黒幕は?
リンネの敗北から一月が経過した。リンネは一向に目を覚まさない・・・
寝たきりのリンネを、クオンはずっと看病している。それこそ、自分の寝る時間や食事の時間も惜しんで彼の看病に付きっ切りだった。その姿は、何処か必死さを感じさせるものがある。
そう、クオンは必死なのだ。何も出来なかった自分を責め、心底から悔やんでいるのだ。
そんなクオンの姿に、他の皆は焦燥を募らせていた。このままでは、リンネどころかクオンまで倒れてしまいかねないだろう。しかし、それを言う事は出来ない。クオンの気持ちも理解出来たからだ。
・・・そして、重要なのはそれだけではない。竜王エルから事情を聞く必要がある。現在、レイとタマモはエルから話を聞いていた。
現在、竜王エルは大人しく質問に答えている。それは、此方に対して協力的という事だ。
「・・・つまり、竜王エルも何者かに操られていたと?」
「うむ、頭から目深に外套を被っていたため素顔は見えなかったが、奴は間違いなく人間であった」
「・・・人間が、竜王を操っただと?」
その事実に、二人は愕然と目を見開いた。
神にも等しい原初の魔物である竜王すら操る人間。その事実に、二人は静かに戦慄する。
竜王エルは悔しそうに歯嚙みすると、吐き捨てるように言った。
「私は操られてはいたが、記憶はしっかりと保持していた。奴は私と少年が戦っている最中、ずっと遠くから隠れて隙を伺っていたのだ。そして少年が気を緩めた隙に卑怯にも影から狙い打った」
その言葉に、レイとタマモの表情に憤怒が浮かぶ。二人の肩が、怒りに震える。
そう・・・黒幕は影から竜王を操り、ずっと隙を伺っていたのだ。そして、隙を見て遠く離れた安全圏からリンネを狙い打った。その事実に、怒りが湧いてくる。
「・・・・・・っ」
「・・・何と、卑怯な真似を」
二人が怒りに震えている時、部屋の中から叫び声が聞こえた。それは、クオンの声だ。
「っ、リンネ!!!」
「「「っ!?」」」
その声に、三者は同時に部屋の中に瞳を向ける。其処には、目を覚ましたリンネの姿が・・・
しかし、何処か様子がおかしい?何処か、その瞳は虚ろで。
「リンネ、私だよ?解る?」
クオンがリンネの肩を摑み、強く揺さぶる。しかし、やはりリンネの様子がおかしい。何処か反応が薄いような夢うつつのような、そんなぼーっとした表情で虚空を見ている。
そんなリンネの姿に、徐々にクオンは不安になってゆく。そして、リンネはようやくクオンの方を向くと誰もが驚愕する一言を言った。
「・・・・・・お姉ちゃん、誰?」
記憶喪失!!?




