リンネとクオン、秘密
時刻はそろそろ昼に差し掛かろうと言う時。リンネとクオンは神殿の一室に向き合って座って居た。
マーカスは既に村に帰った。村長としてやる事があるらしい。あの人、村長だったのか。
リンネは密かに感心した。
「リンネ、貴方は自分が人造の神だって、人為的に造られた神だって言っていたけど。貴方はそれで苦しくないの?そんな自分に苦痛は無いの?」
見ると、クオンは悲しげな瞳でリンネを見ていた。きっと、優しい性格なのだろう。
「まあ、苦痛が無かったかと言えば嘘になる。・・・けど、今は別に苦しくは無いな」
「それは、何故?」
「俺を救ってくれた人が居たから。そんな俺に手を差し伸べてくれた人が居たから」
そう、あの人が居たから、神無月レイが居たから神無月リンネは救われたのだ。
人として生きられたのだ。
「・・・そう、羨ましいね」
そう、クオンは僅かに寂しそうに微笑んだ。リンネは僅かに思案すると、クオンを真っ直ぐ見詰めた。
「クオン。俺の事は君に話した。今度は君から俺に話してくれないか?君の秘密を」
クオンは一瞬驚いた顔をすると、リンネからそっと目を逸らした。
「・・・・・・何の、事かな?」
「俺はその手の事を察するのは得意なんだ。クオン、君は何かを隠しているな?」
「っ!?」
瞬間、クオンの表情が明確に歪んだ。その表情は、怯え。人に拒絶される事への恐怖だった。
それを察したリンネは・・・優しく微笑んでクオンの頭を撫でた。
「・・・あっ」
「大丈夫・・・俺は君を絶対に拒絶しないから。だから、話してくれないか?」
何処までも優しい言葉。その言葉はクオンの心に深く染み入り、優しく響いた。
思わず、クオンは涙を流す。リンネは優しく微笑みながらクオンの頭を撫でる。
「こんなに・・・っ、優しくされたの、は・・・ひぐっ、初めて・・・っ」
「大丈夫・・・大丈夫だから・・・」
ついに、クオンはリンネの胸元に抱き付き泣き出した。リンネはそんなクオンの背を優しく撫でる。
・・・やがて、クオンはしゃくり上げながらも泣き止んだ。その顔は羞恥の為か赤い。
「・・・・・・本当に、私の秘密を知っても私を拒絶しない?」
「ああ、約束する」
そう言って、リンネはクオンに微笑み掛けた。クオンはぷいっと真っ赤な顔を背ける。
「・・・じゃあ、話すけど。私は・・・・・・不老不死なんだよ」
「不老不死・・・」
「ふふっ、驚いた?」
「いや、それくらい俺も能力の一部として保有している」
その言葉に、クオンの方が驚いた。目を見開いてリンネを見る。
そんなクオンに、リンネは只笑みを向けるだけだ。
「貴方も、リンネも不老不死なの?」
「ああ、俺も不老不死だ。君と同じだな」
「っ、うん!!」
クオンは嬉しそうに笑う。その笑みは、とても眩しく思えた。守りたいとすら思った。
だから、リンネはクオンを守ろうと誓った。他でも無い、自分自身に。
この日、初めてリンネに守りたい人が出来た。