ある一日
僕がこの世界に来て、一ヶ月の時が経過した。僕はこのひと月で付近の村の人達にそこそこ受け入れられた気がする。どうやらクオンが裏で働きかけたらしい。
まあ、人造の神という事から拝み倒す人も居たりするが・・・。リンネは気にしない。
そんなある日の事。
「ほらリンネ。こっちだよ!!」
「はいはい・・・。解ったよ」
リンネとクオンは今、近くの村で買い物をしている。主に、リンネは荷物持ちだ。まあ、どの世界でもこういう時の男の立場は変わらないのだろう。しかし、リンネはやはり気にしない。
リンネの腕には既に、かなりの量の荷物が抱えられていた。しかし、リンネの表情に苦は無い。
この程度、リンネにとっては苦にならない。
しかし、それを見ている周囲の人達は苦笑を浮かべている。どうやら周囲の人にとってはこの荷物の量はかなりの物らしい。まあ、それもそうだ。
なにせ、既に荷物の重量は何十キロにも及ぶ量になっているからだ。それでもリンネは気にしない。
リンネがそれを気にする事は無い。
「いやはや、お前さん凄いな。その量の荷物を抱えるなんて、力持ちなんだねえ・・・」
「ええ、まあ・・・」
村の人に話し掛けられ、リンネは曖昧に頷いた。この程度、彼にしてみたらどうという事もない。
「お兄ちゃん、これあげる!!!」
「ああ、ありがとう。けど、今両手が塞がっているから勝手に荷物の上に置いてくれるかな?」
「うんっ!!!」
小さな子供が荷物の上に飴玉を置いていく。そろそろかなりの量だ。
「・・・・・・いや、すげえな兄ちゃん。この量の荷物を一人で持つなんて・・・」
「まあ、こういうのは男の役目なんで・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉に、話し掛けてきた男は呆然と硬直した。それからしばらく、買い物は続いた。
・・・・・・・・・
「ありがとうね、リンネ・・・」
買い物の帰り、クオンはリンネに笑顔を向けて言った。既に、荷物は亜空間にしまっている。
その万能性に、クオンは大喜びしたのは言うまでも無い。
「うん?何が?」
「リンネが来て、私も楽しいと思う事が増えたよ・・・。だから、ありがとう」
満面の笑みを浮かべるクオン。その笑みに、リンネは思わず胸が高鳴るのを感じた。
だからリンネは顔をついっと背ける。
「そうか。それは良かったな・・・」
「うん。だから、これはほんのお礼だよ・・・」
そう言って、クオンはリンネの顔を無理矢理自分の方へと向ける。
瞬間、リンネの頭の中は真っ白になった。クオンの顔がすぐ目の前にある。
・・・つまり、これは。
「んっ」
「!!?」
キス。リンネはクオンにキスされたのだ。リンネの頭の中がパニックを起こす。
そっと、離れる唇。リンネは自分の頬が熱いのを感じた。
「ありがとう」
そう言ってクオンは微笑みを向けた後、リンネを置いて神殿に戻って行った。その場には真っ赤な顔で立ち尽くすリンネだけが居た。
「・・・・・・やられた。とんだ不意打ちだよ」
呆然と、それだけ呟いた。
爆発しろっ!!!(・∀・)