大妖狐、その名はタマモ
次の日の朝。清々しい朝日と共に、小鳥のさえずりが聞こえる。
こんっこんっ、戸をノックする音がリンネとクオンの寝室に響く。大妖狐だ。
あれから大妖狐はリンネの監視付きという名目で、この神殿に住んでいる。何だかんだで、大妖狐も楽しんでいるようだ。実に何よりな話である。
「リンネ、クオン。朝だぞ?」
大妖狐の声が、部屋に響く。しかし、返事が聞こえない。大妖狐は軽く不審に思う。何時もは返事くらいはある筈なのだが。大妖狐は小首を傾げた。
再び、こんっこんっと戸をノックする音が響く。
「リンネ?クオン?朝ごはんの用意も出来ているぞ?」
大妖狐の不振そうな声が響く。しかし、やはり返事が無い。中に人の居る気配は感じるのだが。
「リンネ?クオン?・・・・・・入るぞ?」
大妖狐が戸を開く。其処には・・・・・・
桃色の空間が広がっていた。
「すぅ~っ・・・、すぅ~っ・・・・・・。クオン」
「・・・・・・んっ。リンネ」
リンネとクオンが抱き締め合い、互いに名前を呼び合う桃色の空間が広がっていた。というか、二人ともまだ寝ていた。ぐっすりと、実に幸せそうな寝顔だ。互いに絡み合うように抱き合っている。
その光景に、大妖狐は・・・・・・
「っっ!!?」
顔を真っ赤にして二人を見ていた。それもその筈、何故なら二人は全裸で抱き合っているから。
いや、何してんの?二人とも?
互いに絡み合うように抱き合い、幸せそうににへっと笑みを浮かべて寝ている。それは、明らかに大妖狐には刺激の強すぎる光景だったのだ。ひゃーっと顔を掌で隠しながら、それでもこっそり隙間からその光景を覗いて見てみる。そしてやはり、顔を真っ赤にした。
実に桃色な空間。ある意味、純情な大妖狐には刺激が強すぎる。
そんな時・・・
「あらあら、駄目よ?タマモちゃん?こういう時は、静かに二人っきりにさせておくべきじゃない?」
「そ、そうなのですか?レイさん?」
「うふふ、そういう物なのよ」
大妖狐タマモ(リンネ命名)が衝撃を受けたような顔をする。まるで、天啓を得たかのような顔だ。
そんなタマモにレイはうふふと笑い、そっと静かに部屋から立ち去った。立ち去る際、レイはとても優しげな瞳でリンネを見た。そんな朝の一幕だった。
・・・ちなみに、後に聞いた所によれば別に一線は越えていないらしい。けど、その時の二人の表情から察するにまんざらでもなかったようでもある。実にやれやれな事だ。
レイは終始、うふふと笑っていた。そして、クオンは終始赤面していたのだった。