンの顔面は蒼白になり、だがそれでもなお、アマリーに向ける視線は熱を持っていた。


 ハンスは、前へ進み出たアマリーににこりと笑みを向けた。


「美しいな。薔薇のような人よ。今日は君に特別勲章を授与し、キミの功績を讃えよう。今日は舞踏会を楽しんでくれ。」


「もったいないお言葉、ありがたく頂戴いたします。」


 ハンスの指示で、会場にオーケストラが優雅に曲を奏で始める。そして、アマリーの手をハンスが取った。


「ファーストダンスの栄誉は、私にいただけるかな?」


「光栄にございます。」


 アマリーの手を取り、ハンスは会場に進み出ると曲に合わせて踊り始める。


 それはまるで物語のワンシーンのようで、会場内の女性陣は羨望の眼差しをアマリーに向ける。


「ふふ。これはかなり悦に浸れるな。見てみろ。テイラーのあの間抜けな顔を。」


 テイラーは悔しげに二人を見つめていた。


 その様子にアマリーは苦笑を浮かべた。


「踏み外しますよ?」


「そんなミスはしないさ。そうだ、キミに伝えておきたいことがあるんだ。」


「なんです?」


 軽やかに難しいステップすらも揚々と踊りながら二人は会話を続けた。


「以前、キミの父上に出した手紙の内容だがね、キミの力を借りることと、今回の件が終わったら婚約者として、ルルドはどうだろうかと実は打診してある。」


 その言葉に、アマリーは目を丸くするとハンスを見上げた。


 ハンスはにやりと笑みを浮かべた。


「まあ、キミは選びたい放題だから、断ってもいい。なんなら、私の妃っていう道もあるが?」


「お戯れを。あの、、、でも、どうしてルルド様を?」


「ルルドは以前からキミを気にかけていた。キミは知らなかっただろうが、舞踏会のたびにキミを視線で追っていた。本人は気づいていないようだったが、あれはキミを以前から慕っていたよ。」


 その言葉に、アマリーは驚き目を丸くした後に、顔を赤く染めた。


「えっと、どうして、、なのでしょう。」


「調べは付いているが、まあそれは本人に聞いたらいいさ。ルルドはいい男だ。だが今日はたくさんの男と踊って、しゃべってみればいいさ。さあ、それでは今日の主役よ、楽しんでくれたまえ。」


 そういうとハンスは会場にアマリーを残し、自分は王座へと帰ってしまった。


 残されたアマリーには男性達が群がり、皆がアマリーと喋ろうと躍起になったのであった。


 




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