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人造神の異世界創世記  作者: ネツアッハ=ソフ
異世界とのファーストコンタクト
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プロローグ

 新暦27年7月7日。日本のとある山奥、その地下深くにある研究施設にその少年は居た。


 黒髪に翡翠色の瞳、そして透ける様な白い肌。見た目は只の幼い少年に見える。しかし、その首に巻かれた機械的な首輪に白い手術衣から、この少年が決して一般人では無いと理解出来るだろう。


 この少年こそ、戦時中よりかねてから秘密裏に軍部(ぐんぶ)が研究を重ねてきた者。


 戦時中は戦争に勝利する為の戦略兵器と銘打って、そして戦後軍部が解体されてからは人の手で神を造る為と形を変えてその研究は続いた。


 狂気だった。そう、これはまさしく狂気のさただ。決して正気とは言えないだろう。


 そして、この少年こそその狂気の研究唯一の成功例だった。


 被検体A-1058z。それがこの少年に付けられた名である。コードネームはアンノウンだ。


 この少年一人を生み出す為に要した時間と費用は馬鹿には出来ない。


 戦時中に始まったこの研究は戦後も続き、昭和、平成を越えて新暦にまで至った。その費用、約百億。


 そして、その研究の為に使われた技術や理論も膨大になる。それこそ、魔術の様なオカルト理論から量子力学や情報力学などの最新科学、ナノマシン技術まで多岐に渡る。


 そして、その結果生まれた一人の少年は周囲の予想を遥かに上回る数値を叩き出した。


 少年の叩き出した結果は理論を大きく上回り、全知全能すら可能とした。


 それを知った科学者達は更に増長した。これを利用すれば、世界すら掌握出来るのでは?


 科学者達の欲は際限なく上昇し、どうしょうもなく狂っていく。それを、少年は感情の全く籠もらない瞳で静かに見詰めていた。


 ———(おろ)かな奴等だ。


 そう、何処か諦観した様な瞳で見ていた。そんなある時。不意に少年の前に、白衣の女性が現れた。


 年の頃は二十代前半という所か。しかし、その纏う雰囲気は何処か老練な気配を漂わせる。


 只者では無い。少年は瞬時に理解した。理解して、警戒した。


 「お姉さん、誰?」


 「はっはっは!!私の事は親しみを籠めてお母さんと呼びなさい」


 ・・・はい?


 思わず、少年は呆気に取られた。いきなり何を言っているのか、この女は・・・。


 思わず怪訝な顔をする少年を、女性はいきなり抱き締めた。


 「なっ!!?」


 「やーんっ、かわいいっ!!この子とってもかわいいっ!!この子にお母さんって呼ばれたい!!」


 「ちょっ、はなっ・・・放せえーーーっっ!!!」


 じたばたもがく少年。そして、その瞬間気付いた。これだけ騒いでいるのに誰も来ない。


 そして、少年の反応を見て、その疑念を察した女性はそれに答えた。


 「ああ、あの研究員達と警備員達は私が始末しました」


 「っ、な・・・・・・!!!」


 愕然とした。小さな研究施設とはいえ、この研究所には最新の防犯システムと鍛え抜かれた最精鋭の警備兵が詰めていた筈である。それを、全て始末したとこの女性は言ったのだ。


 呆然とする少年に、女性は突然真剣な表情で()を差し出した。


 「私と共に来なさい、神無月リンネ。そうすれば貴方に自由を与えましょう」


 「神無月・・・リンネ・・・・・・?」


 「貴方の名前です。さあ、どうする?私と共に来るか、此処に残るか・・・」


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 女性の瞳をじっと見詰め、考え込む少年。そして、やがて少年はその手を握り返した。


 これが少年、神無月リンネと女性、神無月レイの出会いだった。

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