大妖狐
神無月レイが神殿に住み付いた次の日。三人で朝食を食べていた時の事。
リンネは何だか居心地の悪い思いをしていた。それと言うのも・・・。
「り、リンネ・・・。あ、あーんっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
何故か、リンネはクオンに朝食を食べさせられていた。いわゆるカップルのやるあれだ。
何故、リンネとクオンがそれをやっているのか?・・・それは。
「うふふ♪その調子よ、クオンちゃん‼がんばれっ‼」
「・・・・・・は、はい‼お義母様っ!!!」
そう、神無月レイがクオンを焚きつけたのだ。
曰く、クオンの花嫁修業らしい。花嫁修業、その言葉にクオンは予想以上にやる気を出したようだ。
もう、二人はもはや仲の良い嫁と姑という感じだ。
「・・・・・・もう、勘弁してくれよ」
深い深い溜息を吐き、リンネは頭を抱えた。羞恥心が爆発しそうだ。
「あ、あーんっ」
「・・・・・・はぁ」
クオンは顔を真っ赤にしつつ、リンネに寄り添い朝食を食べさせる。二人ともかなり恥ずかしそう。
それを、レイはあらあらうふふと微笑ましげに微笑んでいる。
・・・と、その直後。入口でどんどんとドアを叩く音が聞こえた。
「巫女様、リンネ様はいらっしゃるか!!!」
聞こえてきたのは、村長のマーカスの声だ。かなり焦っているらしい。一瞬きょとんっと顔を見合わせたリンネ達三人だったが、やがてクオンが入口の方へと向かった。
リンネとレイも顔を見合わせて少し考えると、揃って入口の方へと向かった。
・・・・・・・・・
入口に行くと、マーカスが何か焦った様子でクオンに話していた。かなり焦っているらしく、中々話の要領を得ないのだ。かなりてんぱっている。
レイは僅かに溜息を吐くと、マーカスの方へと向かった。
「とりあえず落ち着いて、ゆっくり話してくれるかしら?村長さん?」
「は?い、いや・・・あんたは誰だよっ」
「私は神無月レイ、リンネの母親よ?」
は?とマーカスは訳の解らない様子でリンネを見る。リンネは肩を竦めるとそれを肯定した。
マーカスは呆然とレイを見ている。・・・まあ、とりあえずは落ち着いたらしい。
リンネはマーカスに問う。
「それで、今回は一体何の用ですか?マーカスさん?」
「っ、そうだ!!!村に大妖狐が現れたんだ!!!村の前で神無月リンネを出せと喚いているんだ!!!」
「っ、大妖狐!!?」
クオンが驚き、声を荒げた。その驚きように、リンネの方が驚いた。
「・・・・・・えっと、その大妖狐?が俺に何の用なんだ?」
「そんなの知るか‼とにかく、早く来てくれ。でなきゃ村が壊滅する」
そう言ってマーカスはリンネを引っ張っていった。それをクオンとレイが付いていったのだった。