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小さな期待

「え?えええ?ええええええ?」


 テイラーはがばっと立ち上がると声を上げ、そして動揺のあまり声を裏返しながら言った。


「え?えええ?うそ、え?ウソだ!」


 ハンスも立ち上がり、呆然としている。


「え?アマリー?え?どうしてそうなった?え?え?」


 手をわきわきとさせながら、テイラーは動揺を隠そうともせずに声を上げた。


「だって!え?一体アマリー嬢は何があったんだ!?」


「わ、私も聞きたい!もしや、節々が痛いと言っていたのは、やはり成長痛だったのか!」


 その二人の勢いがすごすぎて、アマリーは一歩後ろに引くと、そっとルルドの服を掴んだまま言った。


「あの、え?私、何か変わりましたか?」


 ルルドは服を掴んで微かに震えるアマリーが可愛く思えて、抱きしめたくなる衝動を抑えていた。


 テイラーはアマリーの言葉に声を一層大きくして言った。


「変わったなんてものじゃない!別人じゃないか!」


「そうだ。そう、、、その、グラマーというか、、豊満ボディと言うか、って、ルルド、睨むな!」


 ルルドは小さく息をつくと言った。


「アマリーに失礼なことを言うな。元々お前らの目が腐っていたんだ。アマリーは元々可愛らしかっただろう。」


「え?」


 アマリーはルルドのその言葉に顔がじわりじわりと赤く染まっていくのを感じた。


 テイラーはそんなアマリーの様子に天を仰いだ。


「っくそぉ。何ていう事だ。くっそぉ。」


 そう呟くと、アマリーの前に突然跪いた。


「俺の見る目がなかった!だが、今ではアマリー嬢の美しさに心を奪われた!どうかこのあわれな俺を許してはくれないか?」


 手を取られそう言われたアマリーは、顔をひくつかせると、パッとその手を払って言った。


「よく意味が分かりませんけど、【動けるデブだ】という言葉は一生忘れませんわ。」


「ぐはぁ。うぅ、、、、。」


 その場に両手をついて項垂れるテイラーを、アマリーは気色の悪いものを見るかのようなまなざしで見つめた。


 ハンスは大きく息を吐くと、とりあえず座ろうと皆を促し、席に着かせた。


 執事によって運ばれてきた紅茶をアマリーは飲みながらも、ちらちらと視線を向けてくるハンスとテイラーの様子に内心かなり動揺していた。


 そんなに自分は変わっただろうか?


 確かに、以前よりも身長が伸びたのか、視線が高くなった気がする。それに体も以前よりも軽い。


 マダムや姉さん方に所作を磨かれ、女性としての美しさを磨いたという自信はある。


 だが、根本的にアマリーは変わってはいない。


 それなのに、ハンスとテイラーの不自然なまでの自分への対応の変わりようにアマリーは気味が悪くなった。


 だからこそ、ルルドの傍がすごく落ち着く。


 ルルドは以前と変わらない。いや、少し雰囲気はやわらかになったように感じるがそれはとても心地の良いものであった。


「とにかく、取りあえずこれでエミリアーデの事は終わった。だから、アマリーには以前話していたように婚約者を紹介できるようにしよう。」


 ハンスの言葉にアマリーはきょとんとした顔を浮かべ、そして、そうだったと思い出す。


 だが、一体だれを紹介されるのであろうか。


 ちらりとルルドを見ると、ルルドはその視線に気が付くと優しい笑みを浮かべてくれた。


「だが、おそらくだが、アマリー。君は舞踏会に出ればすぐにでも婚約の打診が様々なところに来るだろう。だからまずは私から舞踏会の招待状を送ろう。君のための婚約者探しの舞台を用意してあげるよ。」


 にこにこと微笑むハンスからの提案に、アマリーは思ってしまった。


 もし、ルルドも参加するのなら、、、できれば。


 アマリーは小さな期待を胸に抱いた。



 


 

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