異世界に来て
夢を見ていた・・・。リンネはこれが夢だと、すぐに理解した。
「此処は・・・」
リンネの声が、虚しく響く。響いて、そのまま消え去った。
其処は、一面純白の世界だった。純白の世界に、リンネは立っていたのだ。
目の前には神無月レイともう一人、知らない女性が居た。何処となくレイと良く似ている気がする。
「母さん、それと・・・」
「私は女神レイデア。貴方が母と呼ぶレイは私の化身、代行者ですね・・・」
女性、女神レイデアはそう言いリンネに微笑み掛けた。
「あ、えーっと・・・どうも?」
リンネはどう答えて良いか解らず、頭を下げた。その姿に、女神はうふふと上品に笑った。
一方、レイは所在なさげにちらちらとリンネを見ていた。
その様子に、女神はまた笑う。
「どうやらレイの方も貴方に話があるようですし、私は此処で消えましょう。では、また何れ」
瞬間、女神は姿を消した。結局、あの女神は何の用だったのだろうか?
その直後、レイがリンネの方に駆け寄った。
「リンネ!!!」
「母さん・・・」
レイはリンネに駆け寄るとその身体を抱き締めた。リンネもレイの背に腕を回し、抱擁し合う。
「良かった、リンネが無事で・・・。ずっと心配していたのよ?」
「うん、俺も母さんの事がずっと気がかりだったんだ」
そう言い、二人きりの空間で再会を喜び合う。
・・・しばらく抱擁した後、リンネはレイからそっと離れて言った。レイは残念そうに笑う。
「母さん。実は、俺に守りたい人が出来たんだ」
「・・・そう、どんな人?」
「クオンって言って、不老不死の巫女だよ」
「そう・・・そう・・・。リンネにもついに守るべき人が出来たのね・・・嬉しいわ」
レイは優しげに微笑んでいた。その顔は、優しい母の顔だった。息子の成長を喜ぶ、母の顔。
リンネはそれが嬉しくて、レイに一つ我がままを言う事にした。
「母さん、俺・・・また母さんと一緒に過ごしたい。クオンも母さんに紹介したいし・・・」
「・・・・・・ええ、そうね。私も貴方とまた一緒に過ごしたい。けど・・・それはきっとまだもう少し先の話になるかしら」
「・・・・・・・・・・・・うん、そうだね」
レイの寂しそうな言葉に、リンネも少し寂しい気持ちになった。
「じゃあね、リンネ。また会いましょう・・・」
「うん、また何れ・・・」
・・・その瞬間、僕の意識は覚醒した。そして、自分の現状を見て硬直する。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・すぅー、・・・すぅー」
リンネの身体に抱き付くように、クオンが寝ていた。その表情はとても穏やかだ。
「・・・いや、何でだよ?」
リンネは一人、静かにツッコんだ。いや、本当に何でだよ。